category: 音楽 > オルタナ (8)
ヤンキー・ホテル・フォックストロット / ウィルコ 2002年
進藤むつみのおすすめCD (vol.69)
(Anodyne / Uncle Tupelo から続く)
オルタナティヴ・カントリーの源流ともいえる Uncle Tupelo は、双頭バンドと呼ばれながらも実質 Jay Farrar のバンドだったと思います。詩もメロディーも歌もギターも、全てにおいて彼がリードしていて、Jeff Tweedy の個性やポップ感は面白いものの、どれをとっても少しずつ力不足。デビュー後3年間の成長は大きかったものの、2人を比べてしまえば、やっぱり Jeff が負けてるんですよね。
そして、Jay Farrar は解散後に組んだバンド Son Volt でも、Uncle Tupelo 時代に得意としたルーツ色を押し進め、強烈な煌めきを見せてきました。もう、オルタナ・カントリーの本流にどっしりと構えて、貫録を感じさせるほどのサウンドを聴かせてくれています。それは強いカントリーへの敬愛を感じさせると共に、彼のハートに嘘がなかった事をも証明したような気がするんです。
対する Jeff Tweedy は・・・、やはり彼が得意としてきたポップ感やパンク的な要素を出してきながらも、最初は自分の求めるサウンドが何なのか分かっていなかったんじゃないかしら。だから、ストレートなオルタナ・カントリー・タッチの曲もありながら、暴力的といえるほどの大音量やノイズで攻めてきたりしたような気がする。だけど、この時の試行錯誤が、そして Jay Farrar がいない事による解放感と焦燥感が、大きく彼を成長させたような気がするんです。
Uncle Tupelo 解散後に Jeff Tweedy が組んだバンドを Wilco といいます。
セレブリティ・スキン / ホール 1998年
進藤むつみのおすすめCD (vol.66)
ゴシップやスキャンダルと一緒にしか語られないミュージシャンがいます。もちろんスキャンダルはロックスターの証だし、何もないようだと、逆に魅力もないような気もします。だけど、あまりにもそればかりだと、ちょっと違うんじゃないかと思っちゃうんですよね。そういう話って、本来の魅力や実力を十分に認められてこそだと思うんです。
今回ご紹介する Hole の Courtney Love こそ、そんなミュージシャンの代表ではないでしょうか。うん、もう、よくもこれだけ色んな話が出てくるものと思うくらい。確かに、彼女の言動にも問題があるかもしれない。だけど、良い悪いじゃない、単純に巻き込まれてるだけの事もあるんですよね。それなのに、彼女の魅力やバンドの評価以外の話ばかり聞こえてくるんです。
Hole・・・、Courtney Love を、真っ正面から評価する。もしかしたら、色眼鏡抜きで彼女を見つめてる人の方が少ないんじゃないでしょうか。もしそうだとしたら、それはとても残念な事だと思うんです。だって、彼女は90年代、最高の女性ロッカーかもしれないんです。だから・・・あたしは余計な話を抜きにして、彼女の話をさせてもらいたいなと思っているんです。
フィーヴァー・イン・フィーヴァー・アウト / ルシャス・ジャクソン 1996年
進藤むつみのおすすめCD (vol.64)
音楽が好きになって、聴き込んで、のめり込んでいくほどに、聴いているジャンルが狭くなるような気がします。だんだんと、自分の好みの音が分かってくるからだと思うんですけどね。あたしがのめり込んでいったのは、ルーツ系のロックでした。特にカントリー・フレーバー溢れるサウンド♪。
逆に言えば、ラップやヒップホップなんかは、最も苦手なジャンルに感じちゃうんです。この Luscious Jackson を初めて聴いた時も、単純にあたしの好きな音楽じゃないと思いました。Beastie Boys のグランド・ロイヤル第1号アーチストと言われても、ドラムスが Beasties のオリジナル・ドラマーだって言われても、あたしにとっては売り文句にならないんです。いえ、Beasite Boys はスゴイと思う。特に "Ill Communication" は、時代そのものを飲み込んだ大傑作だと思います・・・けど、苦手なんですよね(笑)。
リアルタイムで Luscious Jackson のファーストを聴いた後、あたしは彼女達に興味を示す事はありませんでした。セカンドを聴いたのは、発売されて5年以上たってから。それも中古で250円で売っていて、他に買うものがなかったからという後ろ向きな買い方(笑)。だけど、そこにあたしを虜にするサウンドがあったんです。もちろん、ルーツ系ロックなんかじゃないけど、『ヒップホップもイイかもしれない』って初めてあたしに思わせたアルバムが、この "Fever In Fever Out" だったんです。
