Celebrity Skin / Hole
セレブリティ・スキン / ホール 1998年
進藤むつみのおすすめCD (vol.66)
ゴシップやスキャンダルと一緒にしか語られないミュージシャンがいます。もちろんスキャンダルはロックスターの証だし、何もないようだと、逆に魅力もないような気もします。だけど、あまりにもそればかりだと、ちょっと違うんじゃないかと思っちゃうんですよね。そういう話って、本来の魅力や実力を十分に認められてこそだと思うんです。
今回ご紹介する Hole の Courtney Love こそ、そんなミュージシャンの代表ではないでしょうか。うん、もう、よくもこれだけ色んな話が出てくるものと思うくらい。確かに、彼女の言動にも問題があるかもしれない。だけど、良い悪いじゃない、単純に巻き込まれてるだけの事もあるんですよね。それなのに、彼女の魅力やバンドの評価以外の話ばかり聞こえてくるんです。
Hole・・・、Courtney Love を、真っ正面から評価する。もしかしたら、色眼鏡抜きで彼女を見つめてる人の方が少ないんじゃないでしょうか。もしそうだとしたら、それはとても残念な事だと思うんです。だって、彼女は90年代、最高の女性ロッカーかもしれないんです。だから・・・あたしは余計な話を抜きにして、彼女の話をさせてもらいたいなと思っているんです。
10代の頃からバンド活動をしていた Courtney Love ですが、それは注目される事はありませんでした。80年代中旬からの女優としてもそう。彼女が本格的に動き出したのは、89年に Hole を結成してからになると思います。メンバーチェンジを繰り返すものの、女性3人と男性1人という構成はいつも同じ。その黒一点、ギターの Eric Erlandson は、唯一最初から最後まで彼女と活動を共にすることになります。
90年、インディーズよりシングル・デビュー。翌91年にはデビュー・アルバム "Pretty on the Inside" を、 Sonic Youth の Kim Gordon らのプロデュースにより発表します。一部の専門家の間では高い評価を受けるものの、このアルバムは・・・まだ音楽的なレベルでは語れないような気がします。渾沌とした世界からの、それは彼女の内面からなのかもしれませんが、荒々しい叫びのグランジ/オルタナでした。
翌年ロック・ミュージシャンとの結婚、そして出産を経て、94年に "Live through This" が発表されます。Dinosaur Jr. や Radiohead らを手掛けた Paul Q. Kolderie のプロデュース。前作の激しさを残しながらも、Courtney の優しさが見えてきます。あたしはこの人って、無防備なくらい素直な女性だと思うんですよね。その上に格好良いし、何もかもを飲み込める懐の深さがある。うん、男は惚れますね♪。そんな彼女の魅力を感じられる、素晴らしいアルバムになったと思います。
しかし・・・このアルバムが発売される僅か4日前に、ミュージシャンの夫が自殺しているのが発見されました。そして2ヶ月後、バンドのベースがオーヴァードーズで死亡。すでにこの頃にはマスコミの餌食になる事も多かった彼女ですが、この事件でスキャンダルと一緒にしか語られないようになってしまったような気がするんです。内容もセールスも良かっただけに、ホントに残念なんですけどね。
この後 Hole は過去の音源集などは発表するものの、Courtney は女優業の方に忙しく、また注目を集めるようになりました。ただ、音楽は捨ててなかったんですね。4年の歳月を費やしたものの、これ程のアルバムを届けてくれたんですから。
98年、"Celebrity Skin" が発表されました。今度は Soul Asylum や Soundgarden らを手掛けた Michael Beinhorn のプロデュース。これが見事にはまりました。しっかりと聴かせるためのサウンドになっているんです。それと、Smashing Pumpkins の Billy Corgan が曲の共作で参加。この事も、ポップ感を高めるのに大きな効果だったと思います。
オープニングの "Celebrity Skin" (全米85位) での勝ち誇ったような歌声。ジャケット写真はね、前作こそ勝ち誇っているけれど、Courtney の自信に満ちた顔が目に浮かぶんですよ。イントロのギターリフに乗せたヴォーカルは力強くて、逞しい彼女の姿が見える。だけど、曲中のしっとりと歌う部分には優しい彼女がいる。エロティックな彼女もね。これと比べちゃうと前作は、まだまだ荒っぽかったな・・・と思っちゃうんです。
