Holly Palmer / Holly Palmer

ホリー・パーマー / ホリー・パーマー 1996年
進藤むつみのおすすめCD (vol.20)

get "Holly Palmer" Rickie Lee Jones meets Al GreenHolly Palmer がデビューする時、レコード会社が用意したコピーです。うーん、そう言ってもいいのかな?。彼女は影響を受けたミュージシャンに、二人の名前を上げていますしね。だけど、彼女のこのデビュー・アルバムからは、誰の音楽とも比較できない、個性的で独特のグルーヴを持ったサウンドを聴く事ができます。

バークリー音楽院で特待生だったというのですから、この人相当の才女なんですね。しかも美しい!。いえ、顔を見て音楽を聞く訳ではないのですが、天は二物を与える事もあるんだと、嫉妬したくもなります。プロデューサーは Kenny White と本人。共同名義とはいえ、デビュー作からセルフ・プロデュースなのは、彼女の実力の高さの表れでしょう。


最初は、ジャジーで穏やかなサウンドに聞こえるんです。これはハイ・スクール時代にジャズ・バンドを組んでいたり、その後、ジャズ・クラブで歌っていた経験が出ているのではないかと思います。だけどよく聴くと、もの凄く独特のグルーヴを持ってるんです。この辺が Rickie LeeAl とも違う、90年代らしいアーチストの特徴でしょう。そして、彼女の個性が光る部分だと思います。

"Five Little Birds" は、それが顕著に出ている曲だと思います。穏やかなサウンド、生ピアノとアコースティック・ギターで始まる曲なのに、いつのまにか彼女の世界に取り込まれていきます。なにしろ、どんどんウネっていきますからね。この曲を聞き終わった時には、この世界から逃れられなくなっている事でしょう。

リズム感のある "Scandinavian Ladies" にしても、普通のポップスを聴くつもりではいけません。次第に、独特のグルーヴが忍び寄ってきます。彼女は、ホントに音楽を分かっている人なのでしょうね。複雑な音の重ね方や、異様に高いテンションを含むアレンジも、理論を理解していなければできない事だと思います。もちろん、歌詞やメロディー・ラインも素晴らしいんですけどね。ただ、それをひけらかさないところも、彼女の魅力なのかもしれません。

そして、その上に様々なエッセンスを取り入れてるアルバムです。例えば "Different Languages" などは、カントリーのエッセンスが入っています。カントリー・ソングじゃないですよ。それを彼女の味付けで料理し直しているんです。(そういえば、ジャケットはカントリーっぽいですね)。

"Come Lie with Me" は、ジャズのエッセンス。サウンド・トラックを思わせるよう。ピアノ弾き語りの "Sal the Gardener" はゴスペルかしら?。ワールド・ミュージックやプログレッシヴ・ロックを思わせるような曲さえもあります。

そして Holly Palmer の歌は、どれも映画の一画面を、思い浮かべさせてくれるような気がします。いえ、もしかすると1枚の写真かもしれません。どちらにせよ、見えるものを思わせる音楽。いろんな情景を思い浮かべながら、聴いてもらいたい1枚です。はたして、どんな情景を思い浮かべる事ができるでしょうか?。


もちろんこの "Holly Palmer" は、あたしのお気に入りのアルバムです。そして、相当売れると思ってました。だけど、完全な不発に終わってしまうんです。時々サウンド・トラックへの参加で名前を見るだけで、次作 "I Confess" (2003年) までは7年の歳月が必要になりました。プロモーション・ヴィデオを見ると(彼女のサイトで見る事ができます)、相変わらずのレベルに嬉しくなってしまいます。このアルバムのような、アコースティックなサウンドではないんですけどね。

だけど、"I Confess" は、Amazonでも取り扱ってないんです(.comも)。残念!。

Holly Palmer
1. Five Little Birds / 2. Scandinavian Ladies / 3. Different Languages / 4. Come Lie with Me / 5. Lickerish Man / 6. Wide Open Spaces / 7. Sal the Gardener / 8. the Three of Us / 9. Fourteen Year Old Moment (14年前の思い出) / 10. Oxblood 2x4s / 11. Safety Belt
produced by Kenny White & Holly Palmer / recorded at Sear Sound, NYC, RPM Studio, NYC, Power Station, NYC & Lola Studio, NYC
Holly Palmer (web site: http://www.hollypalmer.com/
born on Santa Monica, CA

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posted by 進藤むつみ on Autumn, 2004 in 音楽, 1990年代, シンガー・ソングライター

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