Georgia Satellites / the Georgia Satellites

ジョージア・サテライツ / ジョージア・サテライツ 1986年
進藤むつみのおすすめCD (vol.35)

get "Georgia Satellite"あたしは現実にアメリカに行った事はないんだけど、音楽を聴いていると、その土地ごとに特色があるのが分かります。アメリカン・ロックの中でも、そうなんですよね。東海岸、西海岸、南部なんて大ざっぱな分け方はもちろん、例えば同じカリフォルニア州でも、ロサンゼルスとサン・フランシスコの音は違います。たぶん、比べるつもりはなくても、たくさん聴けば感じる事ができると思います。

さて、この Georgea Satellites は、その名の通りジョージア州アトランタ出身のバンドです。南部の匂いをたっぷり漂わせたストレートな R&R で、ぐいぐい押してくるのが魅力的です。でもね、このバンドのメンバーへのインタビューを読んだ時に思ったんです。同じジョージア州のアトランタとアセンズだったかな、そのロックの違いは何かって。その答えは・・・「アトランタのが音がでかい」そうです(笑)。単純な答に笑ってしまったあたしですけども、ホントは R&R の聴き方なんて、そんなもんでいいのかもしれません。


このバンドのデビューは、衝撃的でした。ジョージアの片田舎のパブで演奏していた、そのままの格好で飛び出してきたような Georgia Satellites。いえ、格好だけではなく、演奏してきた曲目やそのスタイルも、きっとそのままだったでしょう。だけど、何故それが、それ程衝撃的に思えたのでしょうか。それは、ルーツ系ロックにとって最も不遇な時期、1980年代の後半だったからです。

事実、彼等のデビューは簡単ではありませんでした。どのレコード会社からも「時代遅れの音楽」と受け入れてもらえず、イギリスで自主製作盤を発表したのがキッカケになったそうです。だけど「時代遅れ」そのままのスタイルなのに、デビューシングル "Keep Your Hands to Yourself" がするするとチャートを上昇し、ついには全米2位を記録!(アルバムは5位)。これにはファンや関係者以上に、本人達が一番驚いたのたかもしれませんね。


だいたい、ストレートなR&R、豪快、ギミックなし・・・と、いろいろな言い方をされますが、きっと彼等は3コードしか知らないでしょう(笑)。それにギター、ベース、ドラムス以外の楽器なんて、存在しないと思ってるかもしれません。それ程に単純なサウンドが、なんでこんなにカッコイイんでしょう!。

前述のオープニング曲 "Keep You Hands to Yourself"。リズムギターの刻む音に、Dan Baird の男臭いヴォーカルが、絡みつくように入った時点でノックアウトです。ルーツでルーズで南部で粘っこいんです。もう惚れ惚れするほどです。それに、このバンド・スタイル。骨太なサウンドは、理屈抜きであたしの体を震わせます。

"Battleship Chains" (86位) も、まったく単純な曲。きっとストレートに表現することしか、知らないんでしょうね。あたしはホントにこの時代、もうルーツ系のロックはすたれていくだけと思っていました。でも、彼等のようなバンドが出てくると、そんなことないなって。聴くファンはもちろんだけど、アメリカの田舎を廻ってみれば、まだたくさんこんな演奏をしてる人もいると、安心したのでした。

"Every Picture Tells a Story" は、もちろん Rod Stewart の曲のカヴァー(彼の出世作のアルバム・タイトルですね)。前述の自主製作盤を出した時、イギリスでは彼等の魅力を Facesthe Rolling Stones, CCR などと比較して語られたそうです。きっと思い入れたっぷりなんでしょう。エンディングに相応しいノリになってます。


彼等はこの後 "Open All Night" (88年)、"in the Land of Salvation and Sin" (89年) と立て続けにアルバムを発表しましたが、ここまでで解散となります。やっぱり時代に合わなかったのかな。セールス的にも、このファースト・アルバムには届きませんでした。そして Dan Baird はソロに転向。"Love Songs for the Hearing Impaired" (92年)、"Buffalo Nickel" (96年) と発表するものの、その後は沈黙してしまいます。

Georgia Satellites は98年、主要メンバー抜きで再結成しますが、これはあまり聞きたくなりません。単純に Dan がいないからなんだと思います。だって、彼が歌った上記の4作(ファーストを入れて5作)、どれも傑作なんですよ。もしかすると、一作ごとにクオリティが上がっているくらいかも。だから、どのアルバムを聴いたとしても、外れはないと思います。それでも、当時の衝撃と曲のキャッチーさを考えると、あたしはやっぱりこのアルバムなのかなと思うんです。


