Uh-Huh / John Cougar Mellencamp

天使か悪魔か / ジョン・クーガー・メレンキャンプ 1983年
 進藤むつみのおすすめCD (vol.9)

get "Uh-Huh"John Mellencamp の音楽を聞くと、ある景色が思い浮かびます。それは農場の中を地平線までも延びる道、広大なアメリカの大地の姿です。彼は人口が2万人に満たない小さな町で、生まれ育ったそうです。すると、彼を育んだ景色が、そのまま歌われているのかもしれません。


John Mellencamp は、David Bowie のマネージメントをしていた Tony Defries に、見出されてデビューします。ただし、その時つけられた名前は Johnny Cougar(セカンド・アルバムからは John Cougar)でした。彼はこの名前を相当嫌っていたようで、前作 "American Fool" のヒットを期に、この "Uh-Huh" からは、本名の Mellencamp を名乗るようになります。

ポップ・スターになる事を拒絶した、ロックン・ローラーの反骨精神が、そのままサウンドに現れます。スタジオ録音というより、ライヴのようにアーシーな演奏。「ロックっていうのは、こういうものだ」と言う、彼の声が聞こえるみたいです。

ファンキーなリズムの "Crumblin' Down"(全米9位)、ノスタルジックを感じさせる "Pink Houses"(8位)、アーシーな "Authority Song(15位)"、軽快な "Warmer Places to Sleep" までは、息をつかせぬまま一気に駆け抜けます。一息つけてから後半戦。豪快なギター・リフの "Play Guitar" で再開して、シットリとした "Golden Gates" で締めくくるあたり、曲構成も良く出来てるなあ。全部で33分弱という演奏時間なのに、物足りなく思わないものね。それとギター・リフは、全部シンプルでいてカッコ良い!

土臭く骨太なサウンド。物凄く男臭い歌声。だけどきっと彼は、純粋な人なんだよね。夢や理想を捨てられない姿が、そのまま歌詞に出ています。自分らしく生きたい、納得出来ない事には従えないよって。

土臭いサウンドといえば、このアルバムには the Rolling Stones への謝意が、記されているんです。そういえば確かに、黒人音楽に傾倒していた頃の Stones の姿を、思い浮かべる事も出来ますね。

大ヒットした前作 "American Fool"(全米1位)と1985年の "Scarecrow"(2位)の狭間で、サウンド的にもセールス(9位)的にも、地味に見られがちな、アルバム "Uh-Huh"。だけど、初めて彼らしさで押し通したように思えて、あたしのお気に入りの一枚なんです。


それと、細かい話になってしまいますが、バックバンドの Kenny Aronoff (ds) は、あたしの大好きなミュージシャンの一人です(今は一緒にはプレイしてません)。 John Mellencamp が素晴らしいのはもちろんだけど、彼を支えるバンドのメンバーの音も楽しめると、聞き方がひとつ広がるような気がします。

Uh-Huh
1. Crumblin' Down / 2. Pink Houses / 3. Authority Song / 4. Warmer Place to Sleep / 5. Jackie O / 6. Play Guitar / 7. Serious Business / 8. Lovin' Mother fo Ya / 9. Golden Gates
produced by Little Bastard & Don Gehman / recorded at the Shack, Jackson County, IN / (add. T.R.C., Indianapolis, IN & Cherokee, L.A., CA)
John Cougar Mellencamp (web site: http://www.mellencamp.com/
born on October 7, 1951 in Seymour, IN.

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posted by 進藤むつみ on Summer, 2004 in 音楽, 1980年代, アメリカン・ルーツ

comments (2)

参考になります!
ジョン・クーガー・メレンキャンプは僕もわりと好きなミュージシャンですが、「アメリカンフール」と「スケアクロウ」「ロンサムジュビリー」しか持ってませんでした。「天使か悪魔か」はエアポケットでしたね。
名前は知りませんでしたが、彼のバンドのドラマーはかなりいい音を出すあぁと思っていました。やっぱり有名な人だったんですね。勉強になりました!

onomichiさん、続けてのコメントありがとうございます♪。
確かに、普通彼のアルバムから1枚をレビューするとしたら、粗削りな "American Fool" か 完成度の "Scarecrow" でしょう。だけど、このアルバムってその両方の魅力を、兼ね備えてると思うんです。ただ、惜しいかな地味なんですよね。
ドラムスの Kenny は、在籍中から他のアーティストのアルバムでも名前を見たし、辞めてからはかなり積極的に活動していますが、有名・・・ではないと思います。だけどあたしは、アーシーでしかもパワフルなドラマーって好きなんですよね。

p.s. "Ululu" と "Late for the Sky" のレビュー、期待しています♪。あたしも、紹介したいと思ってるアルバムなんです。

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