Revelling - Reckoning / Ani Difranco

レヴェリング - レコニング / アーニー・ディフランコ 2001年
進藤むつみのおすすめCD (vol.27)

get "Revelling, Reckoning"Ani Difranco の音楽を、ひと言で言い表すのは難しい事です。元々はフォークをベースにした、アコースティック・パンクになるのでしょう。あたしは彼女の歯切れの良いギター・カッティングをはじめて聴いた時、とても驚きました。しかしその後バンド・スタイルになり、更に様々なエッセンスを取り入れるにつれて、簡単に説明できるジャンルではなくなってしまいました。これはデビュー以来全てのアルバムを、自身が経営するインディ・レーベルのライチャス・ベイブから発売するというスタイルが、彼女の音楽性の自由さへと繋がったのかもしれません。


彼女のその特徴的なギターが聴けるようになったのは、セカンド・アルバムの "Not So Soft" (90年) からでしょう。前年に発売されたファーストでの奏法とは大違いです。パワフルで歯切れが良く、まるでパーカッションのように感じられるギター・カッティングは、やかましいバーで何年もプレイしてきた中で生まれたものといいます。そして "Imperfectly" (91年) からは、ドラムスとベースを迎える事になりますが、基本的にギターの弾き語りがベースとなるスタイルは、変わりありませんでした。

この Ani 流アコースティック・パンクの頂点は、96年の "Dilate" だと思います。"fuck you" を連発する歌詞や感情をストレートに出した歌唱、激しいアコースティック・ギターは、彼女のスタイルの完成を感じさせます。しかし、彼女は変化を続けます。全米22位を記録した "Little Plastic Castle" (98年) ではブラスを導入。その後も、ファンクなどの様々なエッセンスを取り入れていきます。

そして辿り着いたサウンドが、この "Revelling - Reckoning" です。アコースティックなサウンドは変わりませんが、フォークやパンク以外にもファンクやジャズの要素も取り入れ、素晴らしいアルバムになりました。それまでの感情をそのまま出した歌い方や、激しいギターは影を潜める事になりますが、それが説得力を増す結果に繋がっていると思います。

このアルバムは、ディスク1の "Revelling" と ディスク2の "Reckoning" で、色合いを変えています。"Revelling"(お祭り騒ぎ)では、新しく取り入れてきた要素を、思う存分楽しんでします。"Ain't That the Way""What How When Where (Why Who)" を聴けば、ジャズやファンクのエッセンスを取り入れた、新しい Ani のサウンドを聴く事ができます。ノリが良い曲が多いのも、こちらのディスクです。

しかし、このアルバムの素晴らしさを堪能したいなら、 "Reckoning"(清算)に注目するべきでしょう。恐ろしいほど深く、そして静かなサウンドが心を抉ってきます。

もう、"Your Next Bold Move" を聴いた瞬間に鳥肌が立ちます。穏やかなギター、静かに語りかけるような歌。過去のアルバムとは比べようもない程、圧倒的な説得力を持った歌が、心に訴えてきます。やっぱりこの人って、フォークがベースなんですね。

"Reckoning""Grey" にしても、ちょっと聴いただけでは暗く感じるのですが、内省的で深い表現が素晴らしいです。"Revelling" というタイトル・ソングは、全然お祭り騒ぎではありません。物悲しいサウンドです。モノトーン・・・というのとも、違いますね。淡い色合いを感じさせる曲です。また、全29曲のうち7曲のインスト曲(ほとんどが1分前後)は、ただの繋ぎではなく効果的にアルバムの流れを作っています。

他に、明るくフォーク的な "Sick of Me" のような曲も収録されています。このアルバムの中では少し異色かもしれませんが、ほっとさせるような優しい曲。あたしって、こういう歌に弱いんですよね。

初期の Ani Difranco は、激しさやストレートな表現で、心を鷲掴みされるような魅力がありました。しかし "Revelling - Reckoning" では、心の深いところに訴えかけるような、彼女以外には表現する事のできないサウンドを確立しました。ホントに傑作アルバムです。とてもインディ・レーベルからの発売とは思えないくらいに。・・・余談ですが、変形ジャケットも素敵です♪。


Ani Difranco に関して、唯一ついて行けない点をあげるとしたら、アルバムの発売ペースでしょうか。なにしろ、少なくても年1枚。1年に3枚のアルバムを発表した事もあります。大好きなんです・・・けど、あたしのお財布が悲鳴をあげてます(笑)。

Revelling - Reckoning
1:1. Ain't That the Way / 2. O.K. / 3. Garden of Simple / 4. Tamburitza Lingua / 5. Marrow / 6. Heartbreak Even / 7. Harvest / 8. Kazoointoit / 9. Whatall Is Nice / 10. What How When Where (Why Who) / 11. Fierce Flawless / 12. Rock Paper Scissors / 13. Beautiful Night
2:1. Your Next Bold Move / 2. This Box Contains... / 3. Reckoning / 4. So What / 5. Prison Prism / 6. Imagine That / 7. Flood Waters / 8. Grey / 9. Subdivision / 10. Old Old Song / 11. Sick of Me / 12. Don't Nobody Know / 13. School Night / 14. That Was My Love / 15. Revelling / 16. in Here
produced by Ani Difranco / recorded at the Dust Bowl, Buffalo, NY & the Congress House, Austin, TX
Ani Difranco (web site: http://www.righteousbabe.com/ani/
born on September 23, 1970 in Buffalo, NY.

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posted by 進藤むつみ on Autumn, 2004 in 音楽, 2000年代, シンガー・ソングライター

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