category: 音楽 > 1990年代 (30)
心のかけら / ジュエル 1995年
進藤むつみのおすすめCD (vol.68)
素朴・・・と言えばいいのでしょうか。繊細と言った方がいいのでしょうか?。それとも純粋と言うべきなのでしょうか。Jewel のこのデビュー・アルバムを聴いた瞬間、逆にこっちの方がどぎまぎしてしまったような気がします。それ程ストレートに、彼女の心が出ているように思えました。心の中にあるものを何ひとつ隠す事なく、あたしに見せてくれたように感じたんです。
だって、もうそのまんまなんですよね。考えている事が、真っ直ぐこっちに伝わってくる。それって、良いところも悪いところもね。例えば、瑞々しくて触れただけで壊れちゃいそうな素朴さを感じられる代わりに、自信のなさや不安さえもわかっちゃうんです。おいおい、もう少しガードした方がいいんじゃないの?。悪い人に付け込まれちゃうよ・・・なんて、あたしも余計な心配してみたりして(笑)。
だけど、このアルバムをレコーディングした時には、彼女はホントに自信がなかったのかもしれません。デビューする事はできたけど、このまま活動を続けていけるのかわからなかったんじゃないかしら?。そんな自信のなさが、そのままこのアルバムには録音されちゃったのかもしれません。でもね、この "Pieces of You" を一度でも聴いたならば、将来 Jewel という宝石の原石がどれほどの輝きをみせてくれるのか、誰もが気が付いたと思うんです。
ウェイティン・フォー・ジョージ / フリー・ホイーラーズ 1996年
進藤むつみのおすすめCD (vol.67)
訛ってるんですよね。もう、強烈な南部訛り。だけど、あたしはこういうのこそ文化だと思うし、あたしの中に南部への憧れがありますからね。彼等の南部人としての誇りにも感じられて、聴いていて嬉しくなってくるんです。・・・ただ、それでもこれだけ強烈だと、『チョットたいしたものだな』って思っちゃうんですよね。
あっ、ヴォーカルじゃないですよ。the Freewheelers の演奏が訛っているんです。
ギターの音色もそう、ズルズルに引きずったピアノとオルガンもそう、バックアップの女性コーラスもそう。これを南部の音と呼ばなければ、他に当てはまるものなんてないくらいにね。70年代のサザン・ロック、スワンプ・ロックそのものなサウンドに乗せて Luther Russell のダミ声が響く・・・って、やっぱりヴォーカルもそうなのか?(笑)。
実はバンドの情報が少なすぎて、何処の出身かも分からないんですよね。結成がロサンゼルスだって話や、このアルバム以降にリーダーの Luther Russell がオレゴン州のポートランドで活動してる事を思えば、根っからの南部人ではないのかもしれないなって思います。まあ、出身なんてあまり関係ないかもしれません。だって彼等の演奏には、Delaney & Bonnie や Leon Russell、そして Little Feat と同じような、南部独特のねちっこさと、熱いハートが感じられるんですから。
セレブリティ・スキン / ホール 1998年
進藤むつみのおすすめCD (vol.66)
ゴシップやスキャンダルと一緒にしか語られないミュージシャンがいます。もちろんスキャンダルはロックスターの証だし、何もないようだと、逆に魅力もないような気もします。だけど、あまりにもそればかりだと、ちょっと違うんじゃないかと思っちゃうんですよね。そういう話って、本来の魅力や実力を十分に認められてこそだと思うんです。
今回ご紹介する Hole の Courtney Love こそ、そんなミュージシャンの代表ではないでしょうか。うん、もう、よくもこれだけ色んな話が出てくるものと思うくらい。確かに、彼女の言動にも問題があるかもしれない。だけど、良い悪いじゃない、単純に巻き込まれてるだけの事もあるんですよね。それなのに、彼女の魅力やバンドの評価以外の話ばかり聞こえてくるんです。
