アルバム・カヴァーを考える:Hipgnosis 〜 Storm Thorgerson

進藤むつみのおすすめCD・番外編

もちろんサウンドに触れるためにCDを買うのですが、アルバム・カヴァーも楽しみの一つのような気がします。実際に音が鳴りはじめるまで、ジャケットを眺めながらドキドキしているし、聴いてる最中も見えるトコに立て掛けておいたりしますからね。サウンドとカヴァーって、切り離せないものだと思うんです。

あたしが好きな・・・っていうよりも、ロックのアルバム・カヴァーのデザイナーで最も有名なんですけどね。Hipgnosis というデザイン・グループがいるんです。右の Pink Floyd"Atom Heart Mother" のデザインは、たぶん知らない人がいないくらい有名なもの。それこそ、ロックのジャケットの概念を打ち破りました。だって牛ですよ。まったく、何で牛?って感じ(笑)。リアルタイムで触れたファンは、相当驚いただろうと思います。

だけど、これって単に概念を打ち破っただけじゃないんですよね。動物を扱っていながら、異様なまでの静けさが不思議です。なんか、時間が止まっちゃってるようにも思えるし、冷たさが感じられるような気がするんです。これって表だけじゃなくて、インナーを見開くと、もっとそう感じるんですね。そして、それこそが Hipgnosis の特徴であって、あたしが好きな要因だと思うんです。
 

今回のおすすめCDはチョット趣向を変えて、Hipgnosis のデザインを楽しんでみたいと思います。ジャケット写真と記事内リンクは、Amazonの該当商品にリンクしてるので、大きめの写真はそちらからご覧下さい。・・・と、8枚ジャケット写真を取り込んでるから、続きはとっても重いです。覚悟してご覧下さいませ(笑)。
 

HipgnosisStorm ThorgersonAubrey Powell のふたりで結成。Pink FloydRoger Waters と同級生だった事もあって、Pink Floyd のセカンド・アルバム "a Saucerful of Secrets" のデザインをした事が、ロック・アルバムに関わるきっかけになりました。らしさは "Ummagumma" ですでに出てきてますが、彼等を一躍有名にしたのは、やはり前述の "Atom Heart Mother" だったと思います。その後 Roger Waters と仲違いして、"the Wall""the Final Cut" ではデザインは外れるものの、それ以外の Pink Floyd 作品って全部彼等のものなんですよね。

どれも秀逸。で、もう一枚なにか紹介したいと考えてたんですけどね。人が燃えてる "Wish You Were Here" も良いし、豚が飛んでる "Animals" も良い。だけどあたし的には、ベッドが並んでる "a Momentary Lapse of Reason" がお勧めなんです。

これ、見開くとベッドメイクの女性が写ってて、もっといい感じなんだけど、表だけでも十分の迫力でしょう。なにしろこのベッド、合成じゃないっていうんです。全部並べたっていうんだから、まったく笑っちゃいます(笑)。だけど、もちろん発想も構図もいいんだけど、それよりも Storm Thorgerson らしい静けさを感じられる写真だと思うんですよね。右側に写ってる犬にしても、空を飛んでるカイトにしても、静けさを邪魔してないし、そこにある事が必然のように思えてきちゃう。ホントに、いつまでもこの写真を見つめてしまいそうです。
 

さて、彼等はもちろん Pink Floyd 以外のアーチストもたくさん手掛けています。そのひとつは Led Zeppelin でしょうか。そして ZepHipgnosis といえば、"Presence" の話をするべきなんでしょう。だって、Hipgnosis 全作品の中でも傑作っていわれてるんですから。だけど、あたしは "Houses of the Holy" のカヴァーのが好きなんですよね。写真の合成と着色によるこの幻想的な世界は、やはりちょっと他に例を見ないものだと思うんです。

話が少し戻りますが、Hipgnosis は二人で結成されて、後に Peter Christopherson が正式メンバーに加わるんだけど、それ以外の周りを固めた人間も重要だったのでしょう。イラストやレタッチ、タイポグラフィーやカラーリング。作品によって参加したメンバーが、それぞれの得意分野の才能を生かす事で、Hipgnosis の世界が広がったと思うんです。そのひとつが、このデザインかな?。同じように合成・レタッチしているものには、Emerson, Lake & Palmer"Trilogy" があるんですけどね。インナースリーブだけの話で、表ジャケットはいまいちなのでした。
 

