Hotel California / Eagles
ホテル・カリフォルニア / イーグルス 1976年
進藤むつみのおすすめCD (vol.12)
以前紹介した the Byrds の "Sweetheart of the Rodeo" が、 最初のカントリー・ロックのアルバムだとしたら、この "Hotel California" は、 最後のカントリー・ロックのアルバムと言えるのではないでしょうか。もちろんいろんな見方があり、Eagles がデビューした時点で、既に「カントリー・ロックは死んだ」と言う人もいます。だけど、ロックが巨大産業化する中、このアルバムに閉じ込められた空気や思い(おそらく1976年のアメリカそのもの)は、カントリー・ロックの終焉に相応しいものだと思うんです。
1976年のアメリカ。それは建国200年に沸きながらも、ベトナム戦争の傷跡により、閉塞感や倦怠感を持っていたと言います。明るい未来を、素直に夢見る事が出来ない・・・。このアルバムを聞くと、そんな空気を感じるんです。いえ、理屈抜きに名盤、そして1曲目の "Hotel California" は、永遠にロックの歴史に残る名曲なんですけどね。
Eagles は Linda Ronstadt のバックバンドで顔を合わせた事をキッカケに、 Glenn Frey (g), Don Henley (ds), Randy Meisner (b), Bernie Leadon (g) の4人で1971年に結成。初期のサウンドには、Leadon が欠かせませんでした。彼はギターだけでなく、バンジョーやスティール・ギターなども操り、カントリー・ロック臭を醸し出します。3作目の "on the Border" からは Don Felder (g) が加入。そしてこの "Hotel California" からは、Leadon に変わり Joe Walsh (g) が参加。Felder と、ソロ活動でも既に評価を得ていた Walsh のハードなギター・プレイは、サウンドに変革をもたらしました。だからこのアルバムは、厳密にはカントリー・ロックとは呼べないのかもしれませんが、あたしはまだ密やかにその匂いを感じるんです。(この後、Meisner が Timothy B. Schmit にチェンジ。これが再結成メンバーになります)
さてこのアルバム、1曲目の "Hotel California" のイントロが始まった瞬間に、暗くて重い空気が漂います。そしてその空気が、アルバムを最後まで支配するんです。このトータルの色が、アルバムの評価にも繋がっているのでしょう。もちろん曲・アルバムともに全米1位なのですが、こういうのって、日本人も好きですよね。
Henley のヴォーカル、独特なベース、重なり合ったギター、そして美しいコーラス・ワーク・・・。全てが見事に混ざり合い、この名曲を形作っています。他にも皮肉満載の歌詞は、コーラスの "Welcome..." との対比で更に皮肉になったりね。うーん、チェックしなくちゃいけない事が、たくさんあります。まあ、この歌のサビはコーラスじゃなくて、終奏のギター・ソロですけどね(笑)。Felder と Walsh の掛け合いは絶妙です。
Hall & Oates の事を歌ったと言われる "New Kid in Town"(1位)は、 Henley/Frey と、Frey とはデビュー前にデュオを組んでた J.D. Souther との競作。軽やかなこの曲のハーモニーは、これこそが Eagles というものを感じさせます。この曲に限らず、競作が多いのも Eagles の特徴です。歌詞・リフ・メロディーなど、それぞれ得意な分野があったのでしょうね。それぞれの相乗効果で、彼等のサウンドが生まれてくるのだと思います。
ファンキーでこれまた重い "Life in the Fast Lane"(11位)、 いかにも Walsh というハードな "Victim of Love"、Meisner がヴォーカルをとるカントリー・ロック "Try and Love Again"。名バラード "the Last Resort" で幕を下ろすまで、寸分の隙もない永遠の名盤です。必ず一家に一枚は、常備しておいて下さい(笑)。
まあ、永遠の名盤と言っても、古さを感じさせるトコもありますけどね。さあ、 "Hotel California" には、何本のギターが重なっているでしょうか?。アコースティック、カッティング、ツインのオブリガード、ギター・ソロ・・・まだ入ってます。ループとかじゃなくこれだけ重なってると、「ここまでしなくても」って思っちゃう。ギターをたくさん重ねるのが、カッコ良い時代だったんだろうなあ(笑)。
そういえば Eagles は10月末から、3度目の来日公演を行います。前回の9年前の来日では(あたし、見に行ったな)、"Hotel California" をオープニングに持ってきたのが不評だったとか(ちなみにラストは "Take It Easy")。あたしは良いと思うんだけどね。だって、この曲を聞いた時点で、満足する人が多いんだもの。中盤に持ってきたら、それこそそこで一段落しちゃうと思います。昔から1曲目に持ってくる事が、多かったみたいだし。
それよりも、公演時間の長さが問題です。いえ、好きなんですよ。どの曲も知っているし、メンバーのソロ・アルバムもほとんど持ってるくらい。演奏して欲しかった曲を、全て聞けたのは良かったけど、3時間以上は集中力が持ちません。もう少し短くても、密度のあるコンサートが、あたしは好きだなあ。・・・今回はどうなのかしら?。
- Hotel California
- 1. Hotel California / 2. New Kid in Town / 3. Life in the Fast Lane (駆け足の人生) / 4. Wasted Time (時は流れて) / 5. Wasted Time (reprise) / 6. Victim of Love (暗黙の日々) / 7. Pretty Maids All in a Row (お前を夢見て) / 8. Try and Love Again (素晴らしい愛をもう一度) / 9. the Last Resort
- produced by Bill Szymczyk / recorded at Criteria Studios, Miami, FL & the Record Plant, L.A., CA
- Eagles (web site: http://www.eaglesband.com/ )
- Glenn Frey, Joe Walsh, Don Felder, Randy Meisner & Don Henley
- Don Henley
- born on July 22, 1947 in Gilmer, TX.
僕もこのAlbumを最後のカントリーロックだと思っています。
We haven't had that spirit here since nineteen sixty nine…
「そのような酒はこちらにはご用意しておりません、1969年以来…」
Spirit…蒸留酒、魂 1969…ウッドストック
ウッドストック以降、ロック魂が失われたのではないか。
時代を上手く表現しています。
話は変わりますが、『呪われた夜』 (One of these nights)も好きです。
年上の女性の方から薦められ聴いたのですが癖になりました。
僕が初めてEaglesを聴いてかっこいいと思ったのは、高校生の頃だと思いますが映画で観たThe Warriorsです。
ラストシーンで"In the City"が流れて印象に残りました。
映画も音楽も気に入っています。
>うえださん♪
微妙なトコなんですけども、Bernie Leadon の脱退(加えて Joe Walsh の加入)で Eagels が決定的に変わったと思うんです。で、その変わった音が表れたのがこのアルバムでありまして、オープニングの "Hotel California" を聴いた瞬間に『ああ、終わった・・・』に、なったんじゃないかなと。ロックが巨大産業化する流れにも乗ってましたですし。
で、あたしがのめり込むキッカケはやっぱり "Hotel California" なんだけど、振り返って聴くようになって好きになったのはアルバム "Desperado" だなあ。だけど、1枚だけレビューを書くとすると、どうしても "Hotel California" になっちゃうんですよね(笑)。