Minute by Minute / the Doobie Brothers

ミニット・バイ・ミニット / ドゥービー・ブラザーズ 1978年
進藤むつみのおすすめCD (vol.26)

get "Minute by Minute"the Captain and Me / the Doobie Brothers から続く)

デビュー以来 the Doobie Brothers を引っ張ってきた Tom Johnston のリタイアにより、急遽メンバーに加わった Michael McDonald。彼の参加はバンドのサウンド自体を、大きく変える事になります。


初期の Doobies は、ルーツ系のウエスト・コースト・ロック。ツイン(トリプル)・ギターとツイン・ドラムという構成からも、そのサウンドが想像できるでしょう。しかし、Michael が参加して以降のサウンドは、キーボード中心のソウル・フィーリング溢れるものです。時代が求めたと言えるのかもしれません。だけど、彼の才能が他のメンバーやレコード会社の、想像を超えるものだったのではないかと、あたしは思っています。

サウンドの変化は、"Takin' It to the Streets" (76年 = 8位) で、すでに現れました。シングル・カットされたタイトル曲(13位)のファルセット・ヴォイスや R&B 系のエッセンスがかかったサウンドは、それまでのファンを驚かせました。そして、次作 "Livin' on the Fault Line" (77年 = 10位) では、更に彼のカラーが強くなります。(ここまでは、Tom Johnston の名前もクレジットされていました)

そして、78年発表の "Minute by Minute" で、そのサウンドは頂点に到達しました。全米1位のセールス、そしてグラミー賞の受賞。彼等の最高傑作と呼ばれるアルバムは、Michael McDonald の貢献なしに、完成する事はなかったでしょう。

オープニング曲 "Here to Love You" (65位) のイントロのピアノ。軽快なドラムスとパーカッションに乗って入ってくるピアノは、前2作でサウンドに馴染んできたファンをも驚かせたようです。ハイ・センスなサウンドに脱帽です。

"What a Fool Believes" (1位) は、MichelKenny Loggins の競作。独特のリフは、多くのアーティストに影響を与え、そして引用される事になります。確かに印象的ですよね。一度聴いたら、忘れられなんじゃないでしょうか。ポップさとメロディーの良さが、うまく同居していると思います。

"Minute by Minute" (14位) も、初期のバンド・サウンドからは考えられないものです。ここまで3曲が Michael のヴォーカル。その事がこのアルバムのカラーを決め、そして、この時期のバンドのサウンドを決定しました。当時、女性歌手から「もっともデュエットしたい男性」と言われていたといいますが、彼のソウル・フィーリング溢れるヴォーカルは絶品で、今聴いたとしても強いインパクトがあるような気がします。

確かに、ずっと Doobies を守ってきた Patrick Simmons らしい楽曲 "Dependin' on You" (25位) や、印象的なギター・リフが初期の Doobies を思わせる "Don't Stop to Watch the Wheels" などもあります。Jeff Baxter (g) や Tiran Porter (b) など、両時代にまたがるメンバーもいるし、プロデューサーも同じ Ted Templeman です。だけど、やっぱりこのアルバムは Michael McDonald のものなんですよね。彼はバンドを、まったく違うサウンドへと変えてしまい、そしてバンドとしても個人としても、一世を風靡する事になりました。


しかし、Patrick Simmons は、このままの活動に疑問を感じて、80年の "One Step Closer" (3位) を最後にスタジオ・レコーディングを停止します。そして 83年のライヴ "Farewell Tour" (79位) では、Tom Johnston が登場した最後の2曲 "Long Train Runnin'""China Grove" が、最高の盛り上がりとなります。これって、バンドの音が変わった事はわかっていても、やはり古くからのファンは、当時のサウンドを求めていたという事でしょうか。その後も、一時的なチャリティーでの結集などは別にして、再結成後 (89年) も Michael 抜きの初期のメンバーが中心となります。

Michael McDonald の参加がなければ、バンドはもっと早く活動停止したと思うし、もちろんグラミー賞の受賞もなかったでしょう。それでもファンは、初期の Tom Johnston 時代の Doobies と、Micahel McDonald をフィーチャーして頂点を極めた Doobies を、別のバンドとして捉えているのでしょうね。ファンの心理って難しいですね。あたしも・・・、"Minute by Minute" のレベルの高さは認めるとしても、"the Captain and Me" を聴いた時の方が、嬉しくなっちゃうんですよね。

Minute by Minute
1. Here to Love You / 2. What a Fool Believes (ある愚か者の場合) / 3. Minute by Minute / 4. Dependin' on You / 5. Don't Stop to Watch the Wheels (轍を見つめて) / 6. Open Your Eyes / 7. Sweet Feelin' / 8. Steamer Lane Breakdown / 9. You Never Change / 10. How Do the Fools Survive?
produced by Ted Templeman / recorded at Warner Bros. Studios, N. Hollywood, CA
the Doobie Brothers (web site: http://www.doobiebros.com/
Patrick Simmons, Michael McDonald, Jeffrey Baxter, Tiran Porter, John Hartman & Keith Knudsen
Michael McDonald (web site: http://www.michaelmcdonald.com/
born on February 12, 1952 in Saint Louis, MO

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posted by 進藤むつみ on Autumn, 2004 in 音楽, 1970年代, アメリカン・ルーツ

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