Good Stuff / the B-52's

the B-52's はジョージア州アセンズで、Fred Schneider, Kate Pierson 等を中心に結成されました。友人宅でドンチャン騒ぎをしたのが忘れられなくて・・・という話なのですが、かねてから知り合いだった彼等が、『トロピカル・ドリンクに酔った勢い』で結成したという方が正しいようです。ただ、この時点で Ricky & Cindy のWilson 兄妹は、楽器の演奏経験がなかったっていうんですよね。Elvis Presley や Nancy Sinatra などの50〜60年代の音楽が好きだった彼等が、独特のスタイルを持ったダンスバンドを組む。そんな、コンセプトが先にあったような気がします。

ニューヨークに進出した彼等はライヴの経験を積む中で、シングル "Rock Lobster" を自主製作。これが Island レコードの Chris Blackwell の目に留まり、直々のプロデュースで製作されたのがファースト・アルバム "the B-52's" (79年) でした。レコーディングはバハマのコンパス・ポイント。SFチックなオープニング曲から、なにしろ有り得ない音の連続です。チープだし、けばけばしいしね。ただ、そんな画期的なアプローチの勢いでアルバムは全米59位、シングル "Rock Lobster" も56位と上々のスタートとなったのでした。

翌80年にセカンド "Wild Planet"、82年には Talking Heads の David Byrne のプロデュースで "Mesopotamia"、83年にも "Whammy!" と、順調にキャリアと積んでいきます。この中で、少しずつ軌道修正があるんですよね。『キワモノ』で終わらないためにね。これって相当クラシック・ポップスが好きで、キチンと聴いてきたからこそできたんだと思います。ところが、"Bouncing Off the Satellites" のレコーディング中に、Ricky Wilson が癌のため死亡、レコーディングは一時中断します。再開して完成はしたものの、その後しばらくバンドは沈黙することになります。

ただ、活動再開した一発目の "Cosmic Thing" (89年) が彼等の転機になりました。Nile Rodgers と Don Was が半分ずつプロデュースしたこのアルバムでは、今までになくポップなサウンドを聴くことができます。シングル "Love Shack" と "Roam" が共に３位まで上がる大ヒット。アルバムも全米４位。ただ、あたしはサウンド的には突然変異じゃないと思うんです。今までに少しずつ積み重ねたものが、花開いたんじゃないでしょうか。チープさもちゃんと残っているしね♪。

そして、この "Good Stuff" (16位) です。プロデューサーは前作と同じく、Nile Rodgers と Don Was が５曲ずつ。これって、前作は全曲 Nile に頼むつもりだったけど、忙しかったから二人で・・・という窮余の一策だったらしいんですよね。それが結果的にそれぞれの良さを生かした、絶妙のサウンドになったような気がします。決してオーヴァー・プロデュースじゃないしね。それを今回は狙って・・という事でしょうか。ただ・・・、このアルバムからは Cindy Wildon が抜けて、３人編成になっているのがあたしは気掛かりでした。

さて、アルバムを聴いていきましょうか。

"Tell It Like It T-I-IS" で、いきなりのノリの良さ。彼等らしさが溢れています。前作を踏襲したサウンドなんだけど、完成度の高さは明らかに違います。チープさやSFっぽさ、B級映画を見ているような感覚は変わらないのに、サウンドが厚いんですよ。Fred と Kate の掛け合いも絶妙。なにより Kate が元気です。これ、クレジットを見なければ、３人になった事に気がつかない人もいるんじゃないかしら。まったく、Cindy が抜けたマイナスを感じさせないオープニング曲です。

このアルバムからの唯一のシングル・ヒット "Good Stuff" (28位)。まったく 'bun bun - bun bun' じゃないだろ！・・・って思うんですけどね（笑）。こんなトコにチープさが残ってるのが嬉しくなります。だけど、このノリの良さこそ、まさに the B-52's なんでしょうね。だけど、やっぱり Don Was はスゴイや。この後、ルーツ系ロックをリードする仕事をしていくんですよね。音楽に対する造形の深さが現れています。一瞬、ただノリが良い曲って感じるんですけどね。

"Revolution Earth" が、あたしの一番のお気に入りです。このアルバムだけじゃなくって、彼等の曲全てでね。この浮遊感のあるサイケっぽいサウンドは、Nile Rodgers ならです。そして、彼等がここまでのサウンドを届けてくれた事に、あたしは感激しちゃったんですよ。デビュー当時は『瞬間芸』と言われても仕方ない音楽で、その後も少しずつレベルを上げていっていたけど、ついにここまで到達したんですよね。初期の the B-52's しか知らない人には、きっと彼等だって分からない曲だと思います。

バラエディー豊かなこのアルバムには、他にも色々なスタイルの曲が収録されています。その中での注目は、インストルメンタルの "the World's Green Laughter" でしょうか。クラシック・ロックを下敷きにしたダンス・サウンドなんですよね。気持ちいいんですよね、思わず踊りだしたくなるくらいにね♪。

セールス的には全米16位と、前作 "Cosmic Thing" には及びませんでした。ヒット曲も少ないし、比べた時に前作より一段低く見る人もいると思います。だけど、あたしは断然 "Good Stuff"。それぞれの曲の、そしてアルバムトータルの完成度の高さがポイントなんだけど、捨て曲がなくなってるんですよね。前作は、曲によってバラつきが感じられるんです。これはメンバーの頑張りが一番なんでしょうけど、２枚続けて同じプロデューサーとの仕事だった事も関係していると思うんですよね。

さて、これが彼等の最後のアルバムになりました。何度も活動再開が噂されたんですけどね。後のベスト盤には Cindy が復帰して、撮り直した曲があるんですけどね。これだけ出来の良いアルバムが最後になってしまった事が、あたしはとてもショックでした。続けられなかったかなあ？。３人だと１枚は出す事はできても、限界だったのかなあ？。それ以前に、Ricky の死亡が大きかったのかなあ？。いろんな事を考えてしまうあたしです。

特にこの時期、ソロアルバムを出した Fred Schneiderよりも、Kate Pierson が目立ったんですよね。同郷の R.E.M. のレコーディングに参加したり、Iggy Pop ともいっしょにやったりね。彼女の頑張りが実を結ばなかったのは残念です。まあ、99年に Judy and Mary の Yuki 等と結成した Nina は、実を結ばなくて良かったと思ってるんですけどね（笑）。

ちなみにHPを見ると、ライヴ活動は続けてるみたいですね。ちょっと期待です♪。

Good Stuff

1. Tell It Like It T-I-Is / 2. Hot Pants Explosion / 3. Good Stuff / 4. Revolution Earth / 5. Dreamland / 6. Is That You Mo-Dean? / 7. the World's Green Laughter / 8. Vision of a Kiss / 9. Brezin' / 10. Bad Influence

produced by Don Was & Nile Rodgers / recorded at Bearsville Studios, Bearsville, NY, Ocean Way Studios, L.A., CA, the Power Station, NYC & Skyline Studios, NYC

the B-52's （web site: http://www.theb52s.com/ ）

Fred Schneider, Kate Pierson & Keith Strickland

Fred Schneider

born on July 1, 1951

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