Hole・・・、Courtney Love を、真っ正面から評価する。もしかしたら、色眼鏡抜きで彼女を見つめてる人の方が少ないんじゃないでしょうか。もしそうだとしたら、それはとても残念な事だと思うんです。だって、彼女は90年代、最高の女性ロッカーかもしれないんです。だから・・・あたしは余計な話を抜きにして、彼女の話をさせてもらいたいなと思っているんです。
アモリカ / ブラック・クロウズ 1994年
進藤むつみのおすすめCD (vol.65)
『濃ゆい』アルバムです。もうね、『濃い』なんて言い方なんかじゃ、このアルバムの特徴を伝えられないくらい『濃ゆい』んですよね。音作りの密度の濃さというよりも、ねっとりとしたサウンド。ヴォーカルもギターも、これ以上ないくらいの『濃さ』を醸し出しているんです。
えっ、意味がわからない?。仕方ないな、言い方を変えてみましょうか(笑)。
『熱い』アルバムです。サザン・スタイルのロックやブルージーなサウンドは、熱を感じさせる事が多いと思うんです。曲によっては『乾いたの太陽』の暑さとかね。だけど、このアルバムはそれ以上に、人間の体温の高さを感じさせるような気がします。その熱の高さが、このねっとりとしたサウンドに表れているような気がするんです。
フィーヴァー・イン・フィーヴァー・アウト / ルシャス・ジャクソン 1996年
進藤むつみのおすすめCD (vol.64)
音楽が好きになって、聴き込んで、のめり込んでいくほどに、聴いているジャンルが狭くなるような気がします。だんだんと、自分の好みの音が分かってくるからだと思うんですけどね。あたしがのめり込んでいったのは、ルーツ系のロックでした。特にカントリー・フレーバー溢れるサウンド♪。
逆に言えば、ラップやヒップホップなんかは、最も苦手なジャンルに感じちゃうんです。この Luscious Jackson を初めて聴いた時も、単純にあたしの好きな音楽じゃないと思いました。Beastie Boys のグランド・ロイヤル第1号アーチストと言われても、ドラムスが Beasties のオリジナル・ドラマーだって言われても、あたしにとっては売り文句にならないんです。いえ、Beasite Boys はスゴイと思う。特に "Ill Communication" は、時代そのものを飲み込んだ大傑作だと思います・・・けど、苦手なんですよね(笑)。
リアルタイムで Luscious Jackson のファーストを聴いた後、あたしは彼女達に興味を示す事はありませんでした。セカンドを聴いたのは、発売されて5年以上たってから。それも中古で250円で売っていて、他に買うものがなかったからという後ろ向きな買い方(笑)。だけど、そこにあたしを虜にするサウンドがあったんです。もちろん、ルーツ系ロックなんかじゃないけど、『ヒップホップもイイかもしれない』って初めてあたしに思わせたアルバムが、この "Fever In Fever Out" だったんです。
ワイルド・フラワーズ / トム・ペティ 1994年
進藤むつみのおすすめCD (vol.62)
大好きなミュージシャンで、いつも期待に胸を膨らませて新譜を手にするのに、なんかちょっと外されちゃう人っていませんか?。もちろん曲が悪いわけでもない、演奏もいつも通りにドライヴ感がある。いえ、もっと単純にカッコ良さも変わらないんです。それなのに、あたしが聞きたかったサウンドとちょっと違う・・・。あたしにとって Tom Petty & the Heartbreakers は、そんなバンドでした。
初期のストレートなロックン・ロールが、印象的すぎたのでしょうか?。それとも大ヒットした "Damn the Torpedoes" の頃のサウンドを、忘れられないのか?。発売されてすぐに買うじゃないですか。だけど「あれっ?、ちょっと違うな」って思っちゃう。あたしの期待を分かっていて、かわされるような気がしちゃうんです。もっとも彼等は恐ろしく真剣に音楽に取り組んでいるバンドで、自分たちのサウンドを追い求めながら、しかも先達へのリスペクトを表現していたんです。だから、あたしの好みが単純で、音楽に対する知識も少なかったっていう事なんですけどね。
