Garbage / Garbage

G / ガービッジ 1995年
進藤むつみのおすすめCD (vol.29)

get "Garbage"このバンドを率いる Butch Vig は、90年代オルタナティヴ・ロック・シーンの、最重要プロデューサーといえるでしょう。なにしろ Nirvana"Nevermind"Sonic Youth"Dirty"the Smashing Pumpkins"Siamese Dream" など、ロック史に残る名盤を次々に生み出してきました。そして、彼がたまたまMTVで見かけたという Shirley Manson の出会いが、バンドの誕生に大きな意味を持つ事になります。


その Shirley Manson は、自らのバンド Angelfish を率いてデビューしています。唯一のアルバム "Angelfish" (94年) は、元 Talking HeadsChris FrantzTina Weymouth のプロデュースで悪くはないんです。ストレートなポップ・ロックと言っていいかしら?。だけど彼女の魅力が、上手に引き出せてないんですよね。聴き方によっては彼女らしい面が覗けるにしても、いいトコ50%という感じでしょうか。

それが Butch Vig の手に掛かるとどうでしょう。100%どころか200%、300%。その魅力が何倍にも増幅されて、あたし達の耳に届いてきます。なにしろこのバンドの魅力は、彼女に尽きます。気怠げな歌い方とコケティッシュさやエロティックさが同居。また、影響を受けたという the PretendersChrissie HyndePatti Smith のような、カッコ良さやパワーも合わせ持っているから不思議です。

その Shirley のヴォーカルを支えたのは、バンドの演奏。ただ、サウンド自体を個別に取り上げると、ループやノイズの多用が気持ち良くても、取り立てて新しい事をしているわけではないんです。逆に、素直なポップ・ミュージックの手法に乗っ取っているといえるかもしれません。だけど、ヴォーカルが入ると何倍にも増幅されるのは、Butch Vig の力といって良いでしょう。

さて、オープニングの "Supervixen" はイントロから衝撃的ですが、まず2曲目の "Queer" の気怠さに注目しましょう。もう、ヴォーカルのやる気のなさ満載(笑)。それに輪を掛けて、重く湿ったサウンド。この曲で感じる事の出来る色合いが、アルバムの色、そしてバンドのカラーになっていると思います。

アップテンポな "Only Happy When It Rains" (55位) は、もっとも彼等らしい曲のような気がします。90年代オルタナティヴ・ロックなんだけど、すごくポップなんですよ。これってメロディーの良さもありますけど、基本的な考え方や音楽に対する姿勢がそうなんだと思います。また、PVを見るともっと分かりますが、チープさがすごく良いんですよね。Sharley も、あんな派手はメイクをしたり、ミニスカートを穿かなくても良いと思うんだけど、Garbage の意味は「がらくた」。サウンドだけでなく、このB級さ加減が、バンドへの親近感に繋がるのかもしれません。

"Vow" (97位) は、ステレオに振ったギターや曲作りにしても、クラシック・ポップスの手法のような気がしますが、ノイジーなギターと相まって気持ち良い!。だけどこの辺りは、バンドがまだスタートしたばかりで、手探り状態だったのかもしれません。

そして、このアルバムであたしの一番のお気に入りが "Stupid Girl" (24位) です。もう、この曲を聴くためだけで、アルバムを買う価値があるでしょう。イントロのドラムスに重なるギター、途中ベースがスカっと抜けたり、ノイジーな音の中に入るピアノ、エンディングのカット・アウト・・・。あたしの音楽の好みを、分かってて作ってると思えるくらい(笑)。だいたいアルバムは通して聴くのですが、この曲だけは何度繰り返して聴いたか分かりません。そして、この曲のPVは、歩き方から Shirley のやる気のなさが出てて大好き♪です。(主要曲のPVは、彼等のHPから見る事が出来ます)

このアルバムは全米20位、そして全世界でのセールスが500万枚とファンに認められただけでなく、その後のミュージック・シーンに与えた影響も大きかったと思います。そして、なにより爆音で聴いていて気持ち良いのに、いつまでも飽きずに聴けるポップ性との同居が、面白いアルバムだと思います。


この後も Garbage"Version 2.0" (98年)、"Beautifulgarbage" (2001年) と、常にレベルの高いアルバムを発表しています。だけど、ヴォーカルの Shirley の色が、だんだん強くなって行くんですよね。彼女の魅力を前面に出す事が最良とは言え、バンド・サウンドとの両立はこのアルバムが一番だと思います。

それと、彼女の見た目のチープさはどんどん進んで、今や特殊メイクみたいになっています。いえ、それが良いんですけどね(笑)。

Garbage
1. Supervixen / 2. Queer / 3. Only Happy When It Rains / 4. As Heaven Is Wide / 5. Not My Idea / 6. a Stroke of Luck / 7. Vow / 8. Stupid Girl / 9. Dog New Tricks / 10. My Lover's Box / 11. Fix Me Now / 12. Milk
recorded at Smart Studios, Madison, WI
Garbage (web site: http://www.garbage.com/
Shirley Manson, Steve Marker, Duke Erikson & Butch Vig
Shirley Manson
born on August 26, 1966 in Edinburgh, Scottland.

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posted by 進藤むつみ on Winter, 2004 in 音楽, 1990年代, オルタナ

comments (4)

素晴らしい。こんなにガーベッジをきちんと評した文章は初めて読みました。
私はとにかく1stが一番好きなので、それを評価してくださっているのも嬉しい。
PVのシャーリーの歩き方、思い出すなあ・・・非常に印象的でした。懐かしいわあ。

>Screaming Bunnyさん、はじめまして♪。コメントありがとうございます。
だけど・・・そんなちゃんとした文章じゃないですよ、恥ずかしいです(汗)。
Garbage、好きです。あたしももちろんファースト・アルバム☆。ファーストとセカンド以降って、分けて考えた方がイイと思うくらいの思いです。でも、好きだ!!って気持ちは表せても、どうしてもキチンとした紹介文にはならないんですよね。まあ単に力不足という事なんですが(笑)。
歩き方、よかったですよね。忘れられないくらい印象的だったし、魅力的だったと思います。懐かしい・・・って、そうか!、もう10年前なのか・・・。

ガービッジ★はっきり言って1st以外は駄目です。

>マシュリルさん、はじめまして♪
うーん・・・あたしはそうは思わないんですけどね。ただ、だんだんSherlyのソロみたいになっちゃって、バンド色が薄れていったのが悲しいな・・・って。

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