"Malibu" (81位) もまたヒット曲となりました。爽やかなポップス風なんだけど、サウンドが締まっているんです。プロデューサーの力ももちろんある。だけど、結成からずっと行動を共にしてきた、ギターの Eric Erlandson あってこそのサウンドだとあたしは思います。彼もまた成長してる。それと、前作のツアーから参加した、ベースの Melissa Auf Der Maur も大きかったかもしれません。ボトムが決まってるんですよね。結果的に、このメンバーが Hole のベストだったと思うんです。
"Dying"・・・あたし好きです。前は感情をストレートにしか出せなかったのに、この手の曲をジックリと聴かせられるようになったのが、彼女の成長なんだと思います。丸くなったのかな?・・・ううん、一回り大きくなったような気がします。なんか、あたしは彼女に任せておけば大丈夫だって思っちゃうんですよね。
"Boys on the Radio" が、アルバム中で最も聴かせる曲じゃないでしょうか。瑞々しい・・・んですよ。変な言い方かもしれないけど、こんな横顔もあるんですよね。ただ、彼女は『叫び』を捨てた訳じゃないから面白い。大きいなと思います。いろんな顔の Courtney がいて、どの彼女にも魅力が溢れてる。感情的になっている彼女にも、優しく包み込んでくれる彼女にも。だから・・・うん、男じゃなくてもきっと惚れちゃうんだと思います(笑)。
Hole らしさ、Courtney らしさがストレートに出てるとすれば、それは "Live through This" なのかもしれません。それは、彼女の生き方とも一致するかもしれないし、圧倒的な存在感を感じる事からもそうかもしれない。だけど、一方からだけの見方でなく、本当の彼女の心を感じるとしたら、あたしはやっぱりこの "Celebrity Skin" だと思うんです。
しかし、残念な事にこれが Hole の最後のアルバムになりました。ツアー後に、ベースの Mellisa が the Smashing Pumpkins に参加するために脱退。Eric と活動を目論んでいたものの、2002年に正式に解散が発表されました。『バンドでやることはなくなったから』と言ってたようですけどね。レコード会社とのトラブルで、身動きが取れなくなったという話もあるんです。
だけど、終わったかといえば終わらない。2004年にまさかの Courtney のソロ・アルバム、"America's Sweetheart" がリリースされました。これね、たいした出来なんですよ。更にゴシップに塗れてる人の作品とは思えない(笑)。"Celebrity Skin" より前の荒々しさが戻ってきて、それでいてキッチリ纏めてきています。・・・だけど、やっぱりあたしは Hole なんですよね。
メンバーに恵まれたのもあるし、彼女にとっていい時期だった事もあるけど、全てが上昇に向かっていたと思うんです。彼女も良かった、周りも良かった。ひとつひとつに無駄がなくて、それが彼女の魅力を更に高めていたような気がするんです。だから・・・、あのままで続けていく事ができたなら、もう一つ上の姿を見せてくれただろうし、あたしは2004年ももう少し違う世界だったような気がしているんです。
- Celebrity Skin
- 1. Celebrity Skin / 2. Awful / 3. Hit So Hard / 4. Malibu / 5. Reasons to Be Beautiful / 6. Dying / 7. Use Once and Destroy / 8. Northern Star / 9. Boys on the Radio / 10. Heaven Tonight / 11. Playing Your Song / 12. Petals
- produced by Michael Beinhorn / recorded at Conway Studios, L.A., CA, (Quad Studios, NYC, Olympic Studios, London, UK & Record Plant, L.A., CA)
- Hole
- Eric Erlandson, Courtney Love, Melissa Auf Der Maur & Patty Schemel
- Courtney Love (web site: http://www.courtneylove.com/ )
- born Courtney Michelle Harrison on July 9, 1964 in San Francisco, CA.
ぎゃー! コートニー!! ホール!!!!!
私が2003年に数年ぶりにバンド活動を再開したのも、まさしくホールの歌が歌いたかったからーーー!!!!!!!
(今うちのサイトのトップ画像もメリッサだし)
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あんまり好き過ぎて、コメントすることがありませんーーー!!!