そんな彼等のサウンドが、あたしの期待と見事に一致したのが、93年の "Greatest Hits" に収録されたシングル "Mary Jane's Last Dance" でした。ハーモニカをフィーチャーした強烈に泥臭いサウンドで、あたしはその曲を聴いた瞬間、失礼ながら「なんだ、やれば出来るんじゃない」って思ったんですよね(笑)。そして、翌94年に発売されたこの "Wildflowers" は、強烈にルーツ色を出したアルバムで、あたしがもっとも好きな Tom Petty の作品になったんです。
グッド・スタッフ / the B-52's 1992年
進藤むつみのおすすめCD (vol.61)
ベストアルバムに新録の曲はあるものの、the B-52's の最後のアルバムがこの "Good Stuff" になりました。生涯一ダンスバンドと宣言して、いつも奇想天外なアプローチで驚かせてくれた彼等が、これ程ポップで、しかも深い味のあるアルバムを届けれくれた事に、正直あたしは驚いてしまいました。あたしの中では彼等の最高、ホントにお勧めしたいアルバムなんです。
だけど、もし彼等のファースト・アルバム "the B-52's" を聴いてない方がいらっしゃれば、どうか先にそちらを聴いてもらいたいと思うんです。なにしろその衝撃といえば、全ての音楽ファンを仰天させたものでしょうから。だってね、ありえない音なんですよ。スカスカのパーティー・ビートは分かるんだけど、あんなにノッペリしたオルガンの音はないですよね。下手ウマというよりは下手くそ(笑)。騒ぎ立てるような二人の女性コーラスを聴いたら、『やかましい!』とさえ思ってしまうアルバムでした。
確かにニュー・ウェーヴ系のバンドって、今までになかったアプローチをしてくる事も多いんです。ニューウェーヴが注目され始めた時期、そういう意味でこの the B-52's と Devo は双璧だったと思います。でも、あたしはやっぱり the B-52's かな?。彼等のヘナチョコ・ビームは強力です。聴いた瞬間、異次元に引き込まれてしまうんです。だけど、『よそ見してたら足を取られて、異次元に突き落とされた』 って言い方のほうが、ピッタリ来るようなバンドだったんですよね(笑)。
アノダイン / アンクル・テュペロ 1993年
進藤むつみのおすすめCD (vol.55)
前回の Johnny Cash のご紹介では、カントリー音楽界からのオルタナ・カントリーへのアプローチのお話をしました。それまでのカントリーの枠に収まり切らなくなったサウンドは、まさにオルタナ・カントリーと呼ぶに相応しい音楽スタイルと言えるでしょう。ただし、オルタナ・カントリーというジャンルの主流は、パンクを中心としたロック・アーティストからのアプローチだと思うんです。
Son Volt, Wilco, the Jayhawks, Whiskeytown (=Ryan Adams), Blue Mountain, the Bottle Rockets・・・。1990年前後から、たくさんのバンドが同時多発的に登場しました。どのバンドも強烈な個性を持ち、またパンクやロックなどをベースにしながらも、強いカントリーへの敬愛が感じられます。表面的なサウンドだけカントリーを真似しているんじゃない、その精神をも取り込もうとしてると思うんです。このへんは60年代の後半、Gram Parsons や Michael Nesmith 等がカントリーにアプローチした『カントリー・ロック』に、とてもよく似ていると思います。
同時期に登場したミュージシャンが、お互いに影響を投げかけながら成長していくのだから、どのバンドが源流とは言えないでしょう。本当の意味ではカントリー・ロックにまで遡るでしょうし、70〜80年代にもその精神を守ってきたバンドはありました。しかし、90年代以降のブームと呼べるほどのオルタナ・カントリーの源流は、今回ご紹介する Uncle Tupelo と言っても良いと思います。登場した時代はもちろんですが、その後のシーンをリードする二人のアーティスト、なんと Son Volt を率いる Jay Farrar と Wilco を率いる Jeff Tweedy が組んでいたバンドだからです。
アンチェインド〜自由であれ! / ジョニー・キャッシュ 1996年
進藤むつみのおすすめCD (vol.54)
