Waitin' for George / the Freewheelers

ウェイティン・フォー・ジョージ / フリー・ホイーラーズ 1996年
進藤むつみのおすすめCD (vol.67)

get "Waitin' for George"訛ってるんですよね。もう、強烈な南部訛り。だけど、あたしはこういうのこそ文化だと思うし、あたしの中に南部への憧れがありますからね。彼等の南部人としての誇りにも感じられて、聴いていて嬉しくなってくるんです。・・・ただ、それでもこれだけ強烈だと、『チョットたいしたものだな』って思っちゃうんですよね。

あっ、ヴォーカルじゃないですよ。the Freewheelers の演奏が訛っているんです。

ギターの音色もそう、ズルズルに引きずったピアノとオルガンもそう、バックアップの女性コーラスもそう。これを南部の音と呼ばなければ、他に当てはまるものなんてないくらいにね。70年代のサザン・ロック、スワンプ・ロックそのものなサウンドに乗せて Luther Russell のダミ声が響く・・・って、やっぱりヴォーカルもそうなのか?(笑)。

実はバンドの情報が少なすぎて、何処の出身かも分からないんですよね。結成がロサンゼルスだって話や、このアルバム以降にリーダーの Luther Russell がオレゴン州のポートランドで活動してる事を思えば、根っからの南部人ではないのかもしれないなって思います。まあ、出身なんてあまり関係ないかもしれません。だって彼等の演奏には、Delaney & BonnieLeon Russell、そして Little Feat と同じような、南部独特のねちっこさと、熱いハートが感じられるんですから。


the Freewheelers は80年代の終わりに L.A. で結成。91年に "the Freewheelers" で Geffen からデビューするものの、アルバムが発売されて直ぐ、ツアーに出る頃には契約が打ち切りになってしまいます。だけど、プロデューサーの George Drakoulias の目に留まって、93年に American Recordings と契約。あたしはこれが良かったのか悪かったのか、難しいところだと思うんです。

彼等の音を考えれば、Geffen より当然 American でしょうね。Rick Rubin 主宰の American Recordings は Black Crowes を輩出し、また Johnny Cash もバックアップするなど、この時期のルーツ系ロックでは一番面白いレーベルだったと思います。あたしも American ってレーベル名だけでCDを買って、そして新しいミュージシャンの演奏に触れ、随分と楽しませてもらいました。

George Drakoulias のプロデュースも文句なし!。前述の Black Crowes を見出して、また Primal Scream の南部化にも手を貸した人で、彼のプロデュースなくしてこのサウンドはなかったでしょう。ただ、売れっ子なわけでね。アルバムの発売が96年になってしまうのは、この時期 the Jayhawks のレコーディングに参加していたプロデューサーを待っていたかららしいんです。タイトルの "Waitin' for George" って George Drakoulias の事なんですって。

ただ、待ったかいのある、それだけの内容のアルバムに仕上げてきました。


オープニングの "Best on Your Way"。イントロのギターの音から、あたしは彼等にのめり込んでしまいました。もう、スゴク泥臭いんですよね。90年代も中旬になると、アメリカン・ルーツの再評価が高まってきた時期で、オルタナ・カントリー勢も含めてたくさんのミュージシャンが出てきてたけど、これだけルーツ寄りの音作りをしたバンドは少ないと思います。もう、南部訛りが強烈なんです(笑)。

一番のバンドの特徴になっているのは、ツイン・キーボード・・・、特にオルガンの音かもしれません。ズルズルに引きずったシンコペーションは、このアルバムが90年代のものだという事を忘れさせます。どう聴いたって70年代の音。だいたい、あたしの第一印象はスワンプ!?・・・だったんですね。そして、そんなサウンドに Luthur Russell のダミ声が乗ってきます。

写真を見ると、そんな声だとは思えないんですよね。男臭さは感じるけれど、ホッソリとした体つきで、あたしはもう少し甘い感じを想像したんです。それなのに、聴こえてくるダミ声(笑)。それも、わざと喉を潰したんじゃないかって思わせるくらいでね。だけど、それが the Freewheelers の音と一体化して、彼等の音がリアルに感じられ、あたしを惹き付ける理由なのかもしれません。


バラッドな "What's the Matter Ruth?" では、そんな彼のソウルフルなヴォーカルが生きてきます。色っぽいんですよね。女性コーラスの扱いも上手で、この辺りはプロデューサーの力量でしょう。ただ、そんな曲であってもサウンドは太いのは、ボトム・・・特にドラムスがシッカリしているからかもしれません。

ピアノのイントロが引きずる "Mother Nature Lady" は、Little Feat?。いえ、Leon Russell って感じもしますね。曲によっては the Allman Brothers っぽいのがあったり Delaney & Bonnie を感じさせたりと、特に新しい事を狙ったわけじゃないのが分かります。ただ、例えば "My Littel Friend" のような音のザラツキ感は、やっぱり90年代のバンドなんですよね。逆に、だからでこそ真正面から南部の音に取り組んで、自分のものにできた自信が感じられるんです。