3枚並べてみましょうか。一番上の Wishbone Ash は、"Argus" の幻想的なジャケットもなかなかです。だけど、あたしは何故かこの "New England" の方が気になっちゃうんです。妙にクッキリした写真で、まあ実はよく見るとザラついてたりもするんだけど、やけに生々しく感じませんか?。リアル過ぎるって言えばいいのかな?。

10cc"How Dare You!" もそう。シャープ掛け過ぎって感じです(笑)。それこそ独特の世界って言っちゃえばそうなんだけど、あたしは危険を感じちゃうんですね。触っちゃいけないように感じるんです。ナイフが研ぎ澄まされて、そう、必要以上に研がれたナイフがそこにあって、ちょっと触れただけで指先から血が流れてきそうな気がする。これって変な例えかな?。上手く言えなくてゴメンナサイですけど(笑)。

いつも、Hipgnosis のジャケットを見るたびにそう思うんです。ホントにただの写真だってわかっているのに、あたしはそっと指で触れてみる事があったりしてね。だから、さっきの "New England"。ちょうどナイフの刃が写っているから、頭の中にこびりついて、気になっちゃうのかもしれません。


"Michael Schenker Group" のファースト・アルバムは、有名じゃないんだろうな。あっ、アルバムは有名なんだけど、ジャケットはね。だけど、何であたしがここに並べたかと言えば、やっぱり触れただけで切れそうな写真だから。そして、あたしがリアルタイムで触れた、最初の Hipgnosis の作品だからです。

その頃デザイナーが誰だなんて、あたしは全然気にしてなかったんです。音を聴くだけで精一杯だったしね。だけど、このジャケットを初めて見た時のショックは、相当のものでした。何がそう思わせるのかはわからなかったけど、心臓の鼓動が速くなったと思えるくらい危険を感じた。確かに今見ても毒々しいんだけど、なにか見ちゃいけないものを見ちゃったように感じたのでした。


さて、Hipgnosis は80年代に入って解散します。それからまた、くっついたり離れたりっていうのはあるようだけど、あたしが彼等らしさをアルバム・ジャケットに感じるのは、中心人物だった Storm Thorgerson の作品でした。2番目にあげたベッド写真の "a Momentary Lapse of Reason" は、実は Storm Thorgerson の作品という事になります。まあ、あたしは一連の流れとしてみてますけどね。
 

90年代に入っても、Storm Thorgerson はあたしを驚かせてくれます。"Slip, Stitch & Pass" って、これ何?。ありえないでしょ、これは(笑)。Phish って日本だとあまり有名じゃないんだけど、人気も実力も飛び抜けたものをもっているバンドです。あたしは大好きなんですよね。だけど、このアルバムのカヴァーは驚きました。

大きなオブジェを使ったジャケットって、考えてみればやっぱり Pink Floyd"the Division Bell" の流れかもしれません。うん、他にもいくつかあるんですよね。だけど、その中でも最高の衝撃の一枚だったと思うんです。

そして衝撃のもう一枚。the Cranberries"Bury the Hatchet" です。これも凄いですよね。普通は合成写真って思いますよね。違うっていうから何を考えてる?って思っちゃう(笑)。裏面の男性が吠えてるのも、なかなかいい味ですけどね♪。あたしは the Cranberries だと、"Wake Up and Smell the Coffee" のジャケットのが好きなんだけど、あれは見開かないと良さがわらないんですよ。うん、もしかしたら、どのアルバムもそうなのかもしれない。だから、じっくりと手に取って楽しみたいと思うのかもしれません。


今回は、あたしの好きな Hipgnosis だけの話をしてきました。だけど、どのアルバム・ジャケットにも良さがあるんです。デザイナー、イラストレーター、カメラマン・・・。いろんなアーチストにそれぞれの良さがあって、訴えかけてくるものがある。だからアルバムのライナーを読む時は、デザイン関係の人の名前も見るようにすると、ちょっとだけ楽しみが増えるような気がするんです。

Storm Thorgerson (web site: http://www.stormthorgerson.com/
born on 1944 in Potters Bar, Hertfordshire, UK

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posted by 進藤むつみ on Spring, 2006 in 音楽, 番外編

comments (12)

10cc!
これこれ、これいちばんです。
LPなんで聴けないのよね。
ちょいと前にベスト盤買いました。
それで我慢してます。
ピンク。フロイドはセンスいいですねえ。
サンキューです!