それと、有名プロデューサーの Brendan O'Brien が、初期のこのバンドに在籍していた・・・。そんな紹介をされる事もありますが、デビュー時点ではもういなかったんだから、その話は忘れましょうね。

Georgia Satellite
1. Keep Your Hands to Yourself / 2. Railroad Steel / 3. Battleship Chains / 4. Red Light / 5. the Myth of Love / 6. Can't Stand the Pain / 7. Golden Light / 8. Over and Over / 9. Nights of Mystery / 10. Every Picture Tells a Story
produced by Jeff Glixman / recorded at Axis Studios, Atlanta, GA & Cheshire Sound Studios, Atlanta, GA
Georgia Satellites
Dan Baird, Mauro Magellan, Rick Price & Rick Richards
Dan Baird
born Daniel John Baird on December 12, 1953 in San Diego, CA.

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posted by 進藤むつみ on Winter, 2005 in 音楽, 1980年代, アメリカン・ルーツ

comments (23)

おお!
いいですねえ。
聴きたくなっちゃう!
いますぐレコード屋へ!
やってないか。
amazonがあるじゃないか。
ちょっと買い過ぎな日々…

とかいってる間に
買ってしまいました!
楽しみです。

>osaさん♪
か、買ってしまわれたんですか?。いつ届きますって?(笑)。
しかし Georgia Satellites。実はこの記事を書くために、あたしも久しぶりに聴いたんです。だけど、ホントに良いんですよ、嬉しくなるほど単純で(笑)。
思えば、一月にお休みを挟んでますから、ルーツ系の話はずいぶん久しぶりでしたよね。しばらくその路線でいこうかな?。80年代が続いちゃったから、90年代に行くか、70年代にさかのぼるか・・・。

1週間以内ってことらしいです。
送料込みで1000円くらいかな。
ストレートなロックは基本的に大好きですね。
ちなみにストレートなブルーズバンドもやってます。
ものすごく年の離れた連中と。恥ずかしながら…。
またおもしろそうなCDご紹介ください。

>osaさん♪
1週間ですか、待ってる時間も楽しみなんですよね。
町のCDショップで買った時は、聴かなければ分からないのに、ライナーだけ読んじゃうんですよね。家に着くまで、ジャケットを眺めていたり(笑)。
通販が主流になってから(田舎は通販じゃないと手に入りません)、そういう楽しみ方から変わってきたけど、ワクワク感は同じだと思います。
バンド、やりたいなあ。性格的に共同作業がムリなんですけどね(笑)。いつまでたっても、丸くならないあたし。困ったもんだ♪。

聞きました。
めちゃストレートですが、このひとたちカントリーしっかり聞いて、けっこう演ってますね。
演奏はひとこと若い!
まあ当たり前ですけど。
天気のいい日に河原でバーベキューやりながら、ぴっちぴちのビキニのチャンネーなんかにビーチボールで遊ばして、デッキチェアでバドかなんか飲んでニヤついている、そんなときに掛けたいバンドでござると…。

>osaさん♪
聞いていただきましたか、ありがとうございます。
わかりますか?。相当ベースがしっかりしてる人達だと思うんですよ。自分たちのナンバーとしてプレイしながら、しっかりと過去の曲を取り入れちゃったりして。
「こんなもんでどうだい?」って、楽しんじゃってるような感じがします。別に悪い意味じゃなくてね。・・・って、何で本文でそれが言えないんだろう、あたし。
ストレートで若いのは・・・、まあ特徴ですからね(笑)。
「天気のいい日にバーベキューやりながら」までは大賛成です。けど、そのあとはちょっと・・・(笑)。大受けしてしまいました。よく思いつきますよね♪。

ハジメマシテ。
Georgia Satellites 関連でサイトをリンクさせていただきました。
やっぱり彼らはカッチョイイですなぁ、、。

>peace4uさん、はじめまして♪。コメントありがとうございます。
そうなんですよね。カッコイイって言葉が、一番彼等に似合うんですよね。
ただ、Dan Baird 以外のメンバーの力量も高かったけれど、あたし的には Dan Baird がお気に入りだったのかなって、今になると思うんです。

大学生でしたね。当時の全米チャートを賑わせていたのはソフト&メロウやAOR、ブリティッシュ系電子音にユーロ・ビート。ZZ TOPさえも『スリーピング・バック』で自分達のスタイルで時代に寄り添ってましたっけ。そんな中で『おいおい、ロックンロールを忘れてやしないか? 簡単なんだぜ。教えてやるよ』とばかりにチャートを駆け上がった『キープ・ユア・ハンズ・トゥ・ユアセルフ』は痛快以外何者でもありませんでした。後に出てきたブラック・クロウズも話題となりましたが、これならジョージア・サテライツの方がカッコいいよ、と思ったものでした。

