Just a Stone's Throw Away / Valerie Carter

愛はすぐそばに / ヴァレリー・カーター 1977年
進藤むつみのおすすめCD (vol.41)

get "Just a Stone's Throw Away"Valerie Carter の一番の魅力は何なのでしょう。透明感のある瑞々しさや、可憐で愛らしいさまなのでしょうか。確かにこのソロ・デビュー作を初めて聴いた時には、そんな第一印象を持たれるかもしれません。

だけど、当時親交のあった、多くの実力派ミュージシャンのバックアップを受けて製作された、この "Just a Stone's Throw Away"。ルーズなロックから、フォーク、ファンクまで、様々なエッセンスを含んだこのアルバムを聴き込んでいくにつれ、彼女の可能性の高さと力強さを感じるのではないでしょうか。可憐さと力強さ。そんなアンバランスさこそ、彼女の、そしてこのアルバムの魅力なんじゃないかと思います。


Valerie CarterHowdy Moon の一員として、1974年にデビューしました。Jon Lind (元 the Fifth Avenue Band) 、Richard Hovey とのフォーク・トリオが注目されたのは、Little FeatLowell George がデビューアルバムのプロデュースをしているからでしょう。だけど、このトリオはアルバム1枚を残しただけで解散、彼女はスタジオ・ミュージシャン(バック・ヴォーカル)としての活動を始めます。

しかし多くのスタジオ活動をする事が、彼女の財産になったようです。彼女の実力を音楽関係者に知らしめたのはもちろん、この時期に親交のあった Jackson Browne, Linda Ronstadt, Tom Jans らは、逆にデビューアルバムではゲストとして参加しています。Little FeatEarth, Wind & Fire のメンバーの参加など、ホントに大変なデビュー・アルバムだと思います。


さて、"Just a Stone's Throw Away" の内容に、目を向けていきましょう。

"Ooh Child" は、彼女が得意とするソウルフルなヴォーカル。アルバムのオープニング曲に相応しいだけでなく、後の彼女のイメージまでを決定づけたと言っても良いでしょう。透明感のあるヴォーカル。その素晴らしさがもちろん一番なのですが、バックの演奏も光ります。この緩さは、あたしの好みにピッタリはまるんです。ギターソロは、Lowell George でしょうか。

"Heartache""Face of Appalachia" は、じっくりと歌い上げるフォーク(カントリー)調の曲。これらはもともと得意としていたジャンルで、Howdy Moon からの流れかもしれません。

そして "a Stone's Throw Away" です。Lowell George のプロデュースです。厳かなオルガンに始まって、どんどん盛り上がっていくこの曲。ルーズで泥臭く熱い演奏は、Little Feat のメンバーのものでしょう。そして Valerie のヴォーカルが、熱く訴えかけてきます。力強さは No.1!。文句なしに、このアルバムのベスト・トラックだと思います。

Earth, Wind & FireMaurice White のプロデュース の "City Lights"。もちろん EW&F ばりの強烈なファンクを展開するのですが、こういう曲を歌いこなせるあたりが、彼女の実力を感じさせるところです。

"Back to Blue Some More" は気怠く、そしてやるせない思いを上手く表現しています。余韻を残してアルバムの幕を降ろす、エンディングに相応しい曲でしょう。


こうしてお話をすると様々なジャンルの交わり合いから、纏まりのなさを感じるかもしれません。いろんなタイプの曲を収録していますからね。だけど、彼女の声に一本芯が通っているからなのでしょうか。通して聴いた時に散漫になってはいません。逆にいろんな方向に向けて、彼女の可能性を感じさせるくらいに思えます。

そして、冒頭でお話した可憐さと力強さ。そんなアンバランスさが、絶妙のバランスの上に乗っているようで、この "Just a Stone's Throw Away" はいつまでも色褪せないでいるような気がするんです。


Valerie Carter は、翌年 James Newton Howard のプロデュース、TOTO のメンバーを演奏の中心にした、セカンド・アルバム "Wild Child" を発表します。トータルの完成度も高く、ヴォーカル・アルバムとしては出色の出来だったと思います。しかし・・・、ファースト/セカンド共に、音楽関係者から絶賛を受けるものの、セールス的には芳しくありませんでした。

それでも80年頃までは、たくさんのアーチストのアルバムに、バック・ヴォーカリストとして参加していました。しかし健康上の理由(ドラッグとも)から、彼女の名前はまったく見られなくなってしまいます。再び名前を目にする事ができたのは、90年前後になってからでした。そして96年、Valerie は18年ぶりのアルバム "the Way It Is" を発表しました。その後も、ミニ・アルバム、ライヴ・アルバムと活動を続けていきます。だけど、活動の契機になったのは、この "Just a Stone's Throw Away" のCD化だったようです。

うん、何がきっかけでも良いんです。一度音楽を始めた人は、ずっと続けて欲しいと思うんですよね。特に彼女のように魅力のある人には♪。

Just a Stone's Throw Away
1. Ooh Child / 2. Ringing Doorbells in the Rain / 3. Heartache / 4. Face of Appalachia / 5. So, So, Happy / 6. a Stone's Throw Away / 7. Cowboy Angel / 8. City Lights / 9. Back to Blue Some More
produced by George Massenburg, + Lowell George (6,7), + Maurice White (5,8) / recorded at Wally Heider Recording, L.A., CA, Sunset Sound Recorders, L.A., CA, Hollywood Sound Recorders, L.A., CA & Westlake Audio, L.A., CA
Valerie Carter
born Valerie Gail Zakian Carter on Feb. 5, 1954 in Polk City, FL

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posted by 進藤むつみ on Spring, 2005 in 音楽, 1970年代, シンガー・ソングライター

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