Bachelor No.2 or, the Last Remains of the Dodo / Aimee Mann

バチェラー No.2 / エイミー・マン 1999年
 進藤むつみのおすすめCD (vol.11)

get "Bachelor No.2"穏やかで、優しい音楽です。"Bachelor No.2" は、自然体で聞く事のできるアルバムです。きっとそれは、彼女の姿勢そのものなのでしょう。Aimee Mann は、類い稀なソングライターなんだと思います。そして、その上にカッコイイんですよ♪


Aimee Mann は、'til Tuesday の中心人物として、1985年にデビュー。シングル "Voices Carry" が全米8位、同名のデビュー・アルバムが19位と、ミュージシャンとしては絶好のスタートを切りました。だけど、レコード会社との考え方の違いもあって、3枚のアルバムを残してバンドは解散。ソロ・ミュージシャンとして、歩みを始めます。

だけど、93年のソロ1作目 "Whatever"、95年のセカンド "I'm with Stupid" 共に、高い評価を受けながらも、セールスには結びつきませんでした。これもレコード会社側のトラブル(経営不振や合併)が、関係していたようです。もったいない話ですよね。二作とも、完成度の高いアルバムなんですよ。

ただここで、彼女はメジャーを離れ、自己レーベルからこのアルバムを発売します。なんとこの "Bachelor No.2"、最初はインターネットからしか、手に入らないアルバムだったんです。

さて、"Bachelor No.2" について、お話しましょう。
アコースティックで優しいサウンドです。穏やかでいて、決して何かを押し付けるような、音作りではありません。これって、Aimee のヴォーカルからしてそうなんです。変な風に、力が入ってないの。すっかり肩の力を抜いて、リラックスして話しかけられているような感じ。だけど、知らない間に彼女の世界に、引き込まれてるんです。

もう1曲目の "How Am I Different" で、それを感じます。静かなギターのバッキングから始まり、語りかけるようなヴォーカル。静かな夜に聞くのが、一番あっているような曲なのに、聞き終わる頃には鳥肌が立っちゃってるんです。どこも奇をてらっては、いないんですけどね。最低限にまで抑えた演奏なのに、説得力のある表現・・・。物凄いセンスと、曲作りの才能を感じます。

"Nothing Is Good Enough"(サントラ "Magnolia" に収録のインスト曲を、ヴォーカル入りで再録)や "Red Vines" にしても、短いイントロからの3分強の時間で、すっかり浸っちゃいますね。どの曲も派手さはなく、地味なくらいなんですけど。

考え方を前に出さない人といて、最初は何気なく話を聞いていた。そのうち話に引き込まれていって、最後には説得されちゃった。上手く言えないんですけど、このアルバムを聞いた印象って、そんな感じがします。

もうひとつ、映画 Magnolia のサントラに関わった事も、彼女にとっては大きかったでしょう。エンディング・テーマの "Save Me" が、グラミー賞にノミネート。そして、サントラも58位と、彼女にとっては久々のヒットとなりました。もっとも映画自体、監督の Paul Thomas Anderson が、Aimee Mann の歌にインスパイアされて作った、って言いますけどね。


最後にこの "Bachelor No.2" は、米英日すべての国で、収録曲・曲順が違っています。日本盤には、前述の "Save Me" が、ボーナス・トラックとして収録されました。確かに名曲なんですよ。だけど、色合いが違うって言うか、そこで流れが止まっちゃうんだよね。こういう編集の仕方は、止めて欲しいなあ。

Bachelor No.2 or, the Last Remains of the Dodo
1. How Am I Different / 2. Nothing Is Good Enough / 3. Red Vines / 4. the Fall of the World's Own Optimist / 5. Satellite / 6.Deathly / 7. Ghost World / 8. Calling It Quits / 9. Driving Sideways / 10. Just like Anyone / 11. Susan / 12. It Takes All Kinds / 13. You Do
produced by Aimee Mann, Buddy Judge, Jon Brion & Mike Denneen / recorded at Q Division, Mad Dog, Dound Chamber, Hook, Aimee's House & Bobby Wood's House
Aimee Mann (web site: http://www.aimeemann.com/
born on September 8, 1960 in Richmond, VA.

