Tuesday Night Music Club / Sheryl Crow

チューズデイ・ナイト・ミュージック・クラブ / シェリル・クロウ 1993年
進藤むつみのおすすめCD (vol.18)

get "Tuesday Night Music Club"Sheryl Crow のセカンド・シングル "All I Wanna Do" は、文字通り時代をリードした曲でした。お洒落で垢抜けたサウンド、そして何気ない日常を巧みに描いた歌詞。90年代に登場した多くの女性シンガー・ソング・ライター、そのブームの先陣を切ったと言っても、異議を唱える人は少ないと思います。しかし、このデビュー・アルバムの他の曲はどうでしょうか。曲自体はオーソドックスなポップス、クラシックなロックの流れを汲んでるような気がします。

いえ、悪く言うつもりはありません。あたしが今まで聴いてきたアルバムの中で、もっともはまった1枚なんですから。だけど、セルフ・タイトルのセカンド (96年)、"the Globe Sessions" (98年)、そして "C'mon C'mon" (2002年) といった、その後の高レベルなアルバムとは、違う聴き方をしなければいけないと思うんです。時代の先進性を求めるのではなくてね。なにしろこの "Tuesday Night Music Club" は、彼女のルーツやベースにある音楽が、もっともストレートに出ているアルバムなんです。


Sheryl Crow は、大学卒業後に小学校の音楽教師になりますが、その後ロサンゼルスに移住してミュージシャンに転向します。Michael Jackson, Don Henley, George Harrison などのバックアップ・シンガーとして下積みを経験。そして、プロデューサーの Bill Bottrell の元で毎週火曜日に行ったセッションが、この "Tuesday Night Music Club" へ繋がる事になります。だから David RickettsDavid Baerwald など、セッションへ参加したミュージシャンのアルバムという人もいます。確かにその後のアルバムに比べたら、彼女のリードは大きくないでしょう。その代わり、素直な Sheryl がそこにいると思います。

例えば、オープニングの "Run, Baby, Run" というロック・ワルツ。いきなりの歌い出しや歪み気味のギターのアルペジオなど、特に目新しくはありません。いえ、逆に「どこかで聴いたような曲」と思う人が、多いんじゃないかしら。だからこそ、これまでに彼女が何を聴いてきたか、どんな音楽が好きなのか分かるような気がします。

デビュー・シングルの "Leaving Las Vegas" (全米60位) を聴いた時、あたしは失礼ながら、彼女がこんなにビッグになるとは思いませんでした。もちろん気に入ったから、アルバムを買ったんですけどね。ゆったりとした曲、そして乾いたサウンド。うーん、アメリカですね(笑)。広大な大地が思い浮かぶようです。

"Strong Enough" (5位) は、シンプルなアコースティック弾き語りの曲。静かで、穏やかで・・・。こんな曲があるから、このアルバムが好きなんですよね。彼女のルーツを探るには、もっとも適した曲だと思います。

"Can't Cry Anymore" (36位) は、オーソドックスなカントリー・ロック。この甘ったるい声はどうでしょうか(笑)。実際、歌うのがうまい人じゃないんです。彼女がもっとも光るのは、あたしは作詞なんだと思います。だけど、この媚びてるようにさえ聞こえる曲が、このアルバムであたしの一番のお気に入り(笑)。

様々なスタイルの曲を挟んでの "All I Wanna Do" が、やはりこのアルバムのクライマックスでしょうか。ギターのカッティングにスティール・ギター、そして語りかける Sheryl の声。そんなイントロから始まり、ストーリー性のある歌詞。やっぱり、今聴いてもお洒落です。もっともサウンド的には、特に目を見張るものはないんですけどね。この曲は全米1位にはなれなかったものの、6週連続2位の大ヒット(調べたら、1位になるのを阻んだのは、Boys II Men"I'll Make Love to You" でした)。また、この曲に合わせるように、アルバムも全米3位まで上昇しました。

