El Rayo-X / David Lindley
化けもの / デイヴィッド・リンドレー 1981年
進藤むつみのおすすめCD (vol.30)
この人、「弦楽器の魔術師」などと呼ばれますが、もっと分かりやすく言ってしまえば「弦楽器フェチ」ですね(笑)。ギタリスト/フィドラーとして有名ですが、他にもスティール・ギター、バンジョー、マンドリン、ドブロ、ベース、ブズーキ・・・、もう弦楽器ならなんでも弾きこなします。そして、それが器用貧乏になってないんですよ。何を弾いても一級品。他のアーティストのバック・ミュージシャンとして参加していながら、時には主役よりも素晴らしい演奏を聴く事もできます。
さて、その Lindley。ウクレレ、フラメンコ・ギターから楽器に入ったそうですが、のめり込んでいったのはバンジョーだったといいます。何年も続けてコンテストで優勝した後、いくつかのバンドを渡り歩きます。多くの楽器に手を出していったのは、その頃の事でしょうか。そして、あるアーティストのバック・ミュージシャンとして参加した事が、彼を一躍有名にしました。そのアーティストの名前は Jackson Browne です。
Jackson Browne の音楽に、David Lindley の演奏は欠かせないでしょう。セカンド・アルバムの "for Everyman" 以降、ほとんどのアルバムにクレジットされています(ツアーへの参加は、80年頃までのはずですが)。他のアーティストへのバックとしての参加だと、主役を食ってしまう事もありますが、彼とはもう素晴らしいコンビネーションなんですよ。Jackson Browne のアルバムをお持ちの方は多いと思うので、もう一度聴き直してもらえれば、David の演奏の素晴らしさは堪能できるでしょう。
そんな彼が、何年もの準備期間を置いて発表したファースト・ソロ・アルバムが、この "El Rayo- X" です。プロデュースには盟友 Jackson Browne と、当時やはり Jackson のアルバムを手掛けていた Greg Ladanyi が名前を連ねています。もう、底抜けに明るく楽しい、そしてR&B、R&R、チカーノ、レゲエ、カントリーと、何でもありのごった煮サウンドを楽しめます。
オープニングの "She Took off My Romeos" からして、独特のサウンドが広がります。レゲエがリズムのベースなんですよね。だけど、色んなエッセンスが振り掛かってるんですよ。そしてなにしろ明るい!。もう、カリフォルニアの青い空が、目に浮かんでくるようです。そんなサウンドを楽しんでいる中で、彼のプレイヤーとしての上手さが、じわじわと分かってくるような気がします。
誰もが知ってる名曲 "Bye Bye Love" も、スカ・アレンジ(笑)。これって、絶対本人が楽しんじゃってますね。ただ、どの曲にも共通する事なのですが、ひとつのジャンルに収まっていないんですよね。ワールド・ミュージック指向って、言っても良いのかしら?。また、この曲と "Twist and Shout" 以外は、あまり有名な曲は収録されていませんが、とても良い選曲です(12曲中10曲がカバー)。ホントに音楽をよく知ってるというか、彼の音楽好きを理解できるような気がします。
そして、本当にワールド・ミュージックと言っていいアレンジの "Ain't No Way"。the Beatles バージョンのもじりの "Twist and Shout"。勢いで押してくるような "El Rayo- X"。もう、全編を通して楽しいサウンド、聴いてて気持ちの良いアルバムに仕上がっています。
一番のお気に入りは、"Petit Fleur" でしょうか。どこか郷愁を誘うようなサウンドです。あたしって、こんな曲に弱いんだよなあ。彼の歌は上手くはないんですけどね。味がある・・・って言うより、やっぱり上手ではないです(笑)。だけど彼の気持ち、彼が言いたい事はスゴク伝わってくるんです。
このアルバムを聴き終わって、なにしろ良いと思うのは、テクニックのひけらかしになってないんですよね。いえ、ものすごいテクニシャンなんですよ。だけど、素晴らしい演奏をしていながら、ホントにさり気なくってね。そういえば、彼は Ry Cooder と競演した事もありましたが、その時もそうだったような気がします。そんな事よりも、本人が楽しんでいる事の方が伝わる辺りが、あたしが David Lindley を好きな最大の理由のような気がします。
ところでこの "El Rayo- X" には、"化け物" という日本語タイトルがついています。本人の要望で、このタイトルになったらしいんですけどね。えっ、本人の容貌?。いや、そんな事を言ったら失礼・・・だと思う・・・んですけど・・・(笑)。
- El Rayo- X
- 1. She Took off My Romeos (僕のロミオ) / 2. Bye Bye, Love / 3. Mercury Blues / 4. Quarter of a Man / 5. Ain't No Way / 6. Twist and Shout / 7. El Rayo X / 8. Your Old Lady / 9. Don't Look Back / 10. Petit Fleur (可愛い花) / 11. Tu-Ber-Cu-Lucas and the Sinus Blues / 12. Pay the Man
- produced by Jackson Browne & Greg Ladanyi / recorded at Record One, L.A., CA
- David Lindley (web site: http://www.davidlindley.com/ )
- born 1944 in San Marino, CA.
いまどきDavid Lindleyを聴く人がいるのかと感心というか安心しました。ぼくはLPを持っているのでそのへんで歳がばれるのですが、ちょっとうれしいのでコメントしました。
osaさん、はじめまして♪。コメントありがとうございます。
えーとですね、さすがにLPではなくCDですが、今どき聴いている(知ってる)というだけで歳がバレてます(笑)。けど、好きなんだから仕方ないですよね♪。
p.s. 話が外れますが It's a Beautiful Day はCD化されてます。セカンドとの2 in 1で持ってますが、ジャケット写真無しなんですよ。買う時には気を付けないと・・・。
It's a Beautiful Day のジャケット写真がないなんて…?でも演奏は後のほうが好きですが(あとの方ってあのしろっぽいジャケットの…レコード棚探しましたが見つからないんで)。
まったく、あのジャケット写真を手元に置けないのなら、なんのためにCDを買ったのか・・・って、内容(音)的には満足していますが(笑)。
普通の一枚もの(ジャケットも普通)もあるようですが、つい値段を比べちゃったんですよ。通販で黒一色のCDが届いた時には、ショックが大きかったです。
えと、後のは Marrying Maiden で、オリジナルは白っぽかったはずですが、あたしには自信がありません(笑)。ちょっと違うタイプなんですよね。ファーストのが有名でも、こっちのが分かりやすいかもしれませんね。
はじめまして、ち~旦(だん)といいます、オヤGです(笑) リンドレーさんの
記事を自分も書いたので、氏名で
検索してきました。
もうこのデビュー作をリリースして
25年近く!自分はLPで持っていますが
スカ、レゲエっぽいアレンジが続く、A面
頭が好きです。リンドレーさんも僕も ノンスモーカーなんで、4月のショーは
きれいな空気の中で聴けそうです。
>ち~旦さん、はじめまして。
来日ですか。見たいなあ・・・けど、ムリだなあ。なんか南の方ばかりですね。
そうか、25年近いんですよね!。80年代のアルバム(ライヴを入れて5枚ですか?)とは、今の活動ってちょっと違いますが、ハイ・レベルな活動を続けてる人ですよね。たいしたものだと思います。