オルタナ・カントリーにアプローチしてくるミュージシャンには、大きく分けてふたつのパターンがあると思います。ひとつは Wilco や Ryan Adams に代表される、パンクを中心としたロック・アーティストからのアプローチ。主流はこちらでしょう。スタイルだけの真似なんかじゃないんです。カントリーへの敬愛を持ってアプローチしてくるんです。このあたりは次回の Uncle Tupelo の紹介の時、詳しくお話したいと思います。
そしてもう一つ、それまでの枠に収まり切らなくなった、カントリー音楽界からのアプローチ。Johnny Cash や Emmylou Harris ら大御所の動きは、保守的で型にはまった業界を驚かせました。だけど、元々カントリーって保守的な音楽じゃないと思うんです。果たして Hank Williams は保守的でしょうか?。そんな事ありませんよね。60年代以降スタイルを重視したカントリーが増えた事で、保守的で無難な音楽に変わってしまっただけだと思うんです。もちろん70年代にナッシュビルに反旗をひるがえした、Willie Nelson などの例もありますけどね。
型にはまらないスタイル・・・。近年の Emmylou Harris は、それこそ前人未到の音楽を作り続けています。対して Jonny Cash は・・・、何も変わっていないんですよね。もちろんサウンド・アプローチにオルタナ的なものはありますが、それよりも精神的なものの方が大きいんです。その Johnny Cash の精神は、実はデビューからずっと変わらずにいて、そして強烈な個性を発しているんです。
アンダー・ザ・テーブル・アンド・ドリーミング / デイヴ・マシューズ・バンド 1994年
進藤むつみのおすすめCD (vol.52)
この Dave Matthews Band が日本で受け入れられない理由は、いったい何なのでしょう。ライヴ活動を精力的にこなすジャムバンドだから?。確かに日本では、その手のバンドって売れ難いんですよね。だけど、今やアメリカで一番集客力のあるバンドなんですよね。あまりにも日本との落差が、大きすぎるような気がします。
ロック、ジャズ、ファンク、ブルースなど、多彩な音楽を飲み込んだ幅の広さや、ギター、ベース、ドラムス、サックス、ヴァイオリンといった独特の楽器編成・・・、この辺にあるのでしょうか?。しかも Dave Matthews の奏でるギターって、アコースティック・ギターなんですよね。エレキ・ギターの入らない、またキーボードの入らないサウンドが取っつき難いのでしょうか?。いいえ、初めて聞いた方でも、違和感を感じる事はないでしょう。それほど纏まりのあるサウンドだと思うんです。
メンバーの顔が悪いから?・・・(笑)。確かに Dave のおっさんぶりを含めて、いつまでも見飽きない個性的な顔が並んでますが、それはここでは置いておきましょう。
ライヴの集客力もそうだし、ローリング・ストーン誌の読者投票『20世紀のベスト・ソングライター』で、Lennon / McCartney を上回る6位にランクされるなど、圧倒的な人気を誇る彼等が、日本でだけ売れないのはホントに悲しく思います。そしてそんなバンドこそ、ここで紹介させてもらいたいと思うんです。
妖しき夜 / マジー・スター 1993年
進藤むつみのおすすめCD (vol.51)
Mazzy Star のサウンドは不思議です。奇妙といっても良いかもしれません。サイケ色強いサウンドは、リーダーの David Roback のものでしょう。彼は80年代初頭から「ペイズリー・アンダーグランド」と呼ばれた、サイケデリック・リバイバル・ムーヴメントの中心にいましたから。ただし、淡々と繰り返すコード進行に余韻を残すサウンド作りは、この Mazzy Star の活動の中で研ぎ澄まされていったような気がします。
しかし、そんな独特のサウンドを飲み込んでしまうほど、Hope Sandoval のヴォーカルの魅力が占める割合が高いんです。幽玄といえばいいのでしょうか。霞がかかった闇の中から響いてくる細い声。それは幽体離脱した魂の叫びのようにも思えます。「午前3時の音楽を目指している」といわれたのは Cowboy Junkies ですが、もしかしたら Mazzy Star の音楽の方が、真夜中に相応しいのかもしれません。