ブラインド・メロン / ブラインド・メロン 1992年
進藤むつみのおすすめCD (vol.50)
熱心なファン以外の方は、Blind Melon というバンドをどのようなイメージで捉えているのでしょう。90年代風アメリカン・ハードロック?。だけど、あたしはそれにしては線が細いような気がするんです。素朴すぎると言ってもいいでしょうか。オルタナと呼べる部分はあるけれど、決してグランジ系ではありませんしね。
それでは、スマッシュヒットした "No Rain" のPVのイメージでしょうか。確かにカントリー風のサウンドも、彼等の重要なベースのひとつです。それでも『ミツバチ少女』と野原を駈けているヒッピー風のPVの印象で、彼等を捉えてしまうのは危険だと思うんです。事実そのイメージを拭うために、彼等は相当苦労したようです。
彼等はしっかりとルーツに根ざしたサウンドを得意としながら、その上でハードなアプローチを、独創的な曲展開を繰り広げていました。メンバーはかなりの実力派といっても良いでしょう。そして、なにより Shanon Hoon のヴォーカル・・・、その魅力が大きかったのだと思います。だみ声とまではいかなくても、かすれたような彼の声。だけど、その歌声の瑞々しさは、少年のように思えるくらいなんです。
キュアー・フォー・ペイン / モーフィーン 1993年
進藤むつみのおすすめCD (vol.37)
3人でロック・バンドを組むとしたら、どんな楽器編成を思い浮かべますか?。ドラム、ベース、ギター?。もっともポピュラーな編成ですね。幅広いスタイルのロックに対応できるでしょう。えっ?、ドラム、ベース、キーボード?。うん、あたしもそれはアリだと思います。面白いサウンドが期待できますよね。まあ、ドラムとベースは必須、もうひとつの楽器を何にするかじゃないでしょうか。それも突飛な楽器じゃムリだしね。
だけど、この Morphine はドラム、ベース、バリトンサックスの3人編成。ロック・バンドでは、過去に例を見ない楽器編成じゃないでしょうか。しかも、ドラムのチューニングも低いし、2弦のベースを全てスライドで弾いてるし。曲によってはテナーサックスに持ち替えてますが、そのくらいじゃフォローできないほど、重心の低い独特のサウンドが広がります。
G / ガービッジ 1995年
進藤むつみのおすすめCD (vol.29)
このバンドを率いる Butch Vig は、90年代オルタナティヴ・ロック・シーンの、最重要プロデューサーといえるでしょう。なにしろ Nirvana の "Nevermind"、Sonic Youth の "Dirty"、the Smashing Pumpkins の "Siamese Dream" など、ロック史に残る名盤を次々に生み出してきました。そして、彼がたまたまMTVで見かけたという Shirley Manson の出会いが、バンドの誕生に大きな意味を持つ事になります。
ネヴァーマインド / ニルヴァーナ 1991年
進藤むつみのおすすめCD (vol.22)
なにも今さら言うまでもなく、"Nevermind" は90年代の最重要アルバムである事はもちろん、ロック史上片手で数えなければならない程のアルバムでしょう。それは、単にセールス的(全米1位)な事を言ってるのではありません。オルタナティヴ・ロック、グランジのミュージック・シーンに与えた影響は、後進のミュージシャンにとどまらず、ベテラン・アーティストを唸らせ、レコード会社の姿勢をも変えさせてしまいます。もちろん、単純にとても素晴らしいアルバムなんです。しかし、何故そこまで認められるアルバムを、作り上げる事ができたのでしょうか。
テイルズ・フロム・ザ・パンチボウル / プライマス 1995年
進藤むつみのおすすめCD (vol.6)
フジロック・フェスティバルのタイムテーブルに、いくつか気になるバンドの名前を見つけました。その中から、二つのバンドのお話をしたいと思います。
ひとつめのバンドは Primus です。ミクスチャー・ロックというのがピッタリなんですけど、きっとこの言葉は死語でしょうね。もうホントに、ヘヴィ・メタルから、パンク、ファンク、そしてジャズまで、見事に混ざり合った不思議音楽です。仕方がないから分かりやすく、変態ロックって言っておきましょうか(笑)。そんな彼等の "Tales from the Punchbowl" のご紹介です。