Colossal Head / Los Lobos

コロッサル・ヘッド / ロス・ロボス 1996年
進藤むつみのおすすめCD (vol.31)

get "Colossal Head"もし "La Bamba" しか Los Lobos を聴いた事がないとしたら、いえ、テックス・メック系の音楽としてしか彼等を捉えてないのなら、それは非常にもったいない事だと思います。

なにしろこのバンドは、90年代屈指のルーツ・ロックを奏でながら、強烈なオルタナティヴ指向を持っている・・・ 本来、相反すると思われる要素を、平然と同居させているんです。更に実験的な事も、さらっと流していてね。こんなに深い懐を持ったロック・バンドは、他にそうはいないのではないでしょうか。


Los Lobos は、メキシコ系アメリカ人を中心に73年にロスで結成、78年にデビュー。初期のサウンドは R&Bやテックス・メックス(テキサス風・メキシコ風)が中心なのですが、時に骨太なロック・サウンドを聴かせたり、またスペイン語で歌う曲などもあり、彼等のベースになる音楽を大事にしながらも、とてもバラエティ豊かです。

彼等の名前を一躍有名にしたのは、87年の "La Bamba" の大ヒットでしょう。チカーノ・ロッカー Ritchie Valens を取り上げた映画のサウンド・トラックは、12曲中8曲が Los Lobos の演奏。タイトル曲・アルバム共に全米1位となりました。実際に、このサウンドの印象が強い方が多いのだと思います。しかし、彼等のサウンドは日々進化していました。

大きく変わったのは Mitchell Froom プロデュースの "Kiko" (92年) でした。Tchad Blake とのコンビで作られたサウンドは、前後感のない特殊な空間で、ルーツ系をベースにしながらも、実験的だったと言えるでしょう。そしてもうひとつ、Mitchel & Tchad のコンビと、Los Lobos から David HidalgoLouis Perez が参加したプロジェクト、"Latin Playboys" (94年) での実験が大きな意味を持ちます。ラテン系というよりワールド系なエスニックな香り。相当に実験的で、通常はありえない音楽でした。しかし、この2枚のアルバムが、"Colossal Head" への伏線になります。

さて、"Colossal Head" です。彼等のサウンドのベースにはテックス・メックスが、ラテンがあります。だけど、一端それは忘れて下さい。いえ、1曲目のイントロを聴いた瞬間に、そんな先入観はどこかへ行ってしまうでしょうけど。

"Revolution"。これを何に例えたら良いのでしょうか。ラテンですか?、ファンクですか?、オルタナティヴですか?。全てを飲み込んだ無国籍で、今まで存在しえなかったサウンドがあります。まさに革命です。確かに演奏だけの話ではなく、プロデュースの Mitchell Froom & Tchad Blake の、独特の音処理の影響もあります。しかし、前作 "Kiko"、プロジェクトの "Latin Playboys" での実験を踏まえてこそ、作る事ができた音だと思います。このアルバムでのオルタナティヴ感は、実験ではなく完成していますから。それは、まさに時代の最先端のものなんです。

そして、チカーノ・ロック "Mas y Mas" や、ラテン人の琴線に触れそうな "Maricela" には、彼等のベースを感じる事ができます。"Everybody Loves a Train""Can't Stop the Rain" のスワンプ感覚。ラストの "Buddy Ebsen Loves the Night Time" の強烈なブルース。アルバムが進むにつれ、どんどんと深いところに入っていきます。これらの曲の深さは、60年代から様々なアーティストが取り組んできた、そんなディープさと同じものを感じる事ができます。たぶん数年前の彼等なら、そのままストレートな演奏をしたと思うんですよね。90年代風の、しかも時代の最先端を感じさせる演奏はしなかったでしょう。

どの曲でも、もの凄く強いルーツ感と、強烈な現代風サウンドが共存している事こそが、このアルバムの特殊性だと思います。本来は相反するようなものだと思うんです。あたしは驚きましたから。「ルーツとオルタナティヴって、共存できるんだ」ってね。

それが自然に存在している。Los Lobos は、それ程までに懐の深いバンドだと思います。そして、それがこのアルバムの重要性だと。・・・いえ、難しい話は止めましょう。ただ、あたしはそういう音楽こそロックって言いたい。そして、それ程強烈な香りを漂わせている、そんなアルバムをロックって言いたいんですよね。


今世紀に入って Los Lobos のアルバムは、少しルーツ色が強くなったような気がします。プロデューサーが変わった影響もあるのでしょう。だけど、"La Bamba" のプロデュースって Mitchell Froom だったんですよね。とても同じ人のプロデュースとは思えません・・・ていうか、Mitchell って普通の音も作れたんですね(笑)。

Colossal Head
1. Revolution / 2. Mas y Mas / 3. Maricela / 4. Everybody Loves a Train / 5. Can't Stop the Rain / 6. Life Is Good / 7. Little Japan / 8. Manny's Bones / 9. Colossal Head / 10. This Bird's Gonna Fly / 11. Buddy Ebsen Loves the Night Time
produced by Mitchell Froom, Tchad Blake & Los Lobos / recorded at Sunset Sound Factory, Hollywood, CA
Los Lobos (web site: http://www.loslobos.org/
Louis Perez, Cesar Rosas, Conrad Lozano, David Hidalgo & Steve Berlin

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posted by 進藤むつみ on Winter, 2004 in 音楽, 1990年代, アメリカン・ルーツ

comments (4)

ロス・ロボスがでてきましたか。最初の2枚くらいは持ってるんじゃないでしょうか。ターンテーブルを回すのが面倒になってきたのでほとんど聴いていませんが、録画した昔のMTVでときどき"La Bamba"を見たりします。もういっぺん聴いてみよっと。

えーと、osaさんでしょうか?。
Los Lobos って演奏にしろ姿勢にしろ、昔から良いバンドだったと思います。あたしも初期の素直なアルバム、大好きです。
だけど "Kiko", "Colossal Head", "This Time" の3枚は、唯一無二というか、他では聴く事ができない世界が広がるんですよね。もし、レンタルや中古にしろ機会があれば、一度聴いて頂ければと思います。損はしません・・・なんて、言い切って良いのかしら(笑)。

すみません。
osaでした。

えへっ、そうかなと思いました♪

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