あたしの一番の後ろめたさ

 
そのひとつは恋愛です。ただ、あたしが自分の中の女を認められるようになって、女として男の人を好きになるようになってからの恋愛は、全然後ろめたく思う事なんてない。まあ、上手くいかなくなって追いかけてみたり、相手の気持ちが分かっていてつれなくしたりとか色々あったけど、それはもう自然なあたしそのものであって、やましく思う事なんて何もなかった。

だけど、自分を認められるようになる前の恋愛を思い出すと、何ていうか恥ずかしさでいっぱいになるんです。あたしは今、あたしの中にいる、そして恋に理屈なんてないけれどの二つのエントリーに書いた事があるけれど、あたしは女装する自分を否定しながら生きてきました。スカートを履くなんていけない事だと思ってた。だから、そんな自分をなかった事として、表面的に生活してるあたしがいた。なるべく誰とも深く関わらないようにしていた。

なのに、何で女の人と恋愛をしたか・・・といえば、誰かがあたしを引き戻してくれるんじゃないかって期待してなんですね。好き・・・だったよ、もちろん。人間としては。女の人としても魅力的だったと思う。だけど、その頃のあたしは、もう男の人に惹かれているのが分かってたんです。だから、女の人を愛する事はできなかった。あたしにとっては、自分を男として生きて行けるようにしてくれる人を求めていただけ。

酷い話ですよね。性欲に揺り動かされて、手当り次第に女の人を求める男の方がずっとマシだと思う。あたしは・・・誰でもいいって事じゃなかった。だけど、あたしが立ち直るキッカケを与えてくれそうな人を選んで、そして付き合って、やっぱり自分の中の女を抑え切れなくなって、逃げるように別れて行く。うん、かえってタチが悪い。しかも、中には同棲までした事もあったりした。まったく、あたしは絶対死んだら地獄に落ちると、そう思っている。そうして付き合った人に対しては、あたしはスゴく後ろめたさを感じているんです。

でもね・・・、実はもっと後ろめたく思ってる事がある。

あたしは20代の前半には、一生子供を作らない宣言をしてました。友達とか両親とか、まあそういった話をした事がある全ての人に。理由は・・・子供が嫌いだからって事にしてた。うん、ホントの事は言えませんもの。ホントに何で作らないか・・・っていえば、女装したいなんて思う忌まわしい血は、あたしの代で終わらせなきゃイケないと思ったんです。そうでないと、生まれた子供にも呪われた血が流れる事になっちゃうって。

馬鹿な話でしょ？。だけど、その頃あたしは、それだけ精神的に追い込まれちゃってたんだ。

あたしが最後にお付き合いした女性には男の子がいました。幼稚園から小学校2年生までの1年半くらい、あたしはその女性とお付き合いしていて、当然その男の子とも深い関わり合いを持つ事になりました。最初はその女性はあたしがホントに子供嫌いだと思ってたみたいで、しばらくして『なんだ、進藤さんって子供嫌いじゃないじゃない』って言っていた。そりゃそうさ、ホントに嫌いなわけがない。

あたしにとってその恋愛は、もう本気で最後のつもりでいました。これでダメだったら、普通に生きるのは諦めようってくらい。この先、もう誰にも縋り付くのはよそうって。だから、あたし的には目一杯その女性とその子を愛したつもりでいた。・・・いたんですけどね。やっぱりあたしはダメなんだ。あたしは男じゃないんだよう。

あたしにとって、唯一どっぷり付き合った子だったなと思う。賢い子だったんだよね。うん、可愛い子だった。ちびっ子だったあいつも、今は高校3年生なんだよなと思う。・・・その子に対して、あたしは一生引き摺るくらい後ろめたい思いを持っているんです。