Relish / Joan Osborne

レリッシュ / ジョーン・オズボーン 1995年
進藤むつみのおすすめCD (vol.38)

get "Relish" Sheryl Crow の成功以降、90年代半ばには数多くの女性シンガー・ソングライターが登場しました。Jewel, Heather Nova, Fiona Apple・・・。その中で(こんな括り方もどうかと思いますが)一番成功したのは Alanis Morissette でしょう。

だけど、最も歌が上手かったのは Joan Osborne だったと思います。同世代の他のシンガーに比べて、飛び抜けて上手。声も良いし、説得力もあるしね。しかも、ブルース/R&B をベースにした、強烈なルーツ系ロック・シンガーなんですよ。ルーツ系ロック好きのあたしとしては、彼女を紹介しない訳にはいかないのです。


ケンタッキー州の人口1500人という田舎町から、彼女がニューヨークへ出て来たのは、映画の勉強のためでした。ところが、偶然にブルース・バーで1曲歌ったことから、彼女の音楽キャリアが始まります。その時が人前で歌ったのは初めてという、相当に遅いスタート。しかし、彼女の才能がその遅れをカバーしました。そして、デビュー・アルバム "Relish" の製作を支えた、3人のミュージシャンがいました。

かつて Cindi LauperSophie B. Hawkins を売り出した、プロデューサーの Rick Chertoff。そして、the HootersEric BazilianRob Hyman。ほとんどの曲のクレジットに Joan を含めた4人の名前があり、また、EricRob はほぼ全曲でプレイしています。彼等の貢献なくして、このアルバムを語ることはできません。Joan の歌が主役なのはもちろんですが、彼女を輝かせることができたのは、間違いなくこの3人の力だったと思うんです。


例えば "St. Teresa" のイントロのマンドリン。Eric が弾くマンドリンの音色が、独特の空気を醸し出しています。そして Joan のヴォーカルと絡みだすと、その世界は更に広がっていきます。相当に黒っぽく歌う人です。魅力的な声をしています。暖かい彼女のその声は、まるで胸に染み入ってくるようです。それなのに歌詞は、「赤ん坊を連れて麻薬を売る女・・・に恋する男」ですか。うーん、スゴイ。

ギターのリフが気持ちいい "Right Hand Man"。最初から最後まで、すべて変拍子(7/4)で押し通してくるこの曲は、ストレートに楽しんでいるみたい。クレジットに目を落とせば、前述の4人に加えて D. Van Vliet の名前が目に入ります。Don Van Vliet!?。そう、Captain Beefheart の事です!。彼のファンだという彼女が、リフを拝借したためのクレジットだとのこと。残念ながらあたしはオリジナルの "Clear Spot" を聴いたことはないのですが、さあ、どんな曲なのでしょうか。

大ヒットした "One of Us" (全米4位) は、Eric が「10分で書き上げた」曲だそうです。「もし神に・・・」と歌う、宗教ソングともいえる内容。その曲を嫌みもなく、そして、これだけの説得力をもって歌っているのが新人歌手だなんて!。彼女の実力を最も感じさせてくれるのは、やはりこの曲かもしれません。

カヴァー曲に目を向ければ、Bob Dylan"Man in the Long Blackcoat" があり、Sonny Boy Williamson"Help Me" があります。どちらの曲も、自然に耳に入ってくるのは、完全に自分のものにしているからでしょう。彼女のベースにある音楽に、興味が湧いてきますよね。

聴き返してみると、この "Relish" には捨て曲がありません。引き込まれたまま、1度も我に返る事もなく、60分間が過ぎていきます。すごいクオリティの高いアルバムです。全米9位までチャートを上がり、全米で300万枚というセールス、7部門もグラミーにノミネートされたのも納得できます(ただし受賞はなし)。まさに、彼女の実力に相応しいデビューでした


さて、Joan Osborne が順調に音楽キャリアを重ねたかといえば、そうではありませんでした。翌年のツアーを消化するうちに、行き詰まってしまったようです。このままで良いのか、向いてないんじゃないかって。彼女は次のアルバムを作る事ができずに、レコード会社との契約も失くしてしまいます。結局、セカンドの "Righteous Love" が発売されたのは、5年をおいた2000年になってからでした(サードの "How Sweet It Is" は02年の発売)。