(お暇でしたらコレ読んでやってください。 http://www.enpitu.ne.jp/usr10/bin/day?id=101544&pg=20050123 )
というか、むつみさんの書いていること、全面的に激しく同意です。
内容のないコメントですいませんーーー。
情報をひとつだけ。
ホールが解散したのは、レコード会社との契約問題からユニバーサルミュージックを相手に訴訟を起こした件で、どこのレコード会社も(びびっちゃって)ホールの新譜を出してくれなくなったからです。ホール自体はやる気満々だったのですが。
そういうわけで、2002年5月の時点でこれ以上待ってもムリだということになり、エリックが解散を表明したようです。本人のそういったコメントもどこかで読みました。
>Screaming Bunnyさん♪。いや、お恥ずかしい(汗)。
ず〜っと、紹介したかったんですよね。それこそ、最初に書こうと思ったのはフジロックの頃で、それなのにどうしても纏まらない。それに、Screaming Bunnyさんが好きだって知ってから、ますます書けなくなっちゃった(笑)。まあ、あたしレベルだとこんなもの・・・というトコで許してください。
訴訟がらみなんでしょうけど、レコード会社を移籍できなくなって、どうにもならなくなくなって・・・って、話は聞いたんですよね。そうか、その通りなのか。そりゃあ、どこもびびりますよね。うーん、残念ですよね。ホントにあたしは、このまま続けていって欲しかったと思うんです。
と、Melissaの写真は衝撃的でした。こんなに素敵な女性だとは思わなかった。実はソロも聴いてないんですよね。今度聴いてみようかな。まあ、少し前の Courtney の写真も、逆の意味で結構衝撃的でしたけどね(笑)。
日記・・・拝見いたしました。
>これは、女として生きることを全身で引き受けた女の顔だ。
そうなんですよね。彼女って、強烈に『女』だと思うんです。女としてしか生きていけない・・・って、当たり前の事かもしれないけど、彼女はそう生きてきたんだと思うんです。
そして、お会いした事ないのにおかしいかもしれませんけど、Screaming Bunnyさんとお話していると、やっぱり女としての意識をスゴク強く感じるんです。そうか、なるほど、Courtneyを目指していたからなのか。・・・なんか、妙に納得しちゃったあたしなんです。
思えばむつみさんのこのサイトを知ったのも、Garbageのレビューを検索で見つけたからでした。
そして今、Holeのレビューが読めるなんて。何だか幸せw
今回のレビューの中で、「ミュージシャンの夫が自殺」という文章が軽く衝撃的かつ爽快でした。私にとってカート・コバーンは、「コートニー・ラヴの夫」という位置づけですから。
こんなのも書きました。貼ってばかりでスミマセン。何だか読んでいただきたくて。(お時間あればテキトーに斜め読みでいいです)
http://www.enpitu.ne.jp/usr10/bin/day?id=101544&pg=20050804
ところで衝撃画像といえば。コートニーが3年前に飛行機で騒いで逮捕された時の画像はご存知でしたっけ?(私はこの画像を見た時、こんな格好の女を搭乗手続きパスさせた時点で、ヴァージン側がおかしいだろうと思いましたw)
http://bunny.incoming.jp/love.jpg
>Screaming Bunnyさん♪
そうでした!、Garbageでした♪。いつもいつも駄文でお恥ずかしい。そうか、検索でヒットしたのがきっかけなんですよね。今だったら、きっとお会いできなかったと思います。
Kurt を評価してないのは、最近も書かれてましたよね。数行でしたけどね。実は、あたしの彼の評価は高いんですよ。それこそ天才ミュージシャン扱い♪。だけど、ここではなるべく触れたくなくって、サラッと流してしまったのでした。
それと、今紹介いただいた日記は、あたしが読ませてもらうようになる直前のでした。確かに、彼はベタ惚れだったと思います。どれだけ彼女が素晴らしいかも、歌ってたような気がしますね。・・・大丈夫?、Screaming Bunnyさん?。最近の日記がストレートじゃないから、なんか様子が分からないのですが・・・。
えーと、この写真は見てませんでした。壊れてますね☆・・・って、壊れてる彼女の姿はよく見ますけど(笑)。だけど、魅力的な女性なんですよね♪。
いえいえ、カート・コバーンを評価していないなんてそんなことないですよ。私、ニルヴァーナはベスト20アーティスト(最近までprofieのページにアップしてました)に入ってますから。ホールの方がずっと好きっていうだけです。
最近書いてたっていうのは何だろう?と思って調べたんですけど、「ジム・モリスンとカート・コバーンは、二人とも技量的には全然たいしたことない。かたやプラス、かたやマイナスの違いはあるものの、二人とも『個』の発散だけで周囲を打ち倒す。
だからこの二人は再現しようと思っちゃ駄目だ」──ってコレですかね? コレだとしたら、かなり高く評価してるつもりなんですが。
私はカートが妙にカリスマにされてるのが気に食わないんです。生き方としてはただのダメ男ですからね。なのに彼のファン(特に男性)は彼を奉って、コートニーをビッチ呼ばわりです。ソレが嫌なだけなんです。