始めにお話しましたが、自身でプロデュースした "Sheryl Crow" 以降のアルバムの方がレベルは高く、本当の意味で時代をリードするのは、それ以降なのでしょう。だけどストレートな彼女が聴ける、この "Tuesday Night Music Club" は、別の評価をされるべきアルバムなんだと思います。


ホントにあたし、このアルバムには相当ハマリました。95年の "Live from Nashville" はもちろん、スタジオ録音のボーナス・トラックが入った、オーストラリア盤も買いました。カップリングのライヴ録音を求めて、シングルも10枚以上かな?。まんまと、レコード会社の思う壺にはまってしまいました(笑)。だけどね、他に10枚以上買った海賊版ライヴの中に、あたしが見た来日公演があるの!。この歓声の中にあたしの声が入ってると思うと、ちょっとだけお宝だったりするのです♪。

Tuesday Night Music Club
1. Run, Baby, Run / 2. Leaving Las Vegas (さらばラス・ベガス) / 3. Strong Enough / 4. Can't Cry Anymore / 5. Solidify / 6. the Na-Na Song / 7. No One Said It Would Be Easy / 8. What I Can Do for You / 9. All I Wanna Do / 10. We Do What We Can (スイング・ジャズを聴きながら) / 11. I Shall Believe
produced by Bill Bottrell
Sheryl Crow (web site: http://www.sherylcrow.com/
born on February 11, 1962 in Kennett, MO

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posted by 進藤むつみ on Autumn, 2004 in 音楽, 1990年代, シンガー・ソングライター

comments (4)

Sheryl Crow 1st Album"Tuesday Night Music Club"は僕もデビュー当時から聴いていて思い入れがあります。
あれからたくさんのAlbumを出していますが、一番聞き込んだAlbumです。
このAlbumは僕にとっても特別で、派手さはありませんが空気感が違います。
一番好きな曲は"Strong Enough"です。
"All I Wanna Do"などの曲もありますし全体の雰囲気がいいです。
このAlbumが仲間とリラックスして作成した幅広い音楽だった事もあると思います。
本来のソロAlbumは2nd以降だと思います。
2nd,3rdはロック寄りで若干ハードになり、"C'mon C'mon"ではカントリーロック寄りになりました。
このAlbumは夏から秋の夕方、車で聞きたくなります。
一番新しいAlbum"Feels Like Home"も好きで"Easy"や"Best of Times" が気に入っています。

>うえださん♪
もう、この時期このアルバムと "Blind Melon" ばかり聴いてました。
ホントに本来のソロ・デビューはセカンドなんだと思います。なんでセルフタイトル?・・・って思ったけど、聴いて合点がいった。これが彼女の姿なんだなって。だから、あたしは歌手 Sheryl Crow よりも Tuesday Night Music Club セッションが好みだったのかもしれません。・・・セカンド、上手くできてますけどね。
とはいえ、彼女のベースにある音楽には間違いはない。"Run, Baby, Run" の古臭い音楽にぶっ飛んで、"Can't Cry Anymore" 甘い声にときめいた。いいなあ、今でも全然聴ける。"Strong Enough" ですか?。うえださん、結構アコースティックいけるんですね。もっと、ロック寄りの好みかと思ってました。
空気感・・・ですよね。このアルバムも、その時その瞬間の空気を閉じ込める事ができた傑作なんだと思います。

むつみさんの「歌手 Sheryl Crow よりも Tuesday Night Music Club セッションが好みだったのかもしれません。」
とても分かりやすい表現ですね。
僕もまったく同じ様に感じています。
才能ある彼女の為に「毎週火曜日の夜に仲間が集まって行ったセッション」
新しさはありませんが、スタジオの雰囲気、ややしっとりした湿度、心地よくひんやりした夜の温度、彼女の人柄、優しいスタジオミュージシャンなど、そんな雰囲気が伝わってきそうな、僕にとってはその様な印象の特別な1枚です。

>うえださん♪
まあ、ファンっていうのは勝手な事を言うよな・・・っていう、そんな代表的な意見かもしれませんけどね(笑)。
なんにも奇をてらってないんですよね。逆に、それが自然体の彼女を浮き上がらせたのかもしれません。

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