通して聴いてみると、意外にハードな事がわかります。そしてこれ程のアーシーさは、George Drakoulias のプロデュース作の中でも珍しい程だと思うんです。もちろん彼がいたから、ダウン・トゥ・アースになったわけだし、完成度も高くなったわけなんだけど、Luther Russell を中心にした the Freewheelers ならではの音なんですよね。他のバンドが真似しようとしても、ムズカシイだろうと思う。

だから、逆に "Waitin' for George" の必要があったのかな?って思います。それよりも契約して直ぐにアルバムを発表できたら、その方が面白かったと思うんですよね。Geffen で『つまらない事があって』と言う彼等が、新しいスタートを切って、その一番乗っている状態の音を聴きたかったなと、あたしは思うんです。だって・・・このアルバムって、何事もなかったというくらい全然売れなかったんですから。


さて、このアルバムが発表されて直ぐ、サウンドの要ともいえるオルガンの Dave Sobel が脱退。American Recordings も閉鎖状態となって、the Freewheelers は解散する事になりました。これって、とても残念な事です。あたしはせめてもう一枚、このバンドの音を聴かせて欲しかったと思っているんです。

そして最初にお話したように、リーダーの Luther Russell は Portland へ向かい、ソロ活動やプロデュースに勤しむ事になります。Portland って、インディーズの盛んな土地なんですよね。そこで、さっそく97年にインディーから、ソロ・アルバム "Lowdown World (and Other Assorted Songs)" が発表されました。


実はあたしはそのアルバムは聴いてなくて、あたしが聴いたのは99年の "Down at Kit's" からなんですけどね。これが面白いんですよ。このアルバムって全曲インストで、それでいてやっぱりアーシーで、どこか the Booker T. & MG's を思わせるサウンド。最初は the Freewheelers のイメージで聴いたから戸惑っちゃったんだけど、すぐにまた彼の魅力を見直す事になります。

2001年の "Spare Change" に至っては、基本的に生ギターの弾き語り。いろんなスタイルを、試そうとしてるのかもしれないんですけどね。この人って、シンガー・ソング・ライターとして売り出した方が、面白かったんじゃないかってくらい味のあるアルバム。温かさのある彼の歌声が、今まで以上にストレートに心に染み込んでくるんです。魅力のある人って、何をやっても惹き付けてくるんですよね。

・・・だけど、今のところこのアルバムが、最後になっちゃってるみたいです。これもまた残念。どんなスタイルでいくにしろ、新しい彼のサウンドに触れたいと思うあたしなんです。

Waitin' for George
1. Best Be on Your Way / 2. What's the Matter Ruth? / 3. Mother Nature Lady / 4. Ghost of Tchoupitoulas St. / 5. My Little Friend / 6. (Chico's Sellin') Maps to the Stars / 7. Crime Pays / 8. Walkin' Funny / 9. about Marie / 10. Kiss Her for the Punk / 11. Elevator Man / 12. Blame / 13. Let the Music Bring a Smile
produced by George Drakoulias / recorded at Sound City, Van Nuys, CA, Sunset Sound Fuctory, Hollywood, CA & the Clubhouse, L.A., CA
the Freewheelers
Luther Russell, Jason Hiller, Christopher Joyner, Dave "Chano" Sobel & John Hofer
Luther Russell (web site: http://www.lutherrussell.com/
born 1970

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posted by 進藤むつみ on Spring, 2006 in 音楽, 1990年代, アメリカン・ルーツ

comments (9)

きょうは、結成ー!
だってきのうpecoが、ここに誇りが演奏♪
ただここへロックするつもりだった?

>peco♪
あはっ☆、バンド組みたいの?。こうさぎ・フレンズ・バンド(笑)。小チョビくんに声をかけてみますか?。

おおおお!!そりゃいいですなぁ~~♪  こうさぎのバンド♪  しかし、歌詞が全部俳句か川柳だったりして(笑い)

ハワイアンソングをやる時は是非マハロを呼んでください♪
もちろんウクレレ担当です♪♪♪

>usagi3さん♪
スゴク面白そうだけど、スゴクわがままな集まりになりそうな気も(笑)。全部俳句だとダメだなあ。だけど、たまに4行詩とか書くからイケルかなってね♪。

>まろさん♪
こうか、こうさぎだけじゃなくて、the BlogPet Frends Band☆ にしないとダメですね♪。ウクレレかぁ。そういえば、pecoは何を演奏するのかな?。

そうですねえ。
これ聴いたことないんで聴いてみようかな。

>osaさん、お久しぶりです♪
結構ロックなアルバムなんですけどね。osaさんの好みには合いそうな気がします。ホントにこういうバンドを聴けると、あたしは90年代ってなかなかだと思うんです。機会があれば、ぜひお試しください♪。

これ、最高です!
バンドは今どうしてるのでしょう

>swansongさん♪
おおお!、こんなマイナーなバンドのファンがいるとは!!(笑)。
本文にも書いた通り、バンドとしてはこのアルバムで終わっちゃったんだけど、Lutherのソロ活動もストップしちゃってるのが残念なトコロ・・・と思って彼のサイトを覗いてみたら、どうも新譜が出るみたいですね。まあ,相変わらずインディー扱いなんだろうけど、6年ぶりですか。うーん、聴かなきゃいけないな。だけど、彼にはもう一度表舞台に立ってもらいたいなあ・・・。

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