>osaさん♪
10cc、お好きでしたか。思うんだけど、彼等こそセンスだったような気がします。あたしが一番好きだったのは the Original Soundtrack か・・・、うーん、やっぱりこのアルバムかしら?。
LPっていえば、あの大きさだから生きたデザインもあったんですよね。上の8枚も古いのはLPだったわけで、30cm x 30cm・・・または30cm x 60cmの見開きって今では考えられないけど、『贅沢だったよなあ』って思うんです。

こんばんわ。すごい力作ですね。とても面白く読ませて頂きました。勉強になったっていうか。
ジャケットに興味がないことはないのですが、デザインとかそっち方面にはすごく疎いので、Hipgnosisという名前は初めて聞きました。
そういえば昔はLPを壁に飾ったりしてましたね。僕が常に飾っていたのは、"Ziggy Stardust"とか"Rumours"とか"In The Court Of The Crimson King"あたりだったでしょうか。あと、Styxの"Paradise Theater"、ELOのジャケットも好きでしたね。かなりベタですが。。。

>onomichi1969さん、お久しぶりです♪
力作なんてお恥ずかしい(汗)。意外なほど書き始めたら早くって、自分でもビックリしてるくらいだったりして・・・。Amazonへのリンクをこれだけ作るのが一番大変だったのでした(笑)。
余計な知識かもしれないけど、損はない・・・っていうか、やっぱり面白いと思うんですよね。あたしも、そんなに詳しいわけじゃありませんけどね。これをキッカケに手持ちのアルバムを見ていただけると、楽しめるんじゃないかと思います。
"Ziggy・・・"ですか。あれは確かに特別ですよね。あたしが Bowie で好きだったのは "Low" かな?。Fleetwood Mac だと "Bare Trees" とか・・・って、どちらも内容がお気に入りのアルバムだな(笑)。だけど、そういうのってありますよね♪。
"in The Court of the Crimson King" も、リアルタイムで触れた人はビックリしたでしょうね。うん、"Atom Heart Mother" 以上かも。
Styx は "Pieces of Eight" が Hipgnosis の作品だったはず。他にもあったような気がするけど、ちょっと思い出せないな。ELO も一目みて ELO なジャケットだったけど、そうなる以前の "No Answer" あたりがやっぱり Hipgnosis だったような気がします。

おはようございます。
確かに、、、"Pieces of Eight"のジャケットって同じ系列ですね。なるほど~。アルバムも好きですが。
ELOも"No Answer"と"Ⅱ"がそうみたいですね。あとHipgnosisのWebギャラリーを観てみたら、あらら、あれもこれもそうなんだ~と納得してしまいました。松任谷由美のジャケットもそうだったのか。。。
あと、ELOは長岡秀星という人が手がけていたんですねぇ。ジャケットアートも知るといろいろと楽しめますね。

ありがとうございます。
実は少し前から、ヒプノシスの手がけたジャケットにはどういうものがあるのか、まとめて見てみたいなあと思っていたところなんです。MSGもそうだとは知りませんでした。10ccも。(持ってるのに)

でもとにかく大大大好きなのは、Houses Of The Holyです。初めて見た時からずっとずーっと好きです。そしてこれがツェッペリンで一番好きなアルバム、私の(全ての中で)ベスト10に入るアルバムです。

>onomichi1969さん、おはようございます・・・って、もう夜ですか(笑)。
ああ、確かにELOはセカンドもそんな感じですね。そうそう、ユーミンもありました。『昨晩・・・』なんかがそうだったかな?。ホントに Hipgnosis って手広く仕事してたから、ちょっと気にするだけでたくさんの発見がありますね。
長岡秀星は日本の誇りです(笑)。だけど全部じゃないかも。で、あたしの長岡秀星のイメージって、Earth, Wind & Fire なんですよね。彼からも結構なミュージシャンに繋がっていくと思います。
ね、楽しいでしょ?。お気に入りジャケットは、気にしてみてくださいね♪。

