Body and Soul / Joe Jackson

ボディ・アンド・ソウル / ジョー・ジャクソン 1984年
進藤むつみのおすすめCD (vol.24)

get "Body and Soul"Joe Jackson はイングランド生まれ。奨学金を受けてクラシックを学んだ程、豊かな才能を認められた人です。だけど、卒業後はクラシックではなく、ロックへとを足を進める事になりました。後に Tracy Chapman をプロデュースする David Kershenbaum に見出され、ビート・ロック感覚溢れる "Look Sharp!" でデビュー。すぐさま母国イギリスだけでなく、アメリカでも注目を浴びる事になります。

しかし、彼はそのままのレールの乗る事を拒みました。サードの "Beat Crazy" (80年) ではレゲエに、次作の "Jumpin' Jive" (81年) ではブラック・ミュージックへと、様々なサウンドに興味を示しはじめます。そして翌82年、ニューヨークへ活動のベースを移して、都会風でお洒落なサウンドへと変貌。全米6位の大ヒット曲 "Steppin' Out" が生まれた "Night and Day" (4位) で、一世を風靡したと言えるでしょう。

ところが彼の変化は、とどまる事がありません。この "Body and Soul" では、更にジャズやラテンに傾倒。クラシックの録音に使われる事の多かった、古びたレコーディング・スタジオの特殊な音質と合わせて、更に新しい世界へと足を進めます。この先は収録曲の説明を兼ねながら、お話させてもらいたいと思います。


オープニングの "the Verdict" は、スタジオの特徴が最も出ている曲だと思います。 4.5m の高さに吊られたマイクで録られたその音は、まるでコンサート・ホールでの録音のようです。しかもクラシックとジャズが融合したそのサウンドには、いかに彼の引き出しが多いかを教えてくれる気がします。

"Cha Cha Loco" はラテンの要素が最も強く、軽快なリズムに思わず踊り出したくなります。新らしい挑戦なのに、しっかり自分のモノにしているのは、さすが Joe と言えるでしょう。アルバムになくてはならない曲であり、そしてこのアルバムの色を決めたサウンドだと思います。

ポップな "You Can't Get What You Want (till You Know What You Want)" (15位) は、このアルバムの中では理解しやすい曲だと思います。だけど、彼はベース・アレンジだけでなく、ブラス・アレンジも上手ですね。スゴク生きています。音楽理論をよく知っているだけではなく、音楽が好きだという事も感じられるのではないでしょうか。

Elaine Caswell とのデュエット曲 "Happy Ending" (57位) は、クラシック・ポップスともいえるサウンド。実は、あたしはこの曲が一番のお気に入りなんです。Elaine との掛け合いも然る事ながら、ピアノのアルペジオからのいきなり歌い出しだけでもOK。明るさと暗さの間を行き来するサウンドと歌詞は、名曲だと言い切ってしまいましょうか(笑)。

7分近い演奏のうち、5分以上がインストルメンタルという "Heart of Ice" は、ひたすら同じフレーズを繰り返しての演奏です。ただ、不思議な事にその繰り返しが、新しい誕生を想像させるのです。エンディングに相応しい・・・いえ、逆にこのアルバムは、この曲で終わるしかなかったのでしょう。

どの曲を聴いても、伝統的な音楽を装いながらも、唯一無二。Joe Jackson にしか表現する事のできない、新しいサウンドの展開が楽しめます。確かにチャートは全米20位と 、 "Night and Day" に比べたら振るわなかったかもしれません。しかし内容的には、この後も常に変化を続けていく彼の、最高傑作と呼べると思います。


音楽ファンならお気づきのように、このジャケットは名盤 Sonny Rollins (2) をもじったものです(リンクしてあります。ぜひ見比べて下さい)。しかもタイトルが "Body and Soul"。あたしはこういう洒落って、スゴク好きなんですよね。

Body and Soul
1. the Verdict / 2. Cha Cha Loco / 3. Not Here, Not Now / 4. You Can't Get What You Want (till You Know What You Want) / 5. Go for It / 6. Loisaida / 7. Happy Ending / 8. Be My Number Two / 9. Heart of Ice
produced by David Kershenbaum & Joe Jackson
Joe Jackson (web site: http://www.joejackson.com/
born on August 11, 1954 in Burton-on Trent, England.

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posted by 進藤むつみ on Autumn, 2004 in 音楽, 1980年代, シンガー・ソングライター

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