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posted by 進藤むつみ on Summer, 2004 in 音楽, 1990年代, シンガー・ソングライター

comments (8)

むつみさんこんばんは。先日長年探していたティルチューズデイの「ウェルカムホーム」をやっと購入できました。それは まだ10代の頃、♪WHAT ABOUT LOVE のPVを見てそれがけっこう僕には衝撃的に映ったから、その一点のみによる思いからなのですが。ベースを弾きながら歌う女性、そしてなんとも言えないたたずまい、媚ないボーカル・・。潜在的に脳裏に植え付けられていました。 そして最近になり当のエイミーマンがソロとしてはまだ活躍していると知り非常に驚いた次第です。それらはまだ聴いてないのですがバンド時代と比較してどうですか? ちなみにこのこのタイトルの意味は 独身NO.2??・・どういう意味なのですか?

>キャリーさん、こんばんは♪
実はあたしは Aimee Mann に嵌って、それから遡って 'til Tuesday を聴いた人間でありまして、それでもデビュー曲の "Voices Carry" くらいは聞き覚えがあったわけなんだけど、当時ニューウエーブ系ロックだった彼女達には思い入れはなかったりします。正直、あまり好きなタイプのバンドじゃなかった。
だけど、'til Tuesday の3rd になると今のソロっぽさを感じさせるフォーキーな曲も表れてきてて、スゴく興味深い。ただ、 "What about Love" の入ってる2ndはその転換期で、デビュー当時のイメージが強いかな?って思います。うん、そうだとすると、今の Aimee Mann とはかなり音楽性が違うんです。
ソロになった当初の彼女は、フォーキーなオルタナって感じでした。ところが、このアルバム以降は、まさにフォークのイメージが強くなってくる。もちろんベースは今でも弾いてるんだけど、殆どの曲でアコースティック・ギターも演奏してるんですね。最近(っていうか、このアルバム以降)のPVは『アコギを弾きながら歌う女性』になっているんです。
キャリーさんの言われた『媚びないヴォーカル』っていうのは、今もその通りだと思います。で、その上でホッとできる音楽になっている。彼女の歌を聴いてると、『癒される』っていうのがあたしの正直な感想でありまして、"What about Love" のイメージを求めて聴くと『チョット違うかな?』って事になるような気がします。・・・あたし的にはおすすめだとしても。
それと、タイトルの "Bachelor No.2" は・・・、あたしも不思議なタイトルだと思ったんですよね。で、思ったまま調べてない(汗)。もしキャリーさんがその意味を調べられたら、あたしにも教えて下さいませ・・・って我が侭(失礼)。

むつみさんこんばんは。そうですか、いきなり意気込んで聴くとギャップを感じますか・・で、その緩衝ということもあり映画「マグノリア」を借りて観てみたんですよ。彼女の歌は・・うーん、やはり自分にとって「ウェルカムホーム」とくに♪WHAT ABOUT LOVEは特別なんだろうか?と自問しました。あのなんともけだるい、そしてややふてぶてしい(?)感じさえする太いボーカルに私は魅了されたわけなんですが。少なくともそういう感じはかなり薄らいでいますよね。しかし、なにか悟りきったような歌い方はそのままでした。ただ僕はけっこうあの煌びやかな80年代の音バンザイ的な人間なのでアコギ主体のサウンドとはどうかなぁ という感じはあります、決して了見が狭いわけではないですが。それでもエイミーマンの曲は機会があれば一つでも多く聴いてみたいと思ってます。・・本作タイトルの意味なんとなく調べてみましたよ。独身NO2 ではなく、「学会誌第二号・ドドの最後の一羽」ということなのでしょうか? ドドとは今では絶滅した飛べない鳥の一種であり、ときには時代遅れの人間の意味でもあるのですが。・・なんとなく見えてきた感じは します。申し訳ないこと に本作はまだ聴いてないのですが(汗)むつみさんはどう見解されますか?