ブラインド・メロン / ブラインド・メロン 1992年
進藤むつみのおすすめCD (vol.50)
熱心なファン以外の方は、Blind Melon というバンドをどのようなイメージで捉えているのでしょう。90年代風アメリカン・ハードロック?。だけど、あたしはそれにしては線が細いような気がするんです。素朴すぎると言ってもいいでしょうか。オルタナと呼べる部分はあるけれど、決してグランジ系ではありませんしね。
それでは、スマッシュヒットした "No Rain" のPVのイメージでしょうか。確かにカントリー風のサウンドも、彼等の重要なベースのひとつです。それでも『ミツバチ少女』と野原を駈けているヒッピー風のPVの印象で、彼等を捉えてしまうのは危険だと思うんです。事実そのイメージを拭うために、彼等は相当苦労したようです。
彼等はしっかりとルーツに根ざしたサウンドを得意としながら、その上でハードなアプローチを、独創的な曲展開を繰り広げていました。メンバーはかなりの実力派といっても良いでしょう。そして、なにより Shanon Hoon のヴォーカル・・・、その魅力が大きかったのだと思います。だみ声とまではいかなくても、かすれたような彼の声。だけど、その歌声の瑞々しさは、少年のように思えるくらいなんです。
アンジャニュウ / k.d. ラング 1992年
進藤むつみのおすすめCD (vol.49)
もちろんこの "Ingénue" を含めての話になりますが、90年以降の k.d. lang を知る人には、元々彼女がカントリー・シンガーだったとは信じられないでしょう。単純に音楽のスタイルを変え、カントリーから離れていったから言うのではありません。幅の広いサウンド・アプローチといい、クオリティの高い楽曲といい、ひとつの、それも保守的なカントリーの枠に収めておくのは無理だよなと、あたしは思うんです。
実際彼女は、ちょっとしたカントリー・シンガーだったわけじゃないんですよね。インディからデビューした当時から、地元カナダでは「最も期待される女性シンガー」と注目され、メジャーデビュー後はグラミー賞の「最優秀カントリー女性ヴォーカル賞」を受賞する程の歌手だったんです。そんな k.d. が保守的なカントリー界から脱皮するには、大きな決心が必要だったでしょう。しかし、そこから開放された事で、大きく成長する彼女の姿を見る事ができたのだと思います。
ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ / プライマル・スクリーム 1994年
進藤むつみのおすすめCD (vol.39)
この Primal Scream のことは、何と言って説明すればいいのでしょう。初期のギター・ポップから、パンク、ハウスと、コロコロ変わる音楽スタイル。アルバムごとにサウンドを変えるミュージシャンはいても、まったく別のバンドと思える程スタイルを変えてしまうのはどうかなと思います。それも、全てヴァーチャルというか、偽物臭さが漂うんですよね。共通しているのは、Bobby Gillespie のヘナヘナしたヴォーカルだけ。
しかし、だからこそこのアルバムが生まれたのかもしれません。そして、このアルバムの事だけは、声を高くしてお話しなければなりません。プロデューサーに Tom Dowd と George Drakoulias を迎え、メンフィスで録音された "Give Out but Don't Give Up"。強烈なルーツ色、南部音楽の香りがしてきます。まるで70年前後の the Rolling Stones と同じようなサウンド。そう、Stones が一番魅力的だった頃のね。・・・ただし、もっと偽物っぽいですけど(笑)。
レリッシュ / ジョーン・オズボーン 1995年
進藤むつみのおすすめCD (vol.38)
Sheryl Crow の成功以降、90年代半ばには数多くの女性シンガー・ソングライターが登場しました。Jewel, Heather Nova, Fiona Apple・・・。その中で(こんな括り方もどうかと思いますが)一番成功したのは Alanis Morissette でしょう。