ルーツ・ロックをストレートにするのって、器用とは言えないんですよね。そして、彼女は愛する音楽そのままに、性格や生き方さえ不器用だったのかもしれない・・・なんて、あたしはそう思ったりするんです。

Relish
1. St. Teresa / 2. Man in the Long Black Coat (黒いコートの男) / 3. Right Hand Man / 4. Pensacola / 5. Dracula Moon / 6. One of Us / 7. Ladder / 8. Spider Web / 9. Let's Just Get Naked / 10. Help Me / 11. Crazy Baby / 12. Lumina
produced by Rick Chertoff / recorded at Big Blue, Katonah, NY & the Crawlspace, Philadelphia, PA
Joan Osborne (web site: http://www.joanosborne.com/
born Joan Elizabeth Osborne on July 8, 1962 in Anchorage, KY.

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posted by 進藤むつみ on Winter, 2005 in 音楽, 1990年代, アメリカン・ルーツ

trackback (1)

» Joan Osborne/Early Recording from "IN THE WOODS"

昨日、お家に帰ってきたらAmazon.comから届いていた。 Joan Osb

comments (12)

"One of Us"を初めて聞いた時の、あのなんとも言えない胸が締め付けられるような気持ちは、忘れる事ができません。特定の宗教に関わってもいないけれど、人間が持つ本来の意味での恐れ=神だと捉えて、尚且つPOPに味付けした名曲だと思います。うん。この人の声質も好き。いろんな人がこの曲カバーしたけれど、やっぱり彼女自身が一番ですね。(殿下がカバーしたのは・・・・特別。ないしょ。)

>kazooさん♪
独特の歌なんですよね。胸が締めつけられる・・・。10年近くたって聴き返した今でも、そんな思いになるような気がします。
ただ、曲を書いた Eric Bazilian には、特別なつもりはなかったと思うんです。自然に沸き上がってきたモノでね。だからこそ名曲なのかもしれませんが、やはり歌う人を選ぶ曲だなと思います。やっぱり彼女が一番ですね。
・・・といいながら、あたしは殿下バージョンは聴いた事がありません(汗)。当時ライヴで取り上げたという話(噂)を聞いた時、「ああ、殿下だったら歌えるな」と思ったんですよね。だけどなんかそのまま。どんな感じなんでしょう?。
あぁ、kazooさん、怒らないで・・・。

Joan Osborne できましたか!
この当時ではもうこのおばちゃんねえちゃんがベストですわ。
1年間このアルバムだけ聞いてましたね。
セカンドももちろん買いました。
…かな。
プロデューサーの力というのか、やっぱ力のあるスタッフでやってほしかったなあ。
次期待!
でもこれだけいいアルバム作っちゃうと後が大変みたいですねえ。

ついでに持ってないアルバムまとめ買いですわ。
Amazon.comは便利便利!

>osaさん♪
お、おばちゃんねえちゃんですか?。・・・否定できない(笑)。あたしはライヴの写真を見た時、「どこのおばさんだろう?」と思ったのでした。
その後のプロデューサーやスタッフを見ても、悪くないんですよね。だから、このアルバムのスタッフとの相性が、彼女にとって抜群に良かったのかなと。そのまま続けて作る事ができなかったのが、最大の敗因だったかなと思います。
まあ、良すぎましたけどね。最高のレベルからのスタートって、相当苦しかったのかな・・・。3rd の "How Sweet It Is" ってカバー曲集なんですけど、こういうのが彼女に合ってたのかもしれません。肩の力が抜けて、とてもいい感じです。
・・・で、まとめ買いですか?。「買い過ぎな日々」と反省しつつ注文してから、まだ10日くらいしかたってないような気が(笑)。そのうちご家族から、Amazon 禁止令を出されちゃいますよ♪。

あのね、あのね、"Emancipation"っつうアルバムのDisc3-10曲目で殿下歌ってます。カバーしてます。もし機会があればむつみさん、聞いてね♪確か舞台で2人で共演もあったと思います。(この頃記憶力がとんと・・・くすん。)その時は彼女、多分むつみさんが書いてらっしゃる行き詰った状態の時だったと思うんだけど、この曲の素晴らしさはちっとも色褪せていませんでした。だからか、殿下はギターに集中して、彼女の声がなんともいえなかった。・・・・あ!今ウグイスが鳴いたっ!!