>Screaming Bunnyさん♪
ええ、もちろんベストアルバムは拝見してるから存じております☆。って、だから恥ずかしくて、そのレビューが書けなかったりするんですけども(笑)。この際言っちゃうと、Leon Russell や Laura Nyro もね♪。
で、あたしも実はジャケットだけじゃなくて、音的に好きなのも "Houses Of The Holy" なんです。さすがに Zeppelin のアルバムの中でで、全アルバム中じゃないんだけど、Symbols よりもずっと深くて広いと思うんです。Song Remains the Same 〜 Rain Song だけで、あたしは圧倒されちゃうんだけど、いまいち地味なのかな?。あたしの周りで、それほど高い評価をする人って少ないんですよね。
だけど MSG も 10cc も、言われてみれば納得のジャケットでしょ?。Hipgnosis シリーズは、これをキッカケに調べてみてくださいませ。ホントは、マイナーなアルバムこそ面白いような気がするんですよね。

こんにちわ。
勢い余ってブログのスキン替えて、記事書いて、むつみさんとこのリンク貼っちゃいました。。。ご了承下さいませ。

調べました、色々。で、アレもコレも、印象に残ってたジャケットの大半がヒプノシスであることを知ってびっくり!
でも一番驚いたのがコレ。
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=706695
変わったジャケットだなーとずーっと思ってました。コレもそうだったんですか。ホント、びっくり。

ところでむつみさん、GW中に日記をリアルに追いつかせる約束、ちょっとダメかもです。というのも3日前に小さいレコードレーベルから、エリック・リンデルというニューオリンズ系ギタリストのCDを和訳しないかというメールが来て、昨日CDも届いていて、今その件にちょっと時間をとられているのですよ。
この件も後で、日記かメールで報告しますね。

>onomichi1969さん♪
うちの記事なんて、どうぞご自由にお持ちくださいなのですが、それほど大した話でもないなとチョット焦っています(汗)。Houses Of The Holy ヴァージョンになってるのは、朝拝見した時に気がついたんですけどね。記事になるとは思ってなかったのでした。
だけどLP、あたしは殆どCDに買い替えちゃったんですよね。こんなジャケットの話を書いといてなんですけど、芸術品として残すべきだったなと反省しています。

>Screaming Bunnyさん♪
お、調べましたか。アレもコレもですか☆。それは素敵です♪。
ユーミンの話は上のonomichiさんとの会話でチョロっと出たんだけど、やっぱりこのアルバムってそうですよね。他にもあったような気がするんだけど、彼女のアルバムってあたし詳しくなくて、ちょっと思い出せないでいます。
Eric Lindellって知らなくって検索しちゃったんだけど、それって良い話じゃないですか。英語を生かせて音楽好きなのも生かせてなんて、スゴイと思いますよ。コレは、どっぷりと時間をとらなくっちゃダメでしょう。頑張って!。そして、経過を教えてくださいね。あたしCD買いますからね☆。
まあ、それでも、なるべく早いうちに日記は追いつかせてくださいね♪。

貼るの忘れてた。検索してたら、こんなページもありましたよー。
http://www.avis.ne.jp/~fancysc/column07.html

あ、ちなみに、スケジュールの関係で、訳すアーティストが変わりました。Jesse Mooreというヒトです。
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=1877533
Eric Lindellだと5月末締切だったのでちょっと無理ということになりましたが、こちらだと7月なので何とかなりそう。
てことで。日記書きまーすw

>Screaming Bunnyさん♪
あはっ☆、面白い!。これだけしっかり解説されてると、ジャケットを並べただけのあたしは恥ずかしくなっちゃう・・・けど、うちのレベルからいけば仕方ないですか。だけど、あたしももう少し調べてから書けば良かったと思っています。
Jesse Mooreですか?。うう、またもや知らない(汗)。だけど、あた結構楽しみになってるんですよね。ホントに様子を教えてくださいませ。
日記はじわじわきてますね。今日・明日の具合でどうでしょう?。旅行前に追いついてくれると嬉しいです☆。

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