だけど、最も歌が上手かったのは Joan Osborne だったと思います。同世代の他のシンガーに比べて、飛び抜けて上手。声も良いし、説得力もあるしね。しかも、ブルース/R&B をベースにした、強烈なルーツ系ロック・シンガーなんですよ。ルーツ系ロック好きのあたしとしては、彼女を紹介しない訳にはいかないのです。
キュアー・フォー・ペイン / モーフィーン 1993年
進藤むつみのおすすめCD (vol.37)
3人でロック・バンドを組むとしたら、どんな楽器編成を思い浮かべますか?。ドラム、ベース、ギター?。もっともポピュラーな編成ですね。幅広いスタイルのロックに対応できるでしょう。えっ?、ドラム、ベース、キーボード?。うん、あたしもそれはアリだと思います。面白いサウンドが期待できますよね。まあ、ドラムとベースは必須、もうひとつの楽器を何にするかじゃないでしょうか。それも突飛な楽器じゃムリだしね。
だけど、この Morphine はドラム、ベース、バリトンサックスの3人編成。ロック・バンドでは、過去に例を見ない楽器編成じゃないでしょうか。しかも、ドラムのチューニングも低いし、2弦のベースを全てスライドで弾いてるし。曲によってはテナーサックスに持ち替えてますが、そのくらいじゃフォローできないほど、重心の低い独特のサウンドが広がります。
リヴァイヴァル / ギリアン・ウェルチ 1996年
進藤むつみのおすすめCD (vol.36)
初めて Gillian Welch の歌を耳にする時、きっと誰もがこのアルバムの発売日を確かめてしまうでしょう。「ネオ・フォーク・リヴァイヴァルの旗手」というレコード会社の売り文句。ブルーグラス系フォーク調や、カントリー・タッチのサウンド。確かに聴いたその一瞬は、懐かしい時代を感じさせてくれるんです。更に、ジャケット写真の姿も見てしまえば、少なくても50年、素直な感覚でいえば戦前まで時代を遡ってしまうと思います。
だけど、やっぱり彼女は90年代のアーチストです。この "Revival" を聴き終わる頃、「ネオ・フォーク・リヴァイヴァル?、オルタナ・カントリーでしょ!」、ほとんどの人はそう口にしたくなるじゃないでしょうか。ギター弾き語りベースのサウンドにして、このオルタナ感覚。これは彼女の感性はもちろんのこと、パートナーの David Rawlings の才能と、プロデューサーの T Bone Burnett の力など、色んな要素が合わさった結果であり、どれかひとつでも欠けてしまったら、このアルバムから流れてくる空気は違うものだったと思います。
G / ガービッジ 1995年
進藤むつみのおすすめCD (vol.29)
このバンドを率いる Butch Vig は、90年代オルタナティヴ・ロック・シーンの、最重要プロデューサーといえるでしょう。なにしろ Nirvana の "Nevermind"、Sonic Youth の "Dirty"、the Smashing Pumpkins の "Siamese Dream" など、ロック史に残る名盤を次々に生み出してきました。そして、彼がたまたまMTVで見かけたという Shirley Manson の出会いが、バンドの誕生に大きな意味を持つ事になります。
ネヴァーマインド / ニルヴァーナ 1991年
進藤むつみのおすすめCD (vol.22)
なにも今さら言うまでもなく、"Nevermind" は90年代の最重要アルバムである事はもちろん、ロック史上片手で数えなければならない程のアルバムでしょう。それは、単にセールス的(全米1位)な事を言ってるのではありません。オルタナティヴ・ロック、グランジのミュージック・シーンに与えた影響は、後進のミュージシャンにとどまらず、ベテラン・アーティストを唸らせ、レコード会社の姿勢をも変えさせてしまいます。もちろん、単純にとても素晴らしいアルバムなんです。しかし、何故そこまで認められるアルバムを、作り上げる事ができたのでしょうか。
ホリー・パーマー / ホリー・パーマー 1996年
進藤むつみのおすすめCD (vol.20)
