the Trinity Session / Cowboy Junkies

トリニティ・セッション / カウボーイ・ジャンキーズ 1988年
進藤むつみのおすすめCD (vol.23)

get "the Trinity Session"彼等の地元トロントの教会で、たった1本のマイクを使ってレコーディングされた、この "the Trinity Session" は、信じられない程に静かで穏やかなアルバムです。そして無駄な音を極限まで廃した、透き通った透明感のあるサウンド。彼等の音楽を「静寂か喧騒か」と問われれば、誰もが静寂と答えるでしょう。「午前3時の音楽を目指している」と評されたと聞くと、妙に納得できるくらいですから。だけど、その穏やかなサウンドの裏に潜んだ、彼等の個性や音楽に対する情熱を感じるのには、そう時間はかからないと思うんです。


Michael, Margo, PeterTimmins 3兄弟と、彼等の長年の友人だった Alan Anton の4人によって、1985年にカナダのトロントで結成された Cowboy Junkies。ブルース、フォーク、トラディッショナル(後にはカントリーの影響も大きくなりますが)をベースにした音楽性は、ルーツ回帰と呼べそうなものですが、耳に入ってくるサウンドは、そういう事を意識させないほど自然なものです。86年に "Whites Off Earth Now" で、インディー・レーベルからデビュー。この "the Trinity Session" はメジャー移籍第1弾、彼等の実質のデビュー・アルバムと言ってもいいでしょう。

そして「教会」で、「たった1本のマイク」でレコーディングされたライヴ・アルバムである事が、このアルバムの特徴であり魅力にもなっています。それは、緊張感やスピード感も含めて、そう感じさせるのでしょう(レコーディングは、後にメンバーになる3人を含めて、5人のミュージシャンがサポート)。

オープニングの "Mining for Gold" は、バックの演奏なし、Margo Timmins の声だけが響いてくるアカペラです。この緊張感は素晴らしいものです!。彼等の音楽に対する姿勢を感じさせる、絶妙のオープニング・ソングだと思います。

そして "Misguided Angel" のイントロの、ハーモニカとギターのバッキングに繋がる流れだけで、このアルバムの魅力がわかるでしょう。このアルバムは基本的にどの曲もスローなナンバーなのですが、スピード感を感じさせる演奏はライヴならではのものです。しかもバックのサポートを得る事で、オープニングの Margo とは違い、物憂げで気怠い彼女の声の魅力が現れてきます。それは、彼女の歌声の優しさにも繋がってくると思います。

カヴァー・ソングもたくさん吹き込まれています。

"Blue Moon Revisited" は、彼等のオリジナルに、Elvis Presley などで有名な "Blue Moon" を挿入した曲(Elvis に捧げられています)。"Dreaming My Dreams With You""Walkin' after Midnight" などのカントリーの大ヒット曲も、シッカリと彼等のサウンドになっています。ブルース系の彼等のオリジナル曲と言っても、通っちゃうんじゃないかしら?。もっとも、これほど有名な曲じゃなければですけどね。

そして "Sweet Jane" は、彼等の最高傑作であると共に、このアルバムのハイライトと言えるでしょう。もちろん、誰もが知っている the Velvet Underground の曲ですが、作者の Lou Reed 自身が「過去最高のカヴァーだ!」と認めたほど。Margo のヴォーカルの、そして Cowboy Junkies の魅力を余す事なく伝えるサウンドです(94年にサウンド・トラックに収録される事により、エアプレイ・チャートの52位まで上昇しました)。


全米チャート26位を記録するこのアルバムのレコーディング時間は、わずかに14時間。教会を借りた費用は150ドルだったそうです。次作の "the Caution Horses" からはスタジオ・レコーディングとなりますが、やはりライヴ感へのこだわりは続いているように思えます。そして、現在に至るまでマイペースで2〜3年に1枚、素晴らしいアルバムを届けてくれる Cowboy Junkies。その中でもこの "the Trinity Session" は、彼等の原点といえるアルバムであり、あたしにとっては、最高に癒されるアルバムの1枚なんです。

the Trinity Session
1. Mining for Gold / 2. Misguided Angel / 3. Blue Moon Revisited (Song for Elvis) / 4. I Don't Get It / 5. I'm So Lonesome I Could Cry (泣きたいほどの寂しさだ) / 6. to Love Is to Bury / 7. 200 More Miles / 8. Dreaming My Dreams With You (夢を夢見て) / 9. Working on a Building / 10. Sweet Jane / 11. Postcard Blues / 12. Walkin' after Midnight
produced by Peter Moore / recorded at the Church of the Holy Trinity, Toronto, Canada
Cowboy Junkies (web site: http://www.cowboyjunkies.com/
Margo Timmins, Michael Timminsk, Peter Timmins & Alan Anton
Margo Timmins
born on January 27, 1961 in Montreal, Quebec, Canada.

CD vol.22 へ | CD vol.24 へ
【おすすめCD】の目次を見る

posted by 進藤むつみ on Autumn, 2004 in 音楽, 1980年代, アメリカン・ルーツ

post a comment