>ロージーさん、レス遅れてすみません。暫くブログから離れてました。
もうね、この時代ストレートなアメリカンロックなんて、昔から歌ってた人が残ってるだけで、新しいバンドなんて出てこないと思ってました。歳がばれますが(笑)。そこに Georgia Satellites でしょ?。ビックリしたのなんのって。ああ、日本で聴いてるから分からないだけで、実際アメリカに行ったら、こんな音楽も溢れてるんだろうな・・・と、教えてくれたのがこのバンドでした。
Black Crows はあたしは結構好きなんだけど・・・まあ、こっちですよね。ホントに『痛快』って言葉がピッタリなのは Georgia Satellites だよなって気がします。

georgia satellites 1987頃から聴いています。
1st albumは特に曲自体も良いのですが、曲順も好きです。
"Keep Your Hands to Yourself"から始まり"Every Picture Tells a Story"で終わる流れがいいです。
音自体もライブ感があり太くて好みです。
2ndは1stの延長のような作りに感じましたが、全体のバランスが余り好きになれませんでした。
3rdは好きな曲がたくさんありましたが、テンポの早い曲は飛ばして聞きました。
ボーカルスタイルもここで若干変わっています。
1stの頃の自然な声が好みです。
"Six Year Gone"や"Sweet Blue Midnight"が特に好きで今もよく聞いています。
音が綺麗に作られ過ぎて固く細くなり自分の好みではありませんが悪くは無いです。
このalbumに入っている"Another Chance"を聞いた時、好きでしたがバンドの終わりを想像してしまいました。
その通りになって残念です。
Dan BairdのいるGeorgia Satellitesが聞きたいとよく思います。


>うえださん♪、レス遅れてすみません。
お詳しいですね、勉強になります。
曲順はいいですよね。自然・・・っていうよりも、持ち歌10曲でライヴをするならこの並びって気もします。音自体も文句なし。ただ、それより本文でも書いてるけど "Keep Your Hands to Yourself" を聴いた時の『何にもしてないじゃん!』っていう驚きが何より大きかったあたしです。
"in the Land of Salvation and Sin" はなるほど、ヴォーカルも変わってますね。音質やアレンジの変化に気を取られてたな。うえださんの挙げられた2曲ももちろん良いけど、個人的には "Buttle o' Tears" が一番好きでした。ただ、良い歌は多いし完成度も高いアルバムなのに、なんていうか音自体に違和感があったかなあ。それまでの音の太さが彼等の特徴だとあたしは思っていましたから。
それでも、もう少し活動は続けて欲しかったですね。不遇な80年代後半だけで解散するなんて、何をやってるんだと今でも思います。

こんにちは。
"Buttle o' Tears"を改めて聞きました。
確かにいいですね。
こういった粘りのあるルーズな曲は僕も好きです。
僕の好きなバンドBlackberry Smokeも"Another Chance"をカバーしています。
好きなバンドが好きなバンドの曲をカバーしているとまた嬉しいです。
Georgia Satellitesは太く、優しく、単純に楽しくかっこいいですね。
好きな人は好きでいい。純粋にそう思います。

>うえださん♪
良いでしょ?。今聴いてもこの曲が一番かしら?。
好きなバンドの曲をカバーしてるのを聴くと嬉しくなるし、それが好きなバンドがカバーだったら最高ですね。で、それがマイナーな曲だったりすると、おお、やるじゃん・・・ってなったりします(笑)。
うえださんはブログとかしてないんですか?。これだけ詳し蹴れれば、相当なレビューを書いてそう。それともプレイする方に忙しいのかしら?。

ありがとうございます。
僕はブログはしていないんです。
Georgia Satellitesを検索していて、初めて進藤むつみさんのおすすめCD (vol.35)のコメントを読みました。
上手く表現してあり読んでいて嬉しくなりコメントしました。
既にご存知かもしれませんが、時間のある時 Blackberry Smokeを是非聴いてみて欲しいです。
僕は特に3rd Album"The Whippoorwill"が好きです。
力強いリフもありサザンロック特有のブルース、カントリー、ハードロックと心地よく織り混ざってロックしています。
Black Crowes,Georgia Satellites,Lynyrd Skynyrdを思い起こすバンドです。
見た目も音楽もそのまま南部のロックなので楽しくなりました。