Rickie Lee Jones meets Al Green。Holly Palmer がデビューする時、レコード会社が用意したコピーです。うーん、そう言ってもいいのかな?。彼女は影響を受けたミュージシャンに、二人の名前を上げていますしね。だけど、彼女のこのデビュー・アルバムからは、誰の音楽とも比較できない、個性的で独特のグルーヴを持ったサウンドを聴く事ができます。
バークリー音楽院で特待生だったというのですから、この人相当の才女なんですね。しかも美しい!。いえ、顔を見て音楽を聞く訳ではないのですが、天は二物を与える事もあるんだと、嫉妬したくもなります。プロデューサーは Kenny White と本人。共同名義とはいえ、デビュー作からセルフ・プロデュースなのは、彼女の実力の高さの表れでしょう。
チューズデイ・ナイト・ミュージック・クラブ / シェリル・クロウ 1993年
進藤むつみのおすすめCD (vol.18)
Sheryl Crow のセカンド・シングル "All I Wanna Do" は、文字通り時代をリードした曲でした。お洒落で垢抜けたサウンド、そして何気ない日常を巧みに描いた歌詞。90年代に登場した多くの女性シンガー・ソング・ライター、そのブームの先陣を切ったと言っても、異議を唱える人は少ないと思います。しかし、このデビュー・アルバムの他の曲はどうでしょうか。曲自体はオーソドックスなポップス、クラシックなロックの流れを汲んでるような気がします。
いえ、悪く言うつもりはありません。あたしが今まで聴いてきたアルバムの中で、もっともはまった1枚なんですから。だけど、セルフ・タイトルのセカンド (96年)、"the Globe Sessions" (98年)、そして "C'mon C'mon" (2002年) といった、その後の高レベルなアルバムとは、違う聴き方をしなければいけないと思うんです。時代の先進性を求めるのではなくてね。なにしろこの "Tuesday Night Music Club" は、彼女のルーツやベースにある音楽が、もっともストレートに出ているアルバムなんです。
ゲイザー / 吉田美奈子 1990年
進藤むつみのおすすめCD (vol.10)
吉田美奈子の古くからのファンの人は、"夢で逢えたら" (1976年) のように、ポップで爽やかなイメージがあるかもしれません。だけどこの "Gazer" は、物凄く強烈なファンクなんです。覚悟して聞かないと、吹き飛ばされちゃうくらいのね。
テイルズ・フロム・ザ・パンチボウル / プライマス 1995年
進藤むつみのおすすめCD (vol.6)
フジロック・フェスティバルのタイムテーブルに、いくつか気になるバンドの名前を見つけました。その中から、二つのバンドのお話をしたいと思います。
ひとつめのバンドは Primus です。ミクスチャー・ロックというのがピッタリなんですけど、きっとこの言葉は死語でしょうね。もうホントに、ヘヴィ・メタルから、パンク、ファンク、そしてジャズまで、見事に混ざり合った不思議音楽です。仕方がないから分かりやすく、変態ロックって言っておきましょうか(笑)。そんな彼等の "Tales from the Punchbowl" のご紹介です。
カム・オン・オーヴァー / シャナイア・トゥエイン 1997年
進藤むつみのおすすめCD (vol.2)
今回ご紹介するのは Shania Twain の "Come on Over" です。これは「聴くと元気が出てくるアルバム」って言っちゃおうかな♪。
本当に綺麗な女性です。もの凄くスタイルも良いし・・・なんて、ビジュアル的な話はおいといて、Shania Twain は声が魅力ですね。媚びがなくてイヤらしくない。ちょっとハスキーで、変な言い方だけど「竹を割ったような性格だろう」と思えるような声。
そんな彼女が、夫でもある名プロデューサー Robert John "Mutt" Lange (AC/DC, Foreigner や Def Leppard のプロデューサー)の元で、爽やかなバラードから弾けるような軽快な曲まで、しかもカントリーとポップスを合わせたようなゴキゲンなサウンドに乗せて歌うんだから、元気が出ないはずはありません。