同じ夕陽を思い浮かべる

好きな歌があります。大昔のフォーク・ソングなんですけどね。シングル・カットされた訳じゃないし、何であたしが知ってるのか不思議なくらい無名な曲。だけど、あたしはホントに素朴なその歌を、よくギターを弾きながら歌っていました。

ギター弾いていると 君の後ろに沈んでく 夕陽が見えた

あたしはこの歌詞から、中学校の頃住んでいた団地を思い出すんです。どうしてなのかしら?。その頃、この歌を聞いた訳じゃないんですよ。それにあたしの実家って、4回引っ越してるんですよね。成人してからは、更にたくさんの部屋に住んだのに、この歌から思い浮かぶ夕陽は、その団地の窓からのものしか考えられないんです。

ある時、実家で弟のギターを弾きながら、この歌を歌っていました。近くに母がいました。母はオリジナルのこの曲を、聞いた事はないはずです。だけど、あたしが何回か歌った事があったのかな?。歌い終わったあたしに、話しかけてきたんですよ。

「良い歌ね」と、母。黙って頷くあたし。すると、母は「この歌を聞くと、あの団地の窓から見た夕陽を思い出すわ」と、言うんです。

あたしは驚きました。だって、あたしもそうだなんて、そんな話をした事はないんですよ。もちろん、母だってその頃聞いていないし。それなのに母とあたしは、同じ夕陽を思い浮かべていたんです。驚くと同時に、あたしは嬉しくなっていました。

この歌を聞いた時に、同じ夕陽を思い浮かべるのは、母とあたし。話をした事はないけど、たぶん父。うーん、弟はどうだろう?。やっぱり、そうなんじゃないかしら。

この歌を聞いた時に、同じ夕陽を思い浮かべる事ができるのは、世界にたった4人しかいないんです。
 

ギター弾いていると 君が半分暗くなる 夕陽を浴びて
NSP:天中平〜夕陽を浴びて〜

posted by 進藤むつみ on Autumn, 2004 in 雑記

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