>最近の日記がストレートじゃないから
・・・すごーい。ソレ気づいたの、むつみさんだけかも。初めて言われた。
何かいっぱい書き過ぎでゴメンなさい。むつみさんのレスを見ると、ついついまた書きたいことが出てきちゃってw
>Screaming Bunnyさん♪
そうですよね、前はベスト20アーティストありましたよね?。最近見ようと思って、あれっ?、AlbumsとSongsだけだったっけ?・・・って思ったんですよ。
で、そうそう、この日記です。今見させていただいたら、1月のなんですね。全然最近じゃなかったわ。えーと・・・、うん、褒めてますね・・・って、ちゃんと解釈してないのがバレバレだぁ(汗)。真似するなってことか。
あたしがKurtを一番評価してるのは、ソング・ライターとしてなんですよ。あれほどポップなメロディーラインを書けるなんて、ホントに天才だなと思うんですね。だから、カリスマ視されてもおかしくない・・・けど、まあ世間の見方は違いますか。でもね、あたしはそういう見方はアリだと思うんです。人それぞれです。Courtneyを悪く言う人もいます。でも、やっぱり人それぞれなんです。
ただ、余計な情報ナシに彼女を見た時・・・Holeのアルバムを聴いた時には、そうじゃないだろうと思うんですよね。実際彼女を嫌いな人って、とことん嫌いじゃないですか。それは、情報に躍らされてるからだと思うんです。そうでなければ、こんなに好き嫌いがハッキリ分かれるはずない。だから、ここではなるべく触れたくないと思ったんですよね。
日記・・・たぶん、あたしにデリカシーがないから、あたしだけが言っちゃったんだと思います。失礼しました。
で、いっぱい書き過ぎですか?。いえいえ、うちは伝統的にコメントが長くなるブログなんですよ(笑)。一行のピリッとしたコメントも好きなんだけど、こうしてお喋りするのも大好きだから嬉しいです♪。・・・っていうか、きっとあたしのレスが長いからそうなっちゃうんだろうなあ・・・。
むつみさんてお喋り好きですね。女の子みたいw
今うちのbbsのトップはHoleです。たまたま偶然!
>Screaming Bunnyさん♪。だって、女の子だもん(笑)。
人見知りする方なんですけどね・・・っていうか、社会生活が危ないくらいの人見知り。だけど馴染んでくると、うん、安心しちゃうんでしょうね。
と、あっ、ホントだHoleだ☆。bbsは久しぶりに拝見しました。そういえば、どこのbbsも見てないのって、ブログのスタイルに慣れちゃったのかなあ。知ってる方のブログには思い切ってコメントできても、bbsは恥ずかしく思っちゃいますね。
もしもbbsに書いてくれたら、熱烈歓迎しますよ。良かったらここのリンクも貼ってください。
ま、気が向いたらで!
>Screaming Bunnyさん、ありがとうございます♪
だけど、ううっ、ブログのコメントと違って、全部が見渡せちゃうのは結構恥ずかしいです。しかも、賑わっているサイトさんだとますますね。もしかしたらお邪魔する事があるかもしれませんが、その時にはよろしくお願いします☆。
URLは・・・、貼らないとネカマになっちゃうんですよね(笑)。
セレブリティスキンは、自分にとって理想的な名曲です。今も何度も聞くし、個人的に大好きです。ニルヴァーナのファンだけどね。カートは、僕も天才だと思います。コートニーは、私たちリスナーにとって、この曲で「生き方」「あり方」そのものになったと思います。そのくらいこの曲は魅力的です。音楽の歴史の中には、直接内蔵を震わせる衝撃を与えるものが時々にありますよね。そういう曲はリスナーのというよりは、人々の記憶に長く残ります。それは、魂の震えではないか。
この曲は、そういう種類の曲のひとつなのに、控えめで普通なやさしさに溢れています。これはある意味とても不思議な曲です。これは、コートニーの健全さのそこ深い現れなのだろうと思われます。この意味では、破滅的なカートや、ジムモリソン、ジミヘンドリックスなどとは違い、ジョニーロットンなどに近いのではないかと思います。ただ、気むずかしくて強がりまかせに明るいイギリス人ではなく、どこまでも小うるさくて頑固なのに、おおらかで明るいショー好きで目立ちたがりやのアメリカ人なのでしょう。僕にとっては笑
やはり、彼女のこの余裕と言うか健全さは、そもそも彼女がアクターだった/であるところからきているのだと、僕は思います。
>celtamaryllis、レス遅れてすみません。暫くブログから離れてました。
"Celebrity Skin"は、Courtneyの余裕が感じられる曲だと思うんです。"Live through This"に収録されていた曲とは全然違う。それがあたしには逞しくて優しくてエロティックな彼女に見える。celtamaryllisさんが言われるように、『生き方』『あり方』にもなるんだと思う。だから、もう発売から15年近く経ってしまったけど、あたしはあと15年経っても聞きたくなる曲・アルバムだと思います。
ただ、KurtやJim等と同じ破滅的な感覚は持っていたと思うんですよ。以前はね。だけど、それを乗り越えたから、今があるんだとあたしは思っている。だから、もしかしてKurtやjimももう少し生きる事ができたら、違う姿を見せてくれたのかもしれないなと思っています。