>うえださん♪
もったいないですねえ、残念。まあ、音楽の楽しみ方はそれぞれ・・・って言うか、本来周りに発信する必要もない。
あたしは好きなマイナーなアルバムの事を誰かに話したくて、音楽レビューを始めたんですね。まあ、マイナーじゃないけど "Georgia Satellites" なんて、今更(レビューした時点でも9年遅れ)こんなにコメントを戴けるなんて思わないわけで、そんな事に力付けられて続けてきたんだと思います。・・・って、最近はご無沙汰だったか。
ただ、続けるうちに、どうにも筆力不足を思い知らされてる。うまく表現できないんですよね。それでいて理屈っぽくなっちゃう。あたしの限界はこんなもん・・・なわけだけど、それでも口にせざるをえないでいるのがうちの音楽記事だと、また進藤むつみが何か言ってるよ・・・と思って見て頂ければと思っています。
Blackberry Smoke、覚えておきます。

色々レビューを読みましたが楽しいです。
とても表現が上手く素直なので、音楽の趣味や考え方や気持ちが伝わってきます。
Blackberry Smokeですが、いきなりAlbumを買って気に入らないと困りますのでバンドがよく分かる映像があるので、いつか見てみてください。
YouTubeにもありますが"Blackberry Smoke Live in North Carolina"が一番いいです。
音楽、衣装、プライベート映像の全てがかっこいいです。

>うえださん♪
いえいえ、ホントに力不足。このレビューを書いたのが・・・11年前?。そこから少しずつでも本を読んでたら、表現力がついたんだろうなあ・・・と思います。
Live in North Carolina、見させてもらいました。はしょって演奏シーンを少しですけども。あたしね、映像ダメなんですよ。音だけがここにあればいいタイプ。なるべく前情報もなしで音を聴きたいんですよね。だから、あとはアルバムを買った時にしたいなと思います。

Izzy Stradlin and the Ju Ju Houndsは聴きましたか?
1枚しかありません。
僕はDan Bairdが好きですが、Rick Richardsもやっぱり好きで1992年発売当時予約してCDを買いました。
"Shuffle It All"は特に好きでした。
Rolling Stones、Faces風ロックが良かったです。
LiveはGeorgia Satellitesの良さが受け継がれていて、いい音出してかっこいいです。
この後Izzy名義でソロは出していますが、この1枚は特別です。
もしもまだ聴いていないのなら聴いて欲しいAlbumです。
iTunesで視聴するか"Shuffle It All"1曲を聴いて欲しいです。

>うえださん♪
聴いてません。
あたしは Dan Baird 以外は追いかけなかったなあ。Rick Richards もそうだし、再結成にも興味がない(音源があるのかも知りません)。
Guns N' Roses も Guns 自体で終わって、 Izzy も全然聴いてないです。

僕もGeorgia Satellites再結成には興味がありません。
勝手な意見ですがDan Bairdあってのバンドだと思っているので、同バンド名義での再結成自体が反対です。
Guns N' Rosesに関してはデビュー当時から聴いていますが、こんなに売れると思っていませんでした。
バンドはIzzyがいなくなった時点で終わりだと思います。
しかし実際はもっと早くバンドは終わったと思っています。
1st Album Appetite for Destructionでは独特の世界観で緊張感があり、Nightrainなどよく聴くと分かり易いのですが単純なハイトーンでは無くボーカル自体が以降のAlbumとは違い太い箇所もあり自然です。
デビュー前の長い期間の活動で少しずつ変化したと思われる練られた楽曲、ドラムが若干前のめりになっていて、必死に周りも合わせようとする感じ、好き勝手に弾いている様に聞こえるギター2本も上手く絡んでいるこの瞬間だから作る事の出来た最高の1枚だと思っています。
以降のAlbumは売れ過ぎた影響なのか、ボーカルが単純にハイトーンで作った声、バランスの悪い曲の配置、無理して1stのイメージを維持しようとしたテンポの速い曲、ギターを含む全ての音など好きになれませんでした。
唯一気に入ったのはDon't Cry位です。
ただこの曲もデビュー前からの曲で新曲ではありませんでした。
最近、Izzy無しでclassicメンバーが集まる事が決まった様ですが、多分聴く事も無いと思います。

個人的には、再結成はどのバンドでも聴く必要がないと思ってるくらいの石頭です。
Guns は "Appetite..." だけが群を抜いてる感じがしますねぇ。Guns のレビューじゃないから、この位にしておきますが・・・。

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