Two Eyes / Brenda Russell

出逢いのときめき / ブレンダ・ラッセル 1983年
進藤むつみのおすすめCD (vol.47)

get "Two Eyes"47回目になるこのCD紹介ですが、黒人アーティストの紹介は、今回が実は初めてになります。ルーツ・ミュージック好きのあたしにとって、R&B やブルースは重要な音楽だし、スワンプ感のあるサウンドも好きなんです。だけど、黒人アーティストがストレートにシャウトすると、ちょっとあたしには濃すぎちゃうんですよね。

もちろん黒人・白人という事で、聴く音楽を変えてるつもりはありません。実際、ロックやポップスの中心にいる黒人ミュージシャンも多いし、白人でもソウル・フィーリング溢れるヴォーカルを聴かせる人もいます。例えば以前紹介した Joan Osborne みたいにね。だけど、歌が上手で強烈に黒っぽい彼女にしても、やはり白人が歌ったソウル、ブルー・アイド・ソウルなんだと思います。そのくらいが、あたしにはちょうど良いんですよね。こんな話をすると、ブラック好きの人には笑われそうですけども。

さて、そんなあたしが紹介する黒人アーティストは、だから逆に黒っぽくない人になります。この Brenda Russell は、AOR を歌うシンガー・ソング・ライターで、ブルー・アイド・ソウルの感覚で聴けるかもしれません。事実、彼女が最も影響を受けたアーティストとして名前を挙げるのは、 Laura NyroCarole King だそうですから。まあ Laura の歌声は、黒人にしか聞こえませんけどね。


Brenda Russell はニューヨークに生まれ、12才の時にカナダのトロントへ移り住んだそうです。この「10代の時はトロント」というのが、彼女の音楽性を考える上で、ひとつのポイントかもしれません。一時期ニューヨークに出ますが、トロントに戻って結婚。夫婦で歌ったり曲を書いたりと、音楽活動を進めていきます。

1973年、ロス・アンジェルスに移った二人は、セッションや作曲活動をしながら、デュエットで2枚のアルバムを発表します。しかし、これも78年には離婚と共に活動を終了。そしてソロとなった Brenda は、RufusAndre Fischer のプロデュースで、79年にファースト・アルバム "Brenda Russell" を発表する事になります。

既にこのファースト・アルバムで、彼女らしい洗練された音楽センスが溢れていました。全米30位のヒットとなったシングル "So Good, So Right" は、彼女が黒人と分かって、はじめてチャートを登り出したといいます。81年にはセカンド "Love Life" を発表。この2枚のアルバムだけで、歌もうまく曲のセンスも高い、そしてピアニストでありアレンジャーでもある、才女 Brenda の評価は固まったと言えるでしょう。


そして83年、この "Two Eyes" が発表されました。彼女のキャリアの中で、最高傑作に間違いないでしょう。それまでの活動で磨いてきた、歌詞やメロディー、アレンジも素晴らしいし、溢れ出すセンスも恐ろしいくらい。また、George Benson, Al Jarreau, Michael Franks などを手掛けた、名プロデューサーの Tommy LiPuma (近年では Diana Krall も) が、彼女の良さを更に引き出しています。


オープニングの "I Want Love to Find Me" で、Bill LaBounty との競作のこの曲だけで、ノックアウトされそうです。ものすごい存在感、目が眩みそうな程のセンス。アルバムを通して最も黒っぽいこの曲ですが、それでもソウルというよりポップス、AOR なんですよね。R&B という枠に納められない彼女がいます。

"Hello People" は、元 the Doobie BrothersMichael McDonald との競作。Michael らしいメロディーラインと彼女の歌声が、それぞれの良さを高め合っているようです。だけどこの曲、いえ、この曲だけじゃなくて1曲を除く全てなんだけど、コーラスも全て彼女一人で歌ってるんですよね。Michael とのデュエットを、あたしは聴いてみたかったな。だって、キーボードやアレンジで参加してるですよ!。同じ Warner Bros. なんだし、何で実現しなかったのかと残念に思います。


そして後半の、彼女単独で作られた4曲が圧巻です。

"Jarreau" は、彼女が尊敬する Al Jarreau の事を歌っているのはもちろんですが、曲調やスキャットまでも、彼のスタイルを真似しているんです。Al に対する敬意が溢れているこの曲を聴いて、彼はどのように感じたのでしょうか。

実は "New York Bars" が、あたしの一番のお気に入り。淡々と語りかける調子なのに、逆にそれがニューヨークの夜を、鮮やかに思い浮かべさせるような気がします。ホントに、彼女のセンスの高さを感じる事ができます。

"I'll See You Again"・・・。日本のフォーク・ソングに、こういう曲ってありましたよね(笑)。うーん、色んなスタイルを表現できる人ですね。Stevie Wonder のハーモニカが、哀愁を更に高めています。

最後を締める "Look Down, Young Soldier" は、ゴスペルなんでしょうか。彼女からの言葉が届きます。そしてこの曲だけ、たくさんのミュージシャンがコーラスに参加しているんです。子供達の声が16人、大人の声が19人。クレジットを見ると、Rita Coolidge, Randy Crawford, Christopher Cross, James Ingram, Al Jarreau, Patrice Rushen・・・。これはもう、強烈な反戦のメッセージなんです。


この "Two Eyes" は淡々とし過ぎて、地味な印象を持たれるかもしれません。だけど、この静かさこそ大人の証(笑)。AOR としての時代性も含めて、やはり彼女の最高傑作といえるでしょう。ただし、決して R&B アルバムではありませんので、それだけは気をつけてお聴き下さい。


Brenda Russell は、翌年スウェーデンに移り住んだそうです。この時に「黒人だから R&B をするべきだ」という意見から、開放されたと感じたそうです。そして、地元のレコード会社でレコーディングまで行ったそうですが、契約上の関係からかリリースされる事はありませんでした。うーん、こういうのはチョット残念に思っちゃうんですよね。

Two Eyes
1. I Want Love to Find Me (出逢いのときめき) / 2. It's Something! (愛のサムシング) / 3. Hello People / 4. Two Eyes / 5. Stay Close (あなたのそばに) / 6. Jarreau / 7. New York Bars / 8. I'll See You Again (愛は時をこえ) / 9. Look Down, Young Soldier
produced by Tommy LiPuma / recorded at Sound Labs, Hollywood, CA, Lion Share Recording Studios, L.A., CA & Sunset Sound, Hollywood, CA
Brenda Russell (web site: http://www.brendarussell.com/
born Brenda Gordon on April 8, 1949 in Brooklyn, NY.

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posted by 進藤むつみ on Spring, 2005 in 音楽, 1980年代, シンガー・ソングライター

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