the Captain and Me / the Doobie Brothers

キャプテン・アンド・ミー / ドゥービー・ブラザーズ 1973年
進藤むつみのおすすめCD (vol.25)

get "the Captain and Me"メンバーチェンジによって、サウンドを変えていくバンドは少なくありません。特に欧米のバンドは、ヴォーカルが変わる事さえも珍しくはなく、そのヴォーカルによって、第何期と考えなければならない場合もあります。しかし、the Doobie Brothers 程にそのバンド・スタイルを変え、そしてそれぞれに評価を受けたバンドは多くはないと思います。今回の『おすすめCD』では、Tom Johnston が引っ張った "the Captain and Me"、そして Michael McDonald をフィーチャーした "Minute by Minute" の2枚に分けてお話したいと思います。


初期の the Doobie Brothers は、Tom Johnston のバンドです。彼こそが the Doobie Brothers。そう言い切ってもいいのではないでしょうか。骨太で男臭いヴォーカル。南部的で泥臭いサウンド。真正面からのストレートな R&R。それらが Tom の個性である事には、誰も異論を唱えようもないでしょう。そして、フォークやカントリー色の強い Patrick Simmons(彼はメンバーチェンジの多かったこのバンドで、ただ1人全てのアルバムに参加)らと、カリフォルニア州で the Doobie Brothers を結成。当初は4人組でスタートします。ちなみに Doobie はマリファナの俗語、実の兄弟でないのに Brothers は当時では珍しかったんじゃないかしら。

1971年のデビュー・アルバムは、完全に不発に終わるものの、プロデューサーの Ted TemplemanVan MorrisonLittle Feat もプロデュース。後に Van Halen を見出した事でも有名。再結成前の Doobies のアルバムは、全て Ted のプロデュース)は、諦める事なく彼等の良さを引き出していきます。翌年発表のセカンド "Toulouse Street" (全米21位) からは、"Listen to the Music" (11位) などのヒットを送り出し、早くも全米の注目を集めます。そして73年に発表されたサード・アルバムが、この "the Captain and Me" (7位) になります。

70年代のウエスト・コーストを代表するアルバムです。傑作ギター・リフの集合体。ツインギター・ツインドラムが、効果的に生きているサウンド。11曲全てが捨て曲なしの傑作アルバムなのですが、まずは "Long Train Runnin'" (8位) と "China Grove" (15位) の2曲を聴いてもらわないと、このアルバムの良さを理解してもらえないでしょう(どちらも Tom Johnston の作)。

最初に "Long Train Runnin'"。この曲の特徴は、イントロから延々と続く、独特なギター・カッティングにあります。どうでしょう?、一度は聴いた事があるんじゃないかしら。そこにアコースティック・ギターが絡み、そして Tom のヴォーカルが入ってくる。この曲の爽快なサウンドは、大平原の中を疾走する汽車を思わせます。複雑じゃない・・・というより、物凄く単純な曲なんですけどね。彼等の良さが現れた代表曲と呼べると思います。

そして "China Grove"。あたしはイントロのギター・リフ一発で、ノックアウトされました。この曲のがもっと単純です。ダイナミックというか豪快というか、いかにも Doobies らしいナンバー。まったく Tom Johnston ならではですね。この曲を聴いた瞬間に、Doobie Brothers とわからない人は、いないんじゃないかしら。難しい事を考える事なく、音楽そのものを楽しめるのが、このバンドの特徴だと思います。

他にも、オープニング曲の "Nutural Thing" の爽やかさ。"Dark Eyed Cajun Woman" の泥臭さ。"without You" のギター・リフ。Pat Simmons 渾身の名曲の "South City Midnight Lady"。どの曲も素直にハートまで届いてきます。この素直さが彼等の初期の代表作、いえ、それ以上にウエスト・コースト・ロックの代表作といわれる所以ではないでしょうか。


この後も the Doobie Brothers は、"What Were Once Vices Are Now Habits" (74年 = 3位) からシングル・カットした "Black Water" が全米1位を記録。そして、サポート・メンバーだった Jeff Baxter(元 Steely Dan)を正式メンバーとした "Stampede" (75年 = 4位) では、サウンドに厚みを見せるなど、順調に活動を続けていきました。

しかし75年のツアー中に、なんと Tom Johnston が倒れてリタイア。同じペースでの活動はできなくなります(その後のアルバム2枚にはクレジットされますが、『全力』という感じではありません)。これまでヴォーカル・ギター・作曲と、まさにバンドの顔だった Tom のリタイアは、the Doobie Brothers 最大の事件でした。

ここで急遽メンバーに加わったのが、Michael McDonald でした(彼も元 Steely Dan のサポート)。彼が選ばれたのは、キーボードが弾けてコーラスがとれるという理由だったといいます。しかし、想像以上に彼の才能が豊かで、そして才能が花開く環境があったのでしょう。Michael のバンドへの参加は、バンドのサウンド自体を大きく変えていく事になります。この続きは "Minute by Minute" で、お話したいと思います。

Minute by Minute / the Doobie Brothere へ続く)

the Captain and Me
1. Natural Thing / 2. Long Train Runnin' / 3. China Grove / 4. Dark Eyed Cajun Woman / 5. Clear As the Driven Snow / 6. without You / 7. South City Midnight Lady / 8. Evil Woman / 9. Busted Down Around O'Connelly Corners / 10. Ukiah / 11. the Captian And Me
produced by Ted Templeman / recorded at Warner Bros. Studios, N. Hollywood, CA
the Doobie Brothers (web site: http://www.doobiebros.com/
Tom Johnston, Pat Simmons, Tiran Porter, John Hartman & Michael Hossack
Tom Johnston
born on August 15, 1948 in Visalia, CA

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posted by 進藤むつみ on Autumn, 2004 in 音楽, 1970年代, アメリカン・ルーツ

comments (6)

こんばんは。 "Long Train Runnin'" しか知らない不届き者です。
でもこの曲ほんと好き。なにかのCMで使われててノックアウトされたクチです。
最近はそういうのも少なくなっちゃって、寂しい限り。

debraさん、いらっしゃいませ♪。ノックアウトされた、同士ですね(笑)。
30年以上前のアルバムですから、知らない方が自然かもしれません。ただ良い曲は、リバイバルにしろCMソングにしろ、新しいリスナーにも届いているというのが、古いファンには嬉しいです。って、あたしもさすがに、リアルタイムじゃ聴いていませんけど(笑)。ホント、色んな曲が色んなキッカケで、耳に入ってきて欲しいと思います。

はじめまして 2枚の対象的なアルバムですね。
トム・ジョンストンとマクドナルド全然違いますもんね。

>unclemさん
「Uncle-Mの日記」さんに伺いましたが、プライベートモードとのことでアクセスできませんでした。

たいへん失礼いたしました。
こちらの手違いで、不快な思いをさせてしまって申し訳ないです。
ご無礼いたしました。

>unclemさん
記事を拝見しました。そうですか、Keith Knudsen は亡くなりましたか。彼はたしか Michael Hossack の後釜ですから、"What Were Once Vices Are Now Habits" からですね(って、あたしこのアルバムのメンバーに、Hossack の名前を書くの忘れてるし!。修正させてもらいました)。結局創立メンバーの John Hartman が抜けてからもバンドを守っていたのは Knudsen ですものね。89年の再結成には参加しなかったけど、96年のライヴ以降は行動を共にしていたので、残念に思います。

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