>キャリーさん♪
え・・・"Magnolia"、見たんですか?。カエル・・・じゃないや、あの映画を見る感性があるのなら、どんな音楽も楽しめるような気がするんですけども(笑)。
"Magnolia" を見られたのなら話は早いんだけど、あの映画で使われてる曲って、Supertramp のクラシック・ヒット以外は、ほぼ全て Aimee の曲なんですね。しかも監督の Paul Thomas Anderson が Aimee の曲にインスパイアされて作った映画・・・というより、『Aimee の音楽を映画化するつもりだった』って言ってるくらいの代物で、この時期の彼女の音楽のイメージそのもの・・・と言って良いくらいな気がします。
だから、このアルバム以降の Aimee を聴けるかどうかは、あの映画のイメージを受け止められるかどうかにかかっていると言えるかも。・・・で、やっぱり苦手な感じがするのなら、ソロになってすぐの2作、Whatever" や "I'm with Stupid" あたりの方が馴染めるかもしれません。まあ、オルタナがキライじゃなければですけども。
特別な曲やアルバムってあると思います。それって、十人十色の好みが出るくらい人それぞれなのに、みんな絶対に譲れない程の影響を受けている。あたしだって、他人の評価が低いのに大好きなアルバムはいっぱいある。ただ、その好みは譲れないんだけど、それでも広げて色んな音を聴くと楽しかったりします。
タイトルは・・・、ああ、『学会誌第二号』って感じなんですか。独身に捕われてた(汗)。Dodo については少し調べられたんですけどね。時代遅れっていうのは、Aimee が自分の音楽に対する拘りを、喜んで Dodo に例えてるトコがあるみたい。そうだな、確かに売れ線から離れた素朴な音楽は、Dodo と言ってもいいくらいかも。うん、だとすると、やっぱり "Bachelor No.2" もキャリーさんに聴いてもらいたいような気がします♪。

こんにちは。
コメントを読んでBachelor No. 2 or, the Last Remains of the Dodo聞いてみようと思います。
僕が初めてAimee Mannを聞いたのは、Album"Lost in Space"です。
日本盤CDを買ったのでボーナストラック"Two of Us"も入っていました。
このAlbumが気に入って"Magnolia" を後から買って聞き、映画も見ました。
この2枚しか聞いた事がありませんが、Album全体の雰囲気がとても気に入っています。
特に秋頃は毎年聞きたくなり、リラックス出来る曲調や声、ギターの音色が気に入っています。
家でゆっくりビールを飲みながら聞いたりしています。

>うえださん♪
えっ?、うえださんが "Bachelor No. 2..." ?・・・って思ったけど、"Magnoria" も聴かれてるんですね。趣味がお広い。
秋から冬にかけて良いですね。あたしはホッとしたいときかなあ。気持ちが乱れちゃってる時でも、フラットに戻してくれるような気がするんです。ビール・・・というか、お酒は今はほとんど飲まないから、コーヒーを飲みながらですけども。
"Magnolia" を聴こうとしたら見当たらないんですよね。あんなの誰かに貸すわけないし、変なトコにしまっちゃってるんだろうなあ。聴きたい時に見当たらないのは悔しい。
アルバムを聴かれたら、ぜひぜひ感想を聞かせてくださいませ♪。

iTunesに無かったのでCDを買いました。
いいですね。凄く気に入りました。
リズムやペースがとても落ち着きます。
声もやっぱり好きです。
ジャケットも雰囲気のままです。
音楽と関係ありませんが、凄く美人ですね。

>うえださん♪
気に入ってもらえて良かった。Queen もこれもダメだったらどうしようかと思いました。
落ち着くのは、素の彼女の世界だからって気がします。作られたアルバムじゃなくてね。そこにす〜っと、こっちが入って行けてる感じ。で、美人・・・ですよね。天は二物を与えるんだなあ。
ちなみに、あたしはiTunes始め配信サービスで買った事はなかったりします。

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