category: 音楽 > 日本 (5)
Tricycle / ジョニー、ルイス&チャー 1980年
進藤むつみのおすすめCD (vol.70)
偶然に生まれるサウンドがあります。時代にピッタリはまったとか、コンセプトがミュージシャンに合っていたとか、参加しているメンバーやスタッフとの相性が良かったとか、色々な要因でそうなるんだと思う。だけど、そうして完成したサウンドが素晴らしいものだった時、あたしはホントに嬉しくなってしまうんです。そして・・・それが他で聴く事ができないほど個性的なものだった時には、ますますそう思う♪。この "Tricycle" は、そんなアルバムの1枚なんです。
中学時代からスタジオミュージシャンとして活動を始めた Char。天才ギタリストと謳われ、高校時代には金子マリ、鳴瀬喜博らと伝説と呼ばれる Smoky Medicine を結成。76年にNSPの天野滋の詩によるシングル "Navy Blue"、同年にアルバム "Char" でようやくデビューを飾りますが、時代が時代、ミュージシャンとしての道は簡単ではなかったようです。
そんな彼の名を世間に知らしめたのは、翌年、歌謡曲路線に転向してからの3曲でしょう。"気絶するほど悩ましい", "逆光線", "闘牛士"。この3曲の詞は、当時最も売れっ子だった作詞家阿久悠の手によるもの。売る事を念頭に、かなり割り切って活動していたようです。しかし、77年のアルバム "Have a Wine" を経て78年にサード "Thrill" を発表する頃から、彼のその後を変えるいくつかの出来事があったんです。
1977年 進藤むつみのおすすめCD (vol.53)
天野滋さん急死...フォークグループ「NSP」のリーダー
「夕暮れ時はさびしそう」「線香花火」などのヒット曲で知られるフォークグループ「NSP」のリーダーでボーカル、天野滋さんが1日午後、脳内出血のため都内の病院で死去していたことが4日、わかった。52歳だった。葬儀・告別式は故人の希望で3日にメンバーと近親者で営まれた。(Yahoo! News より抜粋)
NSP も 天野滋 も、今はご存知ない方の方が多いのではないかと思います。70年代を代表するフォークグループといっても、派手な活動やパフォーマンスではなかったし、もしかしたらアルバムを聴いたとしても知らない曲ばかりと思われるかもしれません。
だけど、逆に派手ではなかった分、一度その魅力に取り憑かれたならば、きっと心の原風景のようになってしまうと思うんです。そう、素朴で繊細な彼等の歌の世界は、ひっそりとファンの心の中に生き続けているんです。
ロング・バケイション / 大滝詠一 1981年
進藤むつみのおすすめCD (vol.46)
このアルバムの魅力を一言で言うならば、歌手 大滝詠一 を最大限に生かしたサウンドだと思います。もちろん素晴らしい曲が並んでいます。どの曲のメロディーも詩も、ウォール・オブ・サウンドをはじめとして、フォーク調、またはロックン・ロールなど様々なアレンジも、全てが文句の付け所のないほど優れています。
だけど、これってプロデューサー 大滝詠一 が、歌手の 大滝詠一 を生かすための曲を書いて、その世界を広げるために 松本隆 を作詞家に起用して、そして曲によっての演奏も、やはり歌を生かすためのものだったと思うんですよね。過去に色んなタイプのアルバムを発表してきた人だけど、ここまで自身のヴォーカル・アルバムに拘ったのは初めてだったような気がします。
そしてもうひとつ、集大成のアルバムだったと思います。彼自身の音楽活動の集大成、そしてアナログ・レコーディングの集大成。そうして完成したこの "ロング・バケイション" は、日本のポピュラー音楽史上、最高傑作のアルバムになりました。過去にこれだけのアルバムはなかったし、これ以降もこれを越えるアルバムは創られていません。大丈夫、あたしは言い切っちゃいます。ええ、後悔しません(笑)。
ゲイザー / 吉田美奈子 1990年
進藤むつみのおすすめCD (vol.10)
吉田美奈子の古くからのファンの人は、"夢で逢えたら" (1976年) のように、ポップで爽やかなイメージがあるかもしれません。だけどこの "Gazer" は、物凄く強烈なファンクなんです。覚悟して聞かないと、吹き飛ばされちゃうくらいのね。