Sweetheart of the Rodeo / the Byrds

ロデオの恋人 / バーズ 1968年
 進藤むつみのおすすめCD (vol.5)

get "Sweetheart of the Rodeo"1990年代のアルバムの紹介が続いたので、今回は少し時代を遡って、the Byrds のお話をしたいと思います。えっ、戻りすぎ?。だけどこの "Sweetheart of the Rodeo" は、 『メジャー・バンドによる最初のカントリー・ロックのアルバム』なんです。それを思うと、現在のオルタナ・カントリーを考える上でも、忘れてはいけない1枚じゃないでしょうか。


1960年代のアメリカのロックを語る時に、必ず挙げられるバンドが the Beach Boys と、この the Byrds です(ソロとしては Bob Dylan の存在ってスゴイけど)。『the Byrds を意識しなかったバンドは、当時のアメリカではなかった』とか、『the Beatles に対する、ロサンゼルスの回答』とも言われてたようです。

the ByrdsRoger (Jim) McGuinn を中心に、David Crosby (CSN&Y), Chris Hillman らと結成されました。デビュー曲は Bob Dylan"Mr. Tambourine Man" という事からも分かるように、当初はフォーク・ロックでしたが、その後サイケデリック・ロック(当時はスペース・ロックかな?)へと、時代の最先端を歩んでいます。それがこのアルバムではカントリー・ロックへと、サウンドがまた変化します。何が the Byrds を、カントリー・ロックへと向かわせたのでしょうか。それはこのアルバムに参加した Gram Parsons との出会いにほかなりません。そして彼こそが、カントリー・ロック創世記の最重要人物なんです。

Gram Parsons は、the International Submarine Band の中心人物としてデビュー。 the Byrds に参加後、the Flying Burrito BrothersChris Hillman らと結成。そしてソロになります。発表したアルバムの数はそれぞれ1枚・1枚・2枚・2枚と少ないのですが、その全てが初期のカントリー・ロックでは重要なアルバムなんですね。後年の再評価も理解できる訳です。

他のアルバムについてはまたの機会として、"Sweetheart of the Rodeo" について少しお話しなければいけません。

当時、カントリーとロックは全く異質の音楽として存在しました。 「保守的な音」 「ヒッピーの音」と、お互いに言い合ってたみたいだしね。だからカントリーの聖地 Nashville で、ロックバンドが録音する事もなかったし(この辺りは DylanMichael Nesmith の話もしたい!)、まして二つの音楽の融合なんて、想像すらできなかったでしょう。そんな時代に Nashville で半分の曲を録音して、正面からカントリーにアプローチしたロックアルバム。彼等のルーツを再検討する事になるアルバムは、とても大きな意味を持ってきます。

録音された曲は Dylan 作と Parsons 作が2曲ずつ。その他はどれもカントリーのカヴァー曲なのですが、表面的に音を似せたモノじゃないんですよ。しっかりした彼等の決意が見えるようです。その中でも、しっとりとしたバラードの "Hickory Wind" は、このアルバムでというより、カントリー・ロックの名曲と言えるんじゃないのかな。 Parsons 最後のアルバムの "Grievous Angel" でも Emmylou Harris とデュエットしてますが、ホントに美しいナンバーです。


しかしこのアルバムは、カントリー側からは評価される事はありませんでした。Gram Parsons は、このアルバムの発表を待たずに、わずか半年でバンドを脱退します。 Roger McGuinn はこの路線をさらに進めて、"Easy Rider" のサントラでは "Ballad of Easy Rider" を歌うことになります。

そして前述の "Hickory Wind" が再録されるソロアルバムを製作中、 Gram Parsons はドラッグとアルコールの過剰摂取で他界します。それは26才という若さでした。

Sweetheart of the Rodeo
1. You Ain't Going Nowhere / 2. I Am a Pilgrim (私は巡礼) / 3. the Christian Life / 4. You Don't Miss Your Water (涙の涸れるまで) / 5. You're Still on My Mind (思い焦がれて) / 6. Pretty Boy Floyd / 7. Hickory Wind / 8. One Hundred Years from Now (100年後の世界) / 9. Blue Canadian Rockies / 10. Life in Prison (監獄暮らし) / 11. Nothing Was Delivered (なにも送ってこない)
produced by Gary Usher / recorded at Nashville & Hollywood
the Byrds
Roger McGuinn, Chris Hillman, Gram Parsons & Kevin Kelley
Gram Parsons
born Ingram Cecil Connor III on November 5, 1946 in Winter Haven, FL; died of a drug overdose on September 19, 1973 (age 26).

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posted by 進藤むつみ on Summer, 2004 in 音楽, 1960年代, アメリカン・ルーツ

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