>kazooさん♪。さすが、殿下に関しては詳しいですね。
あっ、でもね、あたしもどのアルバムに入ってるかは知っていました・・・って、だったら買えって話ですね(笑)。だけど、3枚組はね。ファンの方にはたまらないのでしょうが、なかなか手が出せません。えーと、買い物リストにだけは入れておきますね♪。
そうか、舞台での競演もあったんですか。ギターに集中してって、なんて贅沢な話ですか!。彼女にしても、身震いものだったでしょうね。うーん、この歌ってやっぱりスゴイんですよね。見てみたかったなあ・・・。
・・・で、ウグイスですって!?。春を告げに来ましたね♪。うちの辺りはまだまだだなあ。たぶん・・・、あたしもまだ冬眠しちゃいそうですから。

ですよね~~。いや、ファンである私だって、新譜で出た時は嬉しい反面「おいおい!いくらなんだよ~~。」って、マニアの方が聞いたら怒りそうな事考えてますから。はは。むつみさんの所はレンタルでは無理?レンタルだったらね~~。
そうそう、このウグイス君、折角来てくれたから、春はもうす・・・今日は雪が降ってます。なんなんだっ!!←理不尽。

こんばんわぁ~☆

  うぁ~ん☆  すみません、ご面倒おかけしちゃって(汗)  フォントサイズを換える操作教えてください。  頭悪いのでゆっくりと・・・(汗)

  とか言いつつ、こちらではそれほど団子にはなっていないですね。  ひょっとすると、テンプレートのせいかもしれないかも?!  勇気を出してデザインそのものを変えてみようかな?と考えています。  姪っ子にマクドナルドだと言われてしまったし(汗)

  本当にわしの我がままを聞いて下さって感謝しております。  ありがとう♪

>kazooさん♪
そうそう、あたしは2枚組でも戸惑います(笑)。あと、1年に2〜3枚でた時とかね。ただこれって、そんなに高くはなかったような気が・・・。すぐはちょっとムリだと思うけど、やっぱり聞いてみたいです。
ねえ、せっかく来てくれたんだから、このまま真っ直ぐ春になってほしいのに。屋根がうっすらですって?。もう少しかかるのかしら。うん、まだ2月ですものね。

>usagi3さん♪
しまった、見られちゃいましたか?。下のほうだから、気が付かないと思ったんだけどな・・・。隠れて遊んでたのに(笑)。
えーと、うちは行間130%なんですよね。usagi3さんのブログは100%だから、その違いかもしれません。ブログ人のテンプレートは、150%が多いかな?。
テンプレートの変更に入ったみたいですが、変え方だけ書き込みに行きますね♪。

お邪魔します。

LUNA SEAのJが凄いアルバムって言ってたから
買いました。
自分はアラニスやフィオナアップル、シェリルクロウの
こういう系統が大好きで、このアルバムも超好き。
このアルバムは歌も凄いけど、ベースが魅力的な
フレーズを奏でます。
動きの多い派手目なフレーズだけど、ギリギリで
でしゃばらない、歌を邪魔しない。
それが全体を引き締めてる。
何度でも聴ける、飽きの来ない名盤ですね。

>つかささん、レス遅れてすみません。暫くブログから離れてました。
あたしは Sheryl Crow に思い切り嵌りまして、まあ、Alanis も Fiona も含めて、この時代の女性ヴォーカルはだいたい好きなんだけど、この Joan の歌声を初めて聴いた時の衝撃だけは忘れられません。パワーといい、ハートといい、ひとクラス上の人が出てきたなと思いました。ただ・・・、不器用だったなと。もっともっと、ずっと伸びていくと思ってたんだけどなあ。
・・・ベースですか。結構派手ですよね。だけど、確かに邪魔はしてない。今度はベースに注目して改めて聴いてみますね。確かに『何度でも聴ける、飽きの来ない